『私の物語』〜心が震えた、異文化からのおくりもの 〜 1986 その弐(#2)
前回のあらすじ
1986年。バブルに浮かれていた世間を横目に、生きていた『私』。高校生の『私』は、親に置き去りにされ、ひとりバイトで生計を立てていた。深夜の音楽番組は、そんな『私』にとっての心の拠り所。そして、ある日、『私』の未来に続く衝撃的な出会いが訪れる。
青天の霹靂 -第1章-
その日は、突然やってきた。
いつものように帰宅して、
いつものようにテレビをつける。
誰もいない家が、少し賑やかになる。
そして、いつもの番組にチャンネルを合わせると、
洋楽のプロモーションビデオが流れる番組が、始まっていた。
いきなり、高音のコーラスが聞こえた。
はっと、画面を見つめる。
ライブ会場の照明が動いて、火花が散った。。。
うわっ、凄い…
ガツーンって、衝撃が走って、動けなかった。目が画面に釘付けになっていた。
『You Give Love A Bad Name』ボン・ジョヴィである。
長髪にブーツ。
その頃、たくさんのハードロックバンドのビデオが流れていたけど、
こんなに、観客と一体になった映像を見たのは、初めてだった。
そして、みんなキラキラして、目が生き生きして、
コミカルで、なんてカッコイイんだろう。
英語なんてわからないのに、口ずさめそうな楽曲。
心臓がどきどきした。
何か、世界が明るくなった気さえした。
『私』の心は、たしかにライブ会場に飛んだんだ。
もう、すでに何かに巻き込まれていた。
これが、私とボンジョヴィの最初の出会い。
そして彼らは、私の人生の分岐点にいつも現れ、
メッセージをくれることになる。
レンタルレコード
翌日も、昨日のビデオが頭の中をぐるぐる回って離れない。
あの曲を、いつも聞きたかった。
一瞬で、世界が変わったあの曲。
駅前のレンタルレコード店を見に行って、アルバムを借りることにした。
土曜日の昼下り、比較的空いている店内をウロウロする。
初めてのHR/HMのコーナー。たくさん並んでいるレコード。
レコードジャケットを、両手の人差し指と中指で、1枚ずつ、後ろから前にくっていく。
レコードジャケットがパタン、パタンと手前に倒れて、次のアルバムが現れる。
あった!
アメリカンでセクシーな、ジャケット。
『Slippery When Wet』(邦題:ワイルド・イン・ザ・ストリーツ)だ。
早速、借りることにする。
店内にあるコピー機で、歌詞カードを全部コピーした。
歌詞カードは、紛失防止のため持ち帰れないのだ。
借りたレコードは、カセットテープにダビングするから、一緒にカセットテープも購入して、店を出た。
当時は、レコードプレーヤーとカセットデッキが搭載された『コンポ』が人気だった。
カセットデッキが2つ付いてて、カセットテープからカセットテープのダビングもできた。
家には、そんなものはなかったので、いつも、知合いに頼んでダビングしてもらっていた。
知り合いも、新しいアルバムをタダでダビングできるから、いつも喜んでやってくれた。
『今晩できるから、明日取りに来て』
ワクワクしながら、明日を待つ。
こんなに心が躍ったの、いつ振りだろう。
手元に残った歌詞カードのコピーを見る。
歌詞の意味を全部知りたかった。
歌えるようになりたかった。
英語をもっと勉強したいと思った。
『いつかライブに行ってみたいな。』
暗い生活の中で、夢みたいなものが、生まれた。
トミーとジーナ
それから頭の中は、いつも彼らの曲が流れていた。
『Slippery When Wet』の楽曲だ。
2枚目のシングルカットは『Livin On A Prayer』
プロモーションビデオは、更に進化して『私』の心を虜にした。
モノクロで始まるこのビデオは、ライブへ向かうメンバーの登場からはじまり、ライブのリハーサル風景を見せてくれる。
彼らのライブは、当時話題になっていた、ワイヤーアクションを取り入れて、プレイしながら、観客の上を舞うのだ。
その舞台裏がビデオには組み込まれていて、
メンバーは、時には真剣に、時にはコミカルに、リハーサルの光景を披露する。
そして、2回目の転調で画面がカラーに切り替わり、一気にライブ会場へワープする。
そのタイミングが、最高なのだ。
吸い込まれるように、ライブ会場にいるような錯覚に陥る。
嫌なことも、全て忘れられる瞬間だった。
テープを手に入れてから、暇さえあれば、曲を聞きながら歌詞カードを読み返していた。
『Livin On A Prayer』は、トミーとジーナの物語。
ふたりはカップル。働いても働いても貧しい。
運に見放されても、お互いを必要として生きていれば、
いつか、きっと、良くなるって。そう信じて生きる。
そんな物語。
いつか、お互いを必要とする、、、
そんな人ができればいいな。
曲を聞けば、二人のように頑張れるような気がした。
そう思ってから、『私』のモノクロの人生に、少し色がついた。
『私の物語』〜心が震えた、異文化からのおくりもの 〜 1986 その弐(#3)へ つづく
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