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ルームシェアを3rd Placeと捉えるとアイデアから実現までが早かった 〜イイヅカnotes #01

飯塚の過去から今現在の研究テーマや取り組みをメモしていく、イイヅカnotes。#01は、「ルームシェアを3rd Placeと捉えるとアイデアから実現までが早かった」を紐解きながら、アイデアの生み方と生まれる場所 についてをメモ。

アイデアが生まれるプロセス

昨今よく耳にする「イノベーションにつながる、新しいアイデアを出してください」という無茶難題。突然降ってくる閃きに期待したい!という人も多いのではないでしょうか。


そもそもアイデアを作る時には創造のプロセスがあり、それぞれのプロセスに適した場所があるのです。ジェームス.W.ヤングは、著書「アイデアの作り方」の中で、アイデアの作成の基礎となる原理とプロセスについて、以下のように述べています。

● アイデア作成の基礎となる原理とは
・アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない
・既存の要素を新しい組み合わせに導く才能は、物事の関連性を
見つけ出す才能に依存するところが大きいというふたつ
● アイデアを作るプロセス
アイデアは5つの段階を経由して生まれる。
1.データ集め
2.データの咀嚼
3.データの組み合わせ(心の消化過程???)
4.ユーレカ(発見した!)の瞬間
5.アイデアのチェック

アイデアはどこで生まれるのか?

先に述べた通り、アイデアを作るためにはプロセスを経由します。各プロセスにおいて、実はそれぞれ適した場所が異なるのです。家なのか、それとも職場なのか、はたまた全く別の場所なのか。


大学の修士論文では、Creative Class(※1)のクリエーター・ナレッジワーカー達が『データ集め』のプロセスをどこでどのように行っているか、という内容をテーマにしていました。クリエーションにおいて重要視される情報は、昨今インターネットの発達とともにググれば簡単にアクセスできる二次情報ではなく、一次情報(直接聞いたり触れたりする)。中でも、人から得る情報を有用と捉える人が多く、どこでどのように入手しているかに着目しました。

アメリカの社会学者レイ・オルデンバーグは、著書『The Great Good Place』で、3rd place(サード・プレイス)が、現代社会において重要な役割を果たしていると述べています。

1st place:家庭
2st place:職場・学校
→家族や仲間内で閉じられた空間、役割に縛られた言動が中心。
3rd place:Neutralで開かれた場所(喫茶店・カフェ・本屋など)
→社会的な立場に縛られずに自由に言動、会話が主な活動、
多様な人間が交流し、多様なアイデアや価値がうまれやすい環境

3rd placeにおて、研究テーマにしていたのは、『新しい交流の場としてのカフェの都市空間的特性』。東京のカフェの都市空間的特性や人間関係の研究を進める中で、3rd placeの大事な要素の一つに、オーナーのホスティング能力が挙げられます。


要するに、カフェにはオーナーの価値観や趣味に共感する人達が一定数集まりますが、お客同士でコミュニケーションが生まれるケースは稀です。オーナーがホストとなって仲だちすることでゲスト同士に交流が生まれると、ゲストにとっては、価値観は近いけど、バックグランドの違う人と会うことで、アイデアのネタとなる新しい情報を効率的に入手できるのです。


情報収集の場合は、カフェやコワーキングスペースなど人が集まり情報収集やアイデア出しができる場所が向いていますが、咀嚼したり、プロトタイピングをするプロセスでは、集中とリラックスができる『Think Lab』のような場所が適していると考えられます。これはまた別の機会に。

ルームシェアも3rd Placeになり得る

ルームシェアがなぜ3rd place的な側面を持っているのか。

・共通のテーマで語れる人達が一緒に住んでいること
・それぞれがホストとなり、それぞれのゲストと仲だちをしあうことで、様々な情報を効率よく得ることができる

僕とルームシェアの出会いは、大学時代のラクロス部で、アメリカのミシガン大学に1カ月留学したときでした。その時は、ミシガン大学の学生がルームシェアをしているリビングに泊めてもらい、一緒に練習に打ち込み、夜は一緒にお酒を飲んで…という毎日、このカルチャーってめっちゃ良い!!!と思えたのです。


で、大学院の時から先輩とルームシェアを始めました。そしてそのまま社会人なってもその生活を続けました。

当時は、会社のデザイナーズマンションに安く住むこともできましたが、仕事も一緒でライフも一緒だと染まりすぎてしまうと思い、自己投資の一環として先輩とのルームシェアを選びました。


社会人の若い頃は、飲みの場などで皆『何か面白いことをやってやろう!』と意気込むけど、寝て起きたら忙しい現実が待っているし、熱量もあっという間に冷めてしまう。でも、一緒に住んでいると、その後も短期間にコミュニケーションを重ねて行くので、『やりたいこと』がアップデートでき、そしてカタチになる確率が上がっていくと感じました。


実際に、久留米の商店街再生プロジェクト(※2)をスタートさせ、空き店舗をリノベーションして商店街シェアハウス「よかろうもんハウス」を作りました。大学時代に専攻していた都市計画が、机上だけで終わるのではなく、カタチになった瞬間でした。はじめに久留米に行ってから、大体1年半くらいで形になった。
嬉しいことに、久留米のシェアハウスでも、住んでいる人たちを中心とした「商店街を拠点にビジネスへの発展も見据えたまちづくり活動」というプロジェクトがスタートしました。

必然的な偶然
アイデアが生まれることは偶然だが
その偶然がおこる頻度をあげることはできる


イノベーションを起こすアイデアを生むためには、その頻度をあげる手法の一つとして、『自分にとっての3rd Place』を持っておくことをおすすめします。


※1:Creative Class論(Richard Florida)自己の創造性を通して経済的付加価値を実現する人々と都市の関係性について。職業的な分類では、科学者・技術者、大学教員、詩人・作家、芸術家、エンターテイナー、俳優、デザイナー、建築家、編集者、文化人、シンクタンクのリサーチャー、アナリスト、幅広い分野における知識集約型産業に従事する人々
※2:久留米の商店街再生プロジェクトhttps://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000008706.html


飯塚 洋史 / quod代表
東京大学大学院(都市工学専攻)にて、Creative classと都市の関係、third placeについて研究。また大学時代にはラクロスにて日本一を目指し、2008年・2010年東大ラクロス部男子Head Coachを務める。2008〜2016年(株)日本政策投資銀行に勤務(M&A アドバイザー、通信・総合電気・不動産業界の長期融資や仕組み融資、新規事業企画等に従事)
事業家に向き合い続け、事業家のライフミッションを表現するための新規事業の企画、具現化を目指す。スポーツチームや新規事業チームのマネージメント経験を生かしながら、新規事業企画チームのビルドアップ・マネージメントを行う。また企業提携企画やファイナンス思考にも強みを有する。


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