自分は大学の文系学部を出て、メーカーの事務屋稼業で糊口を凌いでいるが、実は長い文章を読んだり書いたりするのが、あまり得意ではない。 中学の頃、同級生に高名な大学教授の息子がいて、彼が難しくて長い本を読むので、自分もそんなことが出来るようになりたい、という思いで、学校の図書室から分厚い文庫本を借りて読み続けた。トルストイだとか、ドストエフスキーだとか、吉川英治の三国志とか。当時の人気作家は旧制高校を出ていたので、古典への憧憬こそが目指すべき道である、との気風も、幾ばくかは残っ
中国の古典である易経は万物の生滅を64の卦に分けて表しているもので、乾坤一擲とか陰陽とか、日本語にも易経に由来する多くの言葉が残されている(昨今ではなかなか日常で使うことはないけれども)。自分は公田蓮太郎の易経講話も通読していない初学者ゆえ、安岡正篤「易学入門」を時折眺めては、時勢のあれこれを観ずるよすがとしているが、とりわけ自身の置かれている環境が卦でいうところの困・井・革から鼎に差し掛かるようなところであるので、該当部分を思い出した時に見返すことが多い。 ところで困・井
昨年の正月、年賀状だけのやり取りをさせていただいている方から、今回で賀状を出すのは最後にしたい、今後は折に触れて文などを、とのお知らせがあった。還暦を機にということであろうと思うけど、ちょっと寂しい気持がする一方、人気作家さんゆえのわずらわしさもあるのだろう、と受け止めた。 桜の咲くころに引っ越したので、ゴールデンウイークに転居のお知らせを送った。住所変更のお知らせだったのだけれども、思いがけず多くの方から電話や葉書を頂戴した。就中驚いたのは、大学のゼミの指導教官からの一筆
行きつけの店、というのが1軒だけある。寮の最寄り駅からスーパーの前を通って、商店街脇の細い道を入ったところにあるお店。ペンキ塗りのカウンターに、奥に小上がりがあって、カウンターの上には女将さんの作った大皿料理が何品か並んでいる。カウンター突き当りの天井にテレビがあって、野球中継だったりバラエティーが映っている。店バレしたら大変なことになるが、女将さんはどちらかというとお母さんと呼んだ方がいいタイプ。旦那さんが仕事から帰ってくると手伝いをしている。 客筋は実にバラエティーに富
街かどに流れる歌声に、胸がキュンとした。 歌詞からググったら、小泉今日子の歌だった。 1991年、未だ見ぬ恋に恋い焦がれていた頃のヒットソング。 キュンとしたのは良かったが、歌詞の中に「あなたは ずっとそのままで 変わらないで」というのがあって、ちょっと引っかかった。作詞した本人の後年の述懐によれば父に捧げる歌であったとのことなので相手を束縛するようなものではないのだが、小耳にはさんだその時は、出会った相手を束縛するかのように聞こえてしまったのだ。げに先入観は恐ろしい。 h
3年目にして初めて、ローズマリーの花が咲いた。 門から玄関に至る通路の脇に花壇が設えてあり、引っ越した当初猫の落とし物に悩まされていた。日陰になることが多い軒下の乾燥した土壌に適した猫除けということで這性のローズマリーを植えたところ、9号ポット2つから見る見るうちに大きくなり、花壇全体を覆うまでになった。梅雨時は少々虫が湧くものの、それ以外は水やりすら要らない丈夫な子たちである。もちろん狙い通り、お猫さまたちは近寄ることすらできない。 ところがそれだけ元気なのに、なぜか花が
その薄い文庫本は三連休明けに届いた。三連休中に、ほかのもう一冊と一緒に中古本を注文したことは覚えている。ただ、今となってはなぜ本書を注文したのか、よくわからない。もう一冊の貝塚茂樹「孟子」を頼んだのは、直前に読んでいた兼原信克「歴史の教訓」(新潮新書)の影響であることは覚えているのに、不思議なことだ。 ローザ・ルクセンブルクの名前は、確か高校の世界史で機械的に覚えた。何となく生きていた時代のこともわかっている。だけれども何をした人なのかまでは忘れていたし、もともと薄っぺらい
細野さんの記事に関連して、同世代の大学生の子を持つ親としてちょっとコメントしたくなった。 まず昔ばなしから。細野さんが学んだ頃の京都はモラトリアムを謳歌するのが大学生活である、という気風があったことは事実として認めたい。自分もそこにリコーダー同好会があったから受験勉強を頑張ったクチだ(笑)。ゲバ棒持った過激派が門番をする一部学舎、新歓時期になるとオルグで休講となる授業(補講殆どなし)、名物教授の楽勝単位があるかと思えば…書き出すときりがないのでやめておこう。学費も安かったし
私の父方の祖父は3歳の時に亡くなっており、物心ついた時から祖母の家に月参りのお坊さんが電車に乗って来ていた。月命日にお坊さんが来ると祖母から電話があり、歩いて3分ほどの祖母の家の広間で正座して、お坊さんがむにゃむにゃと阿弥陀経をあげるのを聴くのが倣いだった。こういうことを言うとなんだけど、そのお坊さんは鼻にかかった声で本当にむにゃむにゃ言ってるかのようなお経のあげ方をしていて、終わってから仏法を説くでもない、そんな方だった。 電車を乗り継いで1時間ちょっとのところに母方の実
2週間ほど前から、ひょんなきっかけでLOUDNESS"という"ロックバンドをYoutubeで視聴している。同世代が熱狂していたバンド、本場米国に日本のバンドとして初上陸した伝説のバンドなのだが、誠に申し訳ないことにこの歳になるまで名前しか知らなかった。そういうのに背を向けて、自分はリコーダー吹いてたから(笑)。なので”という”とカッコつきの表記になっている。 初上陸の様子 https://youtu.be/MVKQ4I-ipMw そんなビデオをyoutubeに勧められるま
2020年1月17日、関西在住のリコーダー奏者である村田佳生さんがリサイタルを開いた。演奏会フリークでない私がその情報を入手したのはほんの一週間前だったが、運よくチケットを入手することが出来た。 村田さんは関西ではリコーダーの王子と呼ばれているのだそうだ。今は少し落ち着いているが昔はがっつり金髪に染めていたらしい(写真は演奏会チラシより拝借)。実物はこの写真よりもさらに男前で、ソフトな物腰はまさに王子さま。当日の会場、舞台右手3分の1に妙齢(かなり年上)の女性ファンが陣取る
著者のミチコ・カクタニのことは、2016年の大統領選挙をツイッターで追っているうちに知った。米国で最も著名で信頼され、かつ辛辣な文芸批評家、NYTで何年も活躍されていること、父君は数学者であったことなど、wikipediaを見ると色々書いてある。もちろん会ったことはない(笑)。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%81%E3%82%B3%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83
noteを始めるにあたり、初っ端からこんなネタで恐縮ですが、いわゆる年金だけだと老後資金が足りなくなる、という問題である。 金融審議会 「市場ワーキング・グループ」報告書 の公表について(令和元年6月3日)https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603.html もともと年金だけでは生活できない、というのは何十年も前から言われていることだし、少子高齢化によって現役世代の負担が増えていくことについても(幾度とない