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占有を承継する(占有について)

〇占有権について

  • 日常生活では、例えばコンビニなどでおにぎりを買うとき「これをください」「200円です」といったやりとりをすることがある。民法上では、契約は口頭で成立する。これは、日々大量に行われる取引の簡素化が目的である。そして、この口頭での契約が済んだときに、所有権は実質的に移転するのが民法上での世界観である。
     つまり、「このおにぎりをください」「200円です(はい、いいですよ)」の時点で、契約は成立し、所有権は買主であるあなたに移転しているのである。だからといって、ここでおにぎりを持って帰ることはできない。そんなことをしてしまっては泥棒になる。なぜなら、おにぎりの代金を支払っていないからである。コンビニの店員あるいは店主は、代金を支払ってもらうまで、その物を手元に置いておく権利があるはずである。

  •  これが占有権である。占有権とは、所有権は自分にないものの、一時的に物を自分の手元に置いておくことができる、いわば「仮の権利保護」の制度である。実際の日常生活では、民法上ではその物の所有権と所有者にズレが生じしてしまうことがある。

  •  これは「事実上その物を所持している者の支配」を暫定的に認めることにより、物の奪い合いを防ぎ、安定した財産秩序を守ろうとしたものである。

〇占有は承継される

 本来、一時的で事実状態であるはずの占有を「承継」するという考え方は不自然であるが、それを法が認めているのは、「占有されていない状態の物をなくす」ことを目的としているためであり、これは近代社会である資本主義社会を根底としている。
 つまり、「誰の物かわからない物」をなるべくこの世からなくしたい、ということである。一時的であり、それが事実上の支配でもよいので、「この物は誰かの物」といえることが大事、とする考え方である。
 宅建・公務員試験では、占有は時効の取得時効との考え方によってセットで出題される。占有の個体の問題としては別個に、不動産について善意の占有者から悪意の占有者への承継は、前者である善意を承継することができる。取得時効は善意で10年、悪意で20年であるため、例えば自分の父親が善意の占有者として7年占有した後、実はそれが父親のものではないと知っている悪意の占有者である息子が3年継続して占有すれば、善意・悪意は取得時点で考えられるため、善意の10年にて時効取得ができるわけである。つまり占有は相続によって承継することができる

(その他の論点(基本レベル))

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