博士課程で分野を変える

 この記事では、大学院の修士課程から博士課程で分野を変えて進学するまでの過程を日記的に記述します。

1. 博士課程への進学を決意する

 私は、大学での勉強や研究はそこそこに頑張り、M2の春までは「何でも良いから有名企業に就職するぞ」という考えだけで過ごしてきました。しかし、いざ就活を始めると専門性を活かせる&自分のやりたい仕事は何一つ有りませんでした。その時初めて、自分の持つ理系修士としての(私の思う)価値が皆無であることに気が付きます。もちろん、大卒以上の肩書きや研究・教育の経験、理系全般の知識を活かした仕事はたくさん有りました。私の同期も、自分の好きなこと・得意なことを活かし、各々の道に自信を持って進んでいきました。しかし、私はどうしても「自分にしか出来ない役立つ仕事をしたい」という想いを捨てきれませんでした。当時の心情は、恐らく2chとかでよく見る「お前はいつ自分が特別じゃないと自覚した?」問題で説明できると思うのですが、大学では自発的に勉強する・研究を展開できる機能があり、チャンスが残っているのが分かっていながら妥協して就職することは出来ませんでした。
 ”自分にしか出来ない役立つ”ことを探す手段は幾つかありました。教養系の大学に入り直す、NPOに入る、旅に出る等、色々考えました。しかし、修士卒のキャリアを活かせ、無条件に勉強や情報収集ができ、専門性を認められる肩書きが手に入るものは博士課程しか有りませんでした。

2. 博士課程の分野を決める

 博士進学を決意したにも関わらず、どんな研究をするかが決まっていませんでした。今考えると、博士進学者の中では相当珍しいパターンだと思います。昨今の若手研究者の厳しさを知ってる同期や先輩からすると、「何を言ってるんだコイツは…」と呆れられてたに違いありません。
 時期は5月、とにかく自分のやりたい事探しを始めました。近郊のあらゆる国公立・私立の、関連する分野の院試説明会に足を運びました。そこで見つけます。

「○○分野に関連して応用性の高い内容なら、研究テーマは自由だよ。」

…これじゃん。

 決まりました。修士課程の分野とは近くも遠いけど、研究室の雰囲気も良く、何より直感的にここだと思いました。

3. 院試

 試験は2月でした。科目は英語と専門試験、面接でした。自分はこう対策しました。
英語:試験問題は、英語論文の要約&和訳、和文書籍の英訳でした。分野が違うこともあり、関連分野の総説を読んで単語を勉強したり、何より速読力を培うために英語の論文を毎日読むようにしました。
専門試験:博士課程の指導教員に指示された書籍2冊を隅々まで読みました。
 修士課程の研究と上記の勉強の両立は本当に大変でしたが、時期が限られていたから頑張れたのかもしれません。その甲斐あって、試験は結構よく出来ました。
 一方で、面接の手応えは結構厳しめでした。特に、具体的な研究テーマや計画が定まっておらず、「博士課程でどんな研究がしたいのか?」という至極一般的な質問にも答えられなかったですし、きっと指導教員のサポートがあって合格を頂けたのでしょう。

4. 博士進学からの一年間

 とにかく研究テーマが決まってない!修了要件の論文数や在学期間を考える前に、やることを決めないといけませんでした。テーマ決めの際、常に”自分の好きなこと””自分でないと出来ないこと””世の中の役立つこと”、この3本柱を忘れずに過ごしました。色んな分野の論文・学会・先生の知見を頼りに、D1の一年間掛けてようやく研究テーマを決めることが出来ました。一般的には”何も進んでいない一年間”ですが、自分にとっては24-25歳の時期に勉強したこと、可能性を模索したこと、苦労したことは一生の宝物だと思います。この研究テーマが、後のキャリアに大きく関わる訳ですが、その話は別の記事にて。

5. まとめ

 博士課程はキャリア面で暗い話題も多いですが、自分にしか出来ない仕事や研究を展開できる唯一無二の場所だと思います。博士号の名前は伊達じゃありません。研究内容にも依りますが、専門性を以て独立した価値を自身に見出すのであれば、博士進学は面白い選択肢なのかもしれません。

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