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調子が悪かったので病院行脚したら双極性障害かもしれなかった話


①端緒
 ずっと調子が悪かったのだが、輪をかけて悪くなっている気がした。仕事が自分のキャパシティを超えていたこと、私生活で解決の見込みが当分先までないトラブルに見舞われていたことなど、思い当たる節はあったが、その結果こうなるか? と疑問を持ちたくなるような感じの調子の悪さだった。
 以前は気圧が下がると偏頭痛や眠気でだるくなることはあったが、全く動けなくなることはなかった。
 それが、外出先でパートナーと一緒にいるにも関わらず精神状態が極端に悪化し、同時に動けなくなり、なんとか帰宅してからもパートナー宅のソファに埋まったまま微動だに出来ず呻吟するという事態が発生した。手足が鉛のように重くなり、少しの光でもまぶしくて目が開かず、声を出すのも億劫だった。あんなことは初めてだった。いつからか忘れていたが、毎日のように頭痛や吐き気を訴えるようにもなっていた。
 これでも温厚であまり気分が変わらない方を自負していたのだが、精神的にもかなり不安定になり、些細なことがきっかけで泣き崩れたり激怒したり目の前にいる相手をめちゃくちゃな理論で詰めたりすることが重なった。否、些細なきっかけで爆発するというと論理が逆だったかもしれない。もとから崩壊して爆発しているところで、理由をくれたものに飛びついてわざわざ崩れている姿を相手に見せつけてそれを相手の咎にして謝罪を強いるような状態で、自分の醜悪さにまた落ち込んで動けなくなった。脱水中の洗濯機に巻き込まれているようで、振り回されてコントロールが全く効かないのである。仕事にも支障が出始めていた。私の理不尽な挙動の被害の8割ほどを食っているパートナーはそれでも別れないと言ってくれていたが、そのままだとパートナーの精神状態にも悪影響が出ることが容易に想像できた。

②病院行脚
 そもそも頭痛、吐き気、体が動かないくらいの倦怠感という身体的な症状が怖かったので、最初にかかりつけの内科に行き、そこから脳神経外科へつないでもらった。本来は事前予約が必要なMRIを初診当日で受けさせてもらい、結果、脳の器質的な病気ではないということだった。ただし、偏頭痛の診断はもらい、予防薬を処方された。これのおかげでかなり生活が改善した。
 しかし気分の激しい上下については偏頭痛の処方薬だけではどうにもならない。脳神経外科の予約と並行して、心療内科の予約を取っていた。紹介状が不要で職場付近にあるメンタルクリニックに電話を入れた。幸い、一分一秒を争う状態になる前に行動でき、予約も比較的すぐに取ることができた。これまで二度、メンタル不調で心療内科や精神科のお世話になっていたので、流れは把握できており楽だった。

③心療内科
 診察室で気持ちをコントロールできなくなって泣くなどしながらも、かなりゆっくり時間をとって診察してもらうことができた。既往歴、現在困っている症状について話をした。医師が目を止めたのが、気分が上がる(私の場合、いい気分になるわけではなくイラつきやすく怒りっぽくなる形だった)ことと他人に対して攻撃的になるということの2点である。最初はオーバーワークによる鬱の可能性を考えていたが、ここを見ると単なる鬱ではなく双極性障害の疑いがあるということだった。私も、かつて2度心療内科にかかり、鬱と診断された時とは異なる形で症状が出たと感じており、ひっかかっているのはその2点だった。
 もともとPMSによる気分障害で漢方薬を処方されており、それを通月で飲むべきではないか……という話にもなったが、一旦気分を安定させる薬を処方され、様子を見ることになった。

④変化
 結果として、処方された薬が自分に合っていたらしく、生活が大幅に改善された。
 まず、気分の波がならされたと感じる時間が長くなった。以前は、例えるならば気分の大波と小波の両方にもみくちゃにされてコントロールが不能になっていたが、小波に関してはほぼ気にならなくなった。おそらく気疲れ由来の異様な疲れやすさや怠さもかなり軽減された。仕事に集中できるようになり、どうしても不可能だった習慣的な運動や化粧ができるようになってきた。何もないところで泣きだしたり、仕事中に異常なイラつきに支配されることもほぼなくなった。
 大波に関してはそれでも制御が難しいと感じたため医師に相談し、処方された薬の量を若干増やしてもらった。現在様子を見ているところである。
 次に、よく眠れるようになった。薬は服用してから90分ほどで体のだるさと眠気が現れるため、そのタイミングでベッドに入るようにした。以前は5~6時間ほどだった睡眠時間が7時間以上に延び、日付が変わってからも起きていることがほとんどなくなった。
 最後に、依存しがちだったものにあまり頻繁に手を出さなくなった。酒やその他、おそらく病院に通うほどではないが生活を害している気がしていたのにやめられなかったものを、気づいたら触らなくなっていた。酒に関しては薬と並行して摂るのが禁忌だからというのが大きいが、それ以外に関しては本当に気づいたら触っていなかった状態である。結果として可処分時間と気持ちのゆとりが増えた。
 精神面でも、薬を処方されるくらい調子が悪いのだから「人並み」「人以上」を目指して仕事をしなくてもいいのではないかと思い、自分に対して手綱をすこし緩められるようになった。もともと追い詰められやすく視野も狭まりやすい性格をしていたので、これくらいでちょうどよかったのだと思っている。

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