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人にあらず

母は、親戚の葬式、
全てに私を連れて行った。


母のいとこの赤ちゃんが
心臓病で5ヶ月で亡くなった。


くりくりの目は閉じられ、
くぼみ、

頬はこけていた。


怖い、とは、思った。


でも、たった5ヶ月でも、

かわいくて
大切にされたのだろう
と感じた。


そして、子どもが亡くなるってのは、
ものすごい悲しみだと感じた。


棺に釘を入れ、石で叩く儀式は
異常なつらさだ。

「もう顔を見ることは二度とない」
家族が崩れ落ちる。


小学生の時、
丹波哲郎の「大霊界」という映画を見た。

「死んだらどうなるのだろう」
という疑問に直面した。


看護学校に入学し、
「死に方のコツ」という本を読んだ。

心停止しても、
耳は聞こえているらしい。
ご遺体に大切に触れたい、
という気持ちが芽生えた。

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助産師になると

亡くなった赤ちゃんの分娩も介助した。

泣かない赤ちゃん。
大切に小さな柩に納める。
スタッフみんな無言で
鶴を折り、
柩に並べる。

内科病棟の非常勤看護師になると、
忙しい常勤看護師の代わりに

亡くなった患者さんの全ての管を抜き、
着替えさせ、
メイクをさせてもらい、
髪を整え、
霊安室に運ぶ。
全てひとりで行う時もある。


いつも「死」が近くにある。

世界の歴史において、
遺体を扱う職業や
人の身体を直接扱う職業は
「非人」と呼ばれました。
死んだ動物の処理。
罪人の処刑。
床屋。
産婆。

非人。
人じゃない。
人にあらず。

「世間とズレちゃうのはしょうがない」

私は、世間が
だいすきであり
だいきらいであり

人でいたくなくなることがあって。

なので、
産婆の一種である自分が
「人にあらず」
と言ってもらえたことに
どこか心が軽くなる。


釈迦が門外を散策している途中、
最初に老人に会い、
次に病人に会い、
死人に会い、
修行者に会って、
世の無常を感じて出家しました。

「世間とズレちゃうのはしょうがない」


生老病死を身近に感じることは

生きる人を
強くしてくれる気がします。






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