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大都市と地方都市の関係性 〜Well-beingな生き方・働き方〜

先日、NewsPicks Brand Designで、地方都市の新しい地方創生のモデルをディスカッションするイベントが開催され、quodの飯塚も登壇させていただきました。

今日では、人口集中の反動が都心のあり方を変えているように、人口減少が進む地方都市のあり方も変化し、従来の地方創生のアプローチではなく、より先進的な手法を試みる地方都市も生まれています。

本イベントは、そんな地方都市の代表例・前橋をモデルケースに、様々な切り口から地方創生のあり方を考えるという内容でした。

従来の地方創生は「地域にすでにあるもの」を起点に施策を考えていた一方で、前橋市は明確なビジョンを設定しました。それは、市内外の一流クリエーターらが知恵を出し合い、ビジョン実現に向けて「都市をデザインする」手法を取っていくというもの。
都心の物質的な豊かさとは異なる、人間らしい豊かな生き方を選択できる都市を掲げ、地方創生と共に「人生の選び方」を考えるイベントとなりました。


Well-beingな暮らしを「クリエイティビティ」から考える

イベントは基調講演から始まり、「Well-being」「働き方」「食」「暮らし」の切り口から全部で5セッション実施。quod journalでは、飯塚が登壇した「Well-being」のパートについて詳しくまとめます。

▼イベント全体のレポートはこちら 

「Well-being」とは、直訳すると「幸福」「健康」といった意味。

もう少し紐解くと、「心身ともに、さらに社会的にも健康な状態を指し、満足した生活を送れる状態」にあることだとされています。

1946年の世界保健機関(WHO)憲章:健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)にあることをいいます(日本WHO協会:訳


その上で、街づくりにおける「Well-being」を考える際、何を軸に置くか仮でも良いから決めることが重要、という考え方のもと、前橋は『デザイン』『クリエイティブ』を軸に置いています。

予防医学者でWell-being研究の第一人者である石川善樹さんはこの視点を、「クリエイティビティはWell-beingを構成する重要な鍵。人はどんな小さなことでも、創造性を発揮している限りはWell-beingを感じる。またこれからの私たちの働き方を考えても、クリエイティブな活動の割合はどんどん増えていくはず」と評価。


quodの日々の活動の中でも、モノがあふれる今の時代だからこそ、クリエイティビティを高める必然性が増していると感じています。本イベントでは、飯塚は下記のようなことを話させていただきました。


以下は、クリエイティブ産業に従事する労働人口の割合をグラフ化したもの(quod作成)。

191130_前橋newspicks(飯塚)_抜粋


クリエイティブ産業に従事する労働人口の割合が、スウェーデン、ノルウェーでは40%を超えている中で、日本は18%。各国が政策的にクリエイティブ産業を推進している中、日本は大きく後れを取っています。
しかし同時に、国内でクリエイティブ産業に従事する労働人口の割合は、今後どんどん伸びていくと予測できます。

では、クリエイティブ産業に携わる人が増えたときにどのような環境が必要なのでしょうか?


クリエイティブな仕事に最適な環境とは?

下図は、ジェームズ・W・ヤング著「アイデアのつくり方」で述べられている「知的生産に必要な場所」を図式化したものです。

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この図で言うと、①は創造のための下準備、⑤は最後に形にするパート、ですが、実は重要なのが、②の情報を自分なりに噛み砕くパート③無意識に脳がそれらを組み合わせていくパートです。それらがうまく進むと"閃いた"という④の発見のパートが訪れます。

かつて中国の政治家・学者だった欧陽脩は「馬上・枕上・厠上」をひらめきやすい場所として挙げましたが、要は机に向き合っているだけでは良いアイデアは生まれないということ。

①においては情報や感性を刺激される場所が必要で、それは一つには都市がありますが、感性を刺激する上では実は自然も重要です。また③や④の無意識フェーズにおいては、自然の中にいると、そのプロセスが起こりやすいとも言われています。なので、創造的なプロセスを生み出すには、都市と自然をうまく取り入れながらライフスタイルをデザインして行くことが必要です。


下表は、東京都のクリエイティブ産業に従事する人の全国シェアです。

スライド9

一方でクリエイティブ産業は、単体の仕事としては成り立ちにくく、上流・下流の仕事との密なコミュニケーションが必要であることも踏まえると、ある程度の規模のある都市圏でないと成立しにくいのも事実です。


これらを踏まえると、

"自然との距離が近く、大都市圏にもすぐアクセスできる環境"がクリエイティブ産業に従事する人、およびWell-beingな生き方にとって良いな環境であると考えられます。そして、これらの観点が、Well-beingな街づくりを考えるにあたって重要な観点の一つと言えます。


Well-beingな生き方・働き方ができる街

以下は首都圏の地図です。

図4

千葉・横浜・さいたまなどは、都心から30kmのエリアにあり、現在「都心で働きながら毎日のように通える範囲」がこの辺りに該当するのではないでしょうか。

一方で、次のWell-beingな生き方・働き方をできるまちとして、先ほどの『自然との距離が近く、大都市圏にもすぐアクセスできる環境』を踏まえるとまた違った見方ができます。

「都心から100km圏」にある都市に着目してみましょう。そうすると都心までは車や電車で1〜2時間。「普段は自然の近くで働き / 暮らし、必要なときには都心にも気軽に足を運べる」という状況がつくれます。


前橋はこれを戦略的に設計していて、街中に緑をちりばめて都市の便利さと自然の両方を楽しめる街づくりを推進中。さらに一流の建築家やアーティストの作品で街がデザインされていくことで、歩いているだけで自然やアートに触れられ、結果的に自分の感受性を高められる。いわば、“誰もがクリエイティブになれる”まちづくりに向かっています。

まだまだスタートしたばかりの前橋ですが、新しい地方都市のモデルとして注目ですね。


・quodでは、"大都市と自然豊かな地方、両方で働き・暮らすスタイル"を実践すべく、各エリアでエリア開発・ブランディングと事業企画を組み合わせたプロジェクトを推進しております。

・飯塚洋史Twitter(最近、細々と再開してみました。)



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