手首
菜々緒とはこれから致す。菜々緒が先に風呂に入った。こちら側のバスタブの縁に前腕とあごを乗せ、右の手首を舐めている。
甘い ここ甘い
気を許しているのか幼稚に振る舞っている。スラリとした長身の菜々緒のその振る舞いに、普段は感じられない女のコを見た。言葉と行動は幼稚だが、舌そのものは女性のそれだった。
ちょっと舐めてみて
女のコは女性であり、女性は女のコである。どこかで聞いたキャッチフレーズのようなものに得心が行った。性行為をいくら経験しても童貞は童貞である。秒に満たないであろう戸惑いを菜々緒は感じとったようだった。
ここ甘い
急かしたのか背中を押したのか、その言葉を合図に菜々緒の手首へあごを寄せ、舌を出した。
舌を絡めてきたのは菜々緒の方だった。
終わり
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