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最高の教材

ある夜、若い男性から電話があった。彼は横浜にある中高一貫校の高校3年生だった。授業を受けたいと言う。私が彼に「横浜だったら、たくさんの英会話教室があるんじゃないの?」と言ったら、彼は「特別な授業をして欲しいんです」と言う。大学受験の2次試験が英語での面接だという。新宿まで通いたいと言う。私は「わかりました来てください」と言う。誰からこの教室を聞いたかと聞くと、「私のお母さんがネットで見つけました」と言う。

後日、彼は来た。私は彼に、彼の小学生時代から今まで、彼の記憶に残っていることをすべて聞き出した。小学校の時、弁論大会で優勝し他校の子供たちと国連に招かれた、中学高校でのクラブ活動、副部長だったこと、なぜ英語を必要とするのか、その大学で勉強したいこと、そしてなぜその大学なのか、なにを専攻する予定なのか、なぜその専攻なのか、その教授について知っていることはなど、ありとあらゆることを聞き出した。

「わかりました。今日は帰っていいです。あなたの言ったことを日本語とそれを翻訳した英語とのセットでPDFで送ります。次からは面接の日まで、これで面接のシュミレーションを僕と英語で行います。知らない単語や表現など、わからないものをチェックしてください」。彼が去った後、翻訳したものに、完了形、仮定、関係詞などしつこくない程度まぶして文をおしゃれに盛り付け、PDFを彼に送る。

週に2、3日彼は来て、3週間ほど私が面接官になりトレーニングをする。私は仕事でかなりの人をインタビューしていたので、どういうことを聞けばいいかわかる。

面接日の後、彼はやって来て「面接で聞かれたことはここで聞かれたことと殆んど同じでした。うまく英語で答えることができました!」と言う。当然だけど、合格だった。

英語も含めて外国語を学習するには当然、文法の知識、その言語でのある程度でのスピーチ力が必要になる。参考書などにあるストーリーで学習しても、それで得た知識はそのストーリーとともにやがて消滅する。興味がないから。旅行でも何でもいいので、経験や考えなど自分の脳にある情報をある程度のボリュームのストーリーにし、学習したい言語の文法的要素をそれに取り入れ、スピーチ力もつける。マイストーリーなので、得た知識はそのストーリーとともに決して忘れることはない。個人にとって、最高の教材になる。文法は習うことも教えることも学習範囲というものがあるので、要領よく学習すれば時間はかからない。


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