学振との向き合い方

1. 学振とは?

 日本学術振興会が、若手研究者に対してお給料&研究費を提供する仕組みのことです。通称、博士課程の学生が貰えるものはDC、博士修了後の若手研究員が貰えるものはPDと言われています。理学系・農学系では、採用率はDCで20%前後、PDで10%程です。自分のやりたいテーマで研究を進めつつ、独立して生活できる程度のお給料を貰えるのは、若手研究員にとって恵まれた環境と言えるでしょう。
 先に書いておきますが、この記事は「俺はこうやって学振取ったから参考にしてくれよ!」というものではないので、真剣に学振を取りたい方は優秀な他の方の経験談や資料を参考にしてください。

2. 学振を取るには?

 学振の評価基準は”研究者としての資質””着想およびオリジナリティ””研究遂行能力”です。言い換えると、
① 研究実績があるか?
② インパクトのある研究テーマか?
③ 実現可能性の高い明瞭な実験計画を立てられるか?
の3点で評価されます。これらは、学術の世界で研究者として生き残るのに重要な資質だと思います。国が若手研究者に提供できる予算には限りがあるので、今は”選択と集中”作戦が取られています。なので、「優秀で将来活躍できそうな人には積極的にサポートするよ」というスタンスで仕組みが作られてる訳なんですね。
 もちろん、学振を取れなかった人でも優秀な人・個性ある研究をやってる人はたくさんいます。それに、学術の発展には基礎研究の積み重ねが不可欠ですので、個人的には若手研究者の雇用・生活をサポートする仕組みが一層拡大されることを願う限りです。

3. 学振を取れる/取れない

 3つの観点からお話します。
 1つ目は経済的な面。学振を取れると、DCでは月額20万円、PDでは月額36万円程が貰えます。この金額は、DCについては学生アルバイトの収入と比較すると破格でしょうし、PDに関しても一人で生活するには十分以上なものと言えるでしょう。期限付きとはいえ、自分の研究に没頭しながら収入が入ってくるのはお財布の観点から安心感が大きいと思います。
 2つ目は心理的な面。とても優秀な方・常に自信に満ちた方以外は、次の研究ポストについて不安を抱え続ける生活になります。その中で、各分野に精通したベテラン研究者から「あなたは同年代の中で優秀な研究者ですよ」というお墨付きを貰えるのは、大きな自信になると思います。
 3つ目はキャリアの面。学振の期限は、DCは博士課程が終わるまで、PDは3年間です。その後は自分で研究ポストを探す必要があります。その際に、学振に採用された経験があると有利に働く場合があります。研究員や大学教員を採用する際に、指導教員や出身大学と繋がりが無い場合、論文数や論文の格以外に研究者としての資質を判断する材料がない訳です。上記の通り、学振に採用されると一程度の研究能力があることの証明とも成り得るので、助教クラスの公募を受ける際はメリットが大きいと考えられます。

4. 学振について思うこと

 博士課程に在籍中の方、博士号をお持ちの方は、1~3で記述したことは百も承知だと思います。ここで書くのは、”学振に採用されなかった場合の自分との向き合い方”です。研究の世界で生きると決意した若手研究員にとって、学振に採用される/されない問題は避けては通れないと思います。
 私の事例を挙げると、DC2とPDに一度ずつ申請し、DC2は不採用A、PDは不採用Cでした(不採用者は評価の高い順からA~Cで分別されます)。なので、これは負け惜しみの記事と扱って頂いて構いません笑 むしろ、その上で記事を見て頂けると幸いに思います。
 ここでは、先程の”経済面””心理面””キャリア面”の3観点から、自分なりにどう向き合ったかを書きます。
 まずは経済面。これは仕方ありません。宝くじに外れたと思って、アルバイトや副業に励みましょう。将来への投資期間と捉え、研究に支障の出ない程度に、必要な分を稼げるよう、上手く計画立ててこれまで通り頑張りましょう。
 次に心理面。重要なのはここです。焦るお気持ち、本当によく分かります。自分もD3の時に出したPDで不採用Cを貰った時は、研究者やめて副業で生きようかと真剣に考えました。何より、受入れ先の先生に合わす顔がありませんでした。ただ、ここで諦めないで下さい。とにかく「たまたま今は評価されなかった」と思うようにしてください。論文数が少ないのは、これから増やしていきましょう。申請書の書き方や研究計画に関する反省点は次に活かしましょう。それ以外の要素は、”評価者に自分の研究の価値を完全を理解して貰えなかった””申請分野では評価が難しかった””評価者の研究スタンス(基礎志向/応用志向、保守的/革新的、など)と合わなかった”と捉える等、自分を責めすぎるのは止めましょう。研究人生は長いですから、今年は偶然ダメだった位に留め、次に活かしましょう。
 最後にキャリア面。学振を取れたら、実績を積むための研究に没頭できる、次のポストに向けて少し有利になる、という利点があります。ただ、逆にいうと”利点がある”だけです。学振を取れた人が、その後も順調な研究人生を歩むかどうかは誰にも分りません。逆に、学振を取れなくてもユニークな発想からインパクトのある研究を展開したり、目覚ましい実績を上げて出世したりと、目を見張る活躍をされてる先生方もたくさんいます。要は、”学振を取れた→研究者として成功した”ではなく、”研究者として成功した→学振を取ってた人が多い”ということです。全ては、これまでの時間の使い方ではなく、これから何をするかだと思います。

5. まとめ

 学振について色々書きました。もちろん、学振に採用された方は本当に凄いと思います。実績があり、計画構築力・文章作成能力があり、研究者に求められる資質が全てバランスよく傑出している方だから採用されたのだと思います。これからも、その能力を活かして活躍され続けることを願うばかりです。
 一方で、学振に採用されなかった場合でも、研究者としての道が閉ざされた訳ではありません。学振を取ることばかりが正解と思わず、今やれる最善を尽くし続けることで、自分の道が開けると思います。研究の世界で頑張る皆様を、私も陰ながら応援し続けられればと思います。

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企業の研究員です。修士課程と異なる分野の博士課程に進学し、海外留学を経て博士号を取得しました。D進を検討中・博士課程在学中の方々に、自身の記事が少しでも参考になれば幸いに思います。