真に教養のある人とは
いつも楽しく参加している田中伶さんの「ビジネス書キュレーションサロン」内で開催されている課題図書企画。
今回は元mixi CEOの朝倉祐介さんの新刊「論語と算盤と私」がテーマだったので、早速読んでみました。
古典や名著の引用と自身の経験を交えながら、起業から大企業の運営、新規事業への取り組み方など経営の入門書といっても過言ではない内容をとても読みやすい文章でまとめてある良書でした。
そもそも経営と一口にいっても、ゼロイチを生み出す創業と、安定期に入った組織を動かす経営は異なるもの。
アメリカでは起業家と経営者としてのそれぞれの資質を1人の中に求めないと言いますが、今回この本を読んで改めてその違いを感じました。
巻末で紹介されていた「貞観政要」も早速読んでみて、まさにこのフェーズの違いによってスタンスを変えるべきといった主旨のことが書いてあり、組織の成長にあわせてトップ自体が変わる(もしくは"替わる")必要があることを学びました。
元・サッカー日本代表の岡田監督のコラムも非常に読み応えがありましたし、資金調達をすることの意味やプライマリーマーケット・セカンダリーマーケットの違い、ダウンラウンドに対するVCの姿勢など経営層でなくても知っておきたい基礎知識が詰め込まれているので、起業なんて関係ないと思っている人にもおすすめしたい一冊です。
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そして今回この本を読んで強く感じたのは、朝倉さんの教養の深さです。
これだけの実績と知識量がありながら居丈高になることなく、易しく噛み砕いた文章で、時折辛辣な表現がありつつもフォローすることを忘れない言い回しに「なんて徳の高い文章なのか…!!!」と思わずにはいられませんでした。
そして同時に思い出したのが、以前何かで読んだ「教養とは人を傷つけることなく接する術である」という言葉。
教養というと、美術や文学、哲学に精通していて博識な人のことを指すイメージがあります。
しかしそうした知識も、使われなければ無用の長物でしかありません。
自分の得た知識をひけらかして偉そうに振る舞うのではなく、知識から学んだ人の真理や哲学を生かし相手を慮って対応できる人というのが真に教養のある人なのではないかと思います。
多くのことを知れば知るほど、学べば学ぶほど、いかに自分が何も知らない取るに足らない存在かということを感じるもの。
「実るほど 頭を垂れる 稲穂かな」という有名な言葉通り、常に謙虚に、真に教養のある人間を目指していきたいと改めて感じた書籍でした。
(Photo by tomoko morishige)
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