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本と映画と、エトセトラ。

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読んだ本・観た映画について気まぐれに。 (photo by tomoko morishige)
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2017年7月の記事一覧

思い出を封じ込める季節

思い出を封じ込める季節

「思い出の」という枕詞に続くのは、やはり「夏」ではないだろうか。

言葉の候補はいくらでもあるのに。
思い出はどの季節にもあるはずなのに。

***

夏は、どちらかというと嫌いな方だ。

できるかぎり日光を浴びたくないし、汗もかきたくない。

そんな怠惰な性格なのでひたすら家の中にいるのだけれど、それで夏の思い出などできるわけがない。

できるわけがないのだが、やはり「思い出」と言われると半袖の

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女は、過去を二度脱ぎ捨てる

女は、過去を二度脱ぎ捨てる

小学生の頃に夢中で見ていたドラマの主人公のセリフを、ことあるごとに思い出す。

「女が最高値で売れるのは27。 私の統計では27歳が売り時のピークなの。それを越えたら値崩れを起こすわ。」

あれから十数年が経ち、気づけば私の値崩れへのカウントダウンは間近に迫っている。

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ちょうど1年前に「アラサーの私が"結婚"をしたくない理由」という記事を書いたけれども、今結婚したいかと聞かれたら「相手

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その街の名は「TOKYO」。

その街の名は「TOKYO」。

お店に入った瞬間、「ああ、ここは "TOKYO"だ」と思った。

薄暗い照明、芸術品のような一皿、品よくグラスにおさまるアルコール、そして都会の夜を彩るきらびやかな人たちの集まり。

寝坊してすっぴんで走ったり、友達と酔っぱらってゲラゲラ笑いながら歩いたり、そうやって過ごすいつもの「東京」ではなくて、ここは「TOKYO」なんだと。

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夜になると街灯ひとつないような田舎から東京に出てきて、

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透明なものしか、生き残れない時代へ。

透明なものしか、生き残れない時代へ。

これからの時代のキーワードのひとつである「透明化」。

先日、話題の小説「ザ・サークル」を読んで改めて、透明化の流れが不可逆的であることを感じました。

あらゆる場所にカメラが置かれ、人々は自分の見ているもの・聞いたことを全自動で公開する。

物語の中では、こうした透明化を突き進めた末のディストピアが描かれていましたが、程度の差こそあれ、この先もしばらくは透明化の流れが変わることはないように思いま

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