人間らしさと地域の資源保護と経済成長の両立とは

先日、実家に帰ったら、母から宇沢弘文先生の「人間の経済」という本を渡されました。母は誰かから薦められたみたいですが、今ひとつ馴染めなかったみたいで、「あんたが読んだら少しはわかるんじゃないの?」くらいの感じだったと思います。
あまり経済学には明るくないものの、以前、たまたま渡辺格先生と宇沢先生の対談本を読んだこともあり、読んでみました。
前半は自由と利益の暴走について書かれていて、行きすぎた自由主義の弊害のようなことが書かれています。
私自身は、単純に「儲けることが一番で、皆がそれを追求することで、経済全体が成長し、結果として皆が幸せになる」とまで言うのが気恥ずかしいこともあるため、経済合理性ばかりではダメと言われたら、なんとなくそうだと思うのですが、ではどうしたら良いのかと聞かれると答えづらく思っています。
明確な解はないものの、経済合理性一辺倒ではダメとなんとなく感じる瞬間はあります。例えば、いわゆる業界No.1、リーディングカンパニーで働く方がイキイキとしているかというと必ずしもそうでない印象を受けることがあります。もちろんイキイキ働いている方もいるのでしょうが、市場の拡大、シェアの維持に追われていて、主体的に働けているかというと疑問に感じる場面にも遭遇します。
一方、ニッチカンパニーは利益率はまあまあ高いものの必ずしも売上は多くなく、給与や福利厚生面では大手企業にかなわないと思われますが、イキイキと勤めている人の比率が高い印象があります。ニッチゆえ、外から攻められにくく、短期的な競争に追われにくいこともあり、中長期的視点で考えられることや、1人ひとりのこだわりがよりニッチ度を高めるために主体的になりやすいという側面がある気がしています。
このあたりが、経済合理性一辺倒ではダメというヒントになるかもしれません。地方の地域社会や農業を見直したほうが良いと書かれている宇沢先生の考え方に通じるところがある気がします。
私は宇沢先生がいうほど、農業が主体的に働くことができ、工業が主体的に働くことができないとは思わないのですが、規模や経済合理性ばかり追求しすぎると、企業の内向きな論理が働いてしまい、主体性が失われたり、不祥事に繋がったりすることがあることはなんとなく感じるところです。
ネット通販などECの発展に伴う流通革命が起こったり、AIやIotの発展に伴う、カスタマイズの実現を思うと、規模の経済にとらわれない事業を定義していくことが今後益々重要になってくる感じがしています。
そのヒントがニッチカンパニーであったり、地方の活性化にあったりするのだと思います。
宇沢先生が掲げている社会的共通資本の考え方は、最近、読んだ面白法人カヤックの本でも記載されていました。地域を活性化するためには、地域経済資本、地域社会資本、地域環境資本の3つが大切だと書かれていて相通ずるものがありました。
経済合理性だけでもダメ、一方的な環境保護だけでもダメという中での方向性の一つが1人ひとりが主体的に社会に参画することで、カヤックの柳澤社長がおっしゃっている地域社会資本を大きくしていくことだと思います。
最近、巷で言われているSDGsもおそらくこの視点が大切だと思います。17の項目の単一項目だけ見て、環境保護とか、飢餓・貧困の絶滅とか言っていてもダメで、皆がいかに主体的に関わりあうかを追求することがカギになる気がしています。
この書籍は人間の経済というタイトルになっていますが、1人ひとりが主体的に社会に関わることで、社会全体が活性化され、皆が幸せになることを目指すこと。目先の利益にとらわれず、地域資源を大切にしながら、50年後、100年後のことを考え、動いていくことではないかと感じました。

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