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人生の5年間をSNSに費やす現代人/要約『スマホ脳』

うわー、スマホ中毒だなぁと感じつつも、隙があればSNSやニュースアプリを開いてしまう自分。
繁忙な日々が続き、「あれ?ここ数日、ほとんどスマホ触ってなくない?」と逆に驚く自分。
あるあるですよね~~~

本書を手に取ったきっかけは、ATD人材開発国際会議で、
「職場において、スマホの通知がいかに生産性を低下させるか」
をあちこちで聞いたからです。

職場だけでなく、私たちの生活や人生全体を見ても同じことが言えるでしょう。
今のペースでスマホを使用し続けると、人生の5年間をSNSに費やすことになるそうです。たとえ平均寿命・健康寿命が延びているとはいえ、小さな画面をスクロールすることに5年も使ってしまうのは、果たしてどうなんでしょうか。。。
折角なら、「生きた心地がすること」に時間を費やしたいなぁと思いました。

そんな背景のもと、「スマホを使って」noteに要約をアップしています。
早速矛盾していますね💀

本書の最後に「デジタル時代のアドバイス」が掲載されているのですが、1番効果があったことを先に紹介します!
それは、「スマホの表示をモノクロにしよう」というもの。

スマホ開く時間、まじで短くなりました

モノクロ表示にすることで、スマホから得られるドーパミン量が減るそうです。SNSのスクロール時間、めっきり減りました。アザスモノクロ!!


第1章: 人類はスマホなしで歴史を作ってきた

人類が現代に適応できない理由

この本の主人公は、私たちが知る限り、宇宙で最も高度な構造物である。それは感情、記憶、意識など、私たちが経験してきたことの集大成である脳である。

雌の熊の卵子に突然変異という偶発的な変化が起きて、白い毛を持って生まれた。他の熊よりもアザラシに近づくのが得意となり、生き延びて、子孫を残す確率が高くなった。アラスカのクマは1万年から10万年ほどかけて、みんな白い毛皮になり、あまりに白いのでシロクマと呼ばれるようになった。このように、主に大きな変化が起こるには長い時間がかかる。

進化のスピードと環境の変化

人類史の多くを占める狩猟採集民として生きてきた時代では、生き延びるためには注意散漫で周囲の危険を常に確認していなければならなかった。しかし今では注意散漫にならないのが良いとされ、昔のような危険はもうない。進化のスピードが周囲の環境の変化に追いついておらず、今生きている時代には合わなくなっている。

感情があるのは生存のための戦略

生まれてから死ぬまで、脳は「今どうすればいい?」という問いに応えようとしている。脳は昨日起きたことなんて気にもしていない。すべては現在と未来のためである。たった今置かれている状況を判断するために記憶を活用し、感情を元にして正しい方向に自分を動かそうとする。だが、ここで言う正しい方向とは、精神状態が良くなったり、キャリアアップしたり、健康維持したりすることではなく、祖先がやったように生き延び、遺伝子を残すという方向である。

感情という現象

感情というのは、「自分を取り巻く環境への感想」ではなく、周りで何が起きているかに応じて体の中で起きる現象を脳が反応としてまとめたものである。それが私たちを様々な行動に出させる。

決断を下すとき、私たちを支配するのは感情

人間のあらゆる活動は、たった1つの欲求の結果である。その欲求とは、胸の内の精神状態を変えたいというもの。そこを出発点にして、私たちは感情に支配される。脅かされると、怯えるか怒るか逃げるか攻撃に出る。体にエネルギーが足りなくなると、お腹が空き食べ物を探そうとする。

意識ある「あなた」が十分な情報を持ち合わせていない時、もしくは時間がかかりすぎる場合、脳は即座に大まかな見積もりを取り、感情という形で回答を返してくれる。

スーパーのお菓子売り場に立つと、菓子を回避すべく進化したアルゴリズムが素早く見積もりを取り、お菓子が食べたいと激しい欲求で私たちに答えを与えてくれる。

ネガティブな感情の優位性

ネガティブな感情は、ポジティブな感情に勝る。人類の歴史の中で、負の感情は脅威に結びつくことが多かった。そして、食べる事は先延ばしにできるが、脅威には即座に対処しなければいけない。強いストレスや心配事があると、それ以外のことを考えられなくなるのは、これが原因である。私たちの祖先は、明るい希望よりも、脅威の方がはるかに多い環境に生きてきた。恐怖を感じた瞬間に、脳はコルチゾールとアドレナリンを放出する指令を出す。

負の感情の根源は、ストレスである。


第2章: ストレス、恐怖、鬱には役目がある

ストレスのシステムが作られた過程

コルチゾールは体にとって最も重要なストレスホルモンである。不意にライオンに遭遇すると、HPA系が警報を鳴らし、この反応が視床下部ではじまり、下垂体が副腎にコルチゾールを分泌するよう要請する。そのコルチゾールがエネルギーをかき集め、心臓の拍動を強く早くする。ライオンに遭遇したら、「闘争か逃走か」しなければならないので、筋肉に大量の血液が必要になる。そのため拍動が速く強くなる。

今の私たちのHPA系にかかるストレスは、ライオンに出くわした時ほど集中力が求められない代わりに、長時間継続することが多い。仕事の締め切りや高額な住宅ローン、「いいね」があまりつかないなどで、長期にわたってストレスホルモンの量が増えると、脳はちゃんと機能しなくなる。

長期ストレスの影響

即座に解決すべき問題以外は、後回しにする脳の仕組みを考えれば、何もおかしなことではない。ただ長期ストレスの影響はこれだけではなく、私たちの思考能力にも影響を与える。適度なストレスは、精神を研ぎ澄ましてくれるが、度が過ぎると脳が明瞭に働かなくなる。緻密なプレイをする余裕がなくなり、その結果、些細なことでもつい苛立ちを感じるようになる。

もう一つ、脳が優先度を下げる機能は、長期記憶の保存である。記憶というのは、脳の異なる領域の間につながりができることで作られる。それを担当するのは海馬という脳の記憶の中心地である。ひどいストレスを受けているときには、海馬はできたばかりの記憶回路を通して信号を送る余裕がなくなる。

扁桃体の役割

扁桃体は、記憶や感情、とりわけ他者の感情を解釈するときに大きな役割を果たす。その中でも重要なのが、周囲の危険に常に目を配り、小さなことでも警報を鳴らすこと。ここで言う警報というのは、扁桃体がストレスのシステムHPA系を作動させることである。扁桃体の作動の仕方は「火災報知器の原則」と呼ばれる。つまり間違えて鳴らないよりは、鳴りすぎるほうがいい。

適度なストレスにさらされることは人間が機能するために必要である。1日や1週間程度の短期的なストレスは、集中したり、思考機能を鋭くしたりすることができる。

燃え尽き症候群と扁桃体

燃え尽き症候群の人は、HPA系のスイッチを切った実験動物と同様に、激しい疲労感でベッドから起き上がることができなくなる。扁桃体は、最新のインスタ投稿にすぐにハートがつかないなど、周囲の刺激すべてに反応してしまう。

都会に暮らす人が、交通事故での死亡者が多い自動車恐怖症よりも、蛇やクモ恐怖症でカウンセリングに通うのは、進化の観点から見ると論理的な説明がある。

不安―起きるかもしれないという脅威

不安は命を存続させるための機能である。非常に不快な感覚で、脅威などを体験することによって起きる。不安の場合も、ストレスと同様に「闘争か逃走か」のメカニズム(HPA系)が作動するが、原因が異なる。ストレスは、脅威そのものに対する反応だが、不安は脅威になり得るものに対して起こる。不安は、大事な計画を立て、集中するのを助けてくれる。

不安は人間特有のもの

動物にもHPA系があるが、人間のように「もしも〜」と未来を予知し、不安を感じることはない。想像上の脅威と現実の脅威を見分けることが、脳にはできず、見たくないものまで想像できるのは、知性を得た代償といえる。

長期にわたるストレスの代償

鬱症状は、ストレスフルな時期の後に現れることが多い。危険や感染症、殺されることから身を守ろうとする脳の働きによって、鬱は発達した。患者にとって、鬱になったのは自分のせいではなく、脳が進化した通りに働いているだけと考えることは重要である。


第3章: スマホは私たちの最新のドラッグである

スマホの使用状況

朝起きてからまずやるのは、スマホに手を伸ばすこと。1日の最後にやるのは、スマホをベッド脇のテーブルに置くこと。私たちは1日に2600回以上スマホを触り、平均して10分に1度スマホを手に取っている。起きている時では足りないようで、3人に1人が夜中にも少なくとも1回はスマホをチェックしている。私たちの4割は、1日中、スマホがないよりは声が出なくなる方がマシだと思っている。

ドーパミンの役割

ドーパミンの最も重要な役目は、私たちを元気にすることだけでなく、何に集中するかを選択させることである。つまり人間の原動力とも言える。お腹が空いているときにテーブルに食べ物が出てきたら、それを見ているだけで、ドーパミンの量が増える。つまり増えるのは食べている最中ではない。その食べ物を食べるという選択をさせるために、ドーパミンはあなたにささやく。

脳は常に新しいもの好き

ドーパミンが行動を促し、満足感は「体内のモルヒネ」であるエンドルフィンが大きな役目を果たす。スマホもドーパミン量を増やす。それが、チャットの通知が届くと、スマホを見たい衝動に駆られる理由である。

人間は進化の過程で、周囲の環境を理解するほど生き延びられる可能性が高まった。新しい情報を探そうとする本能は、ここから生まれた。新しいことを学ぶと脳はドーパミンを放出する。ドーパミンのおかげで、人間はもっと詳しく学びたいと思う。情報だけではなく、新しい人との出会い、新しいもの、新しい体験などにもドーパミンは反応する。

「かもしれない」が大好きな脳

報酬システムを激しく作動させるのは、お金、食べ物、セックス、承認、新しい経験のいずれでもなく、それに対する期待である。お金がもらえるカードを被験者に引かせる実験では、毎回確実にもらえるかわからない時ほどドーパミンが増えなかった。つまり、脳にしてみれば、もらえるまでの過程が目当てなのであって、その過程というのは、不確かな未来への期待でできている。ドーパミンの重要課題は、「人間に行動する動機を与えること」である。

私たちがスマホを見るのも「大事かもしれない」ことに強い欲求を感じるからである。SNSであなたの休暇の写真に「いいね」がつくのは、実は誰かが親指を立てたマークをした瞬間ではない。FacebookやInstagramは親指マークがつくのを保留することがある。そうやって、私たちの報酬が最高潮にあおられる瞬間を待つのだ。刺激を少しずつ分散することで、デジタルなご褒美への期待値を最大限にできる。「いいねが1個ついたかも?見てみよう」と思うのは、「ポーカーをもう1ゲームだけ。次こそは勝てるはず」と同じメカニズムである。


第4章: 集中力こそ現代社会の貴重品

マルチタスクの代償

現在のデジタルライフでは、私たちは複数のことを同時にしようとしがちである。私たちは1度に1つの事しか集中できない。複数の作業を同時にこなしていると思っていても、実際にやっている事は作業の間を行ったり来たりしているだけである。問題は、脳がさっきまでの作業のほうに残ってしまうことである。

脳には切り替え時間が必要で、さっきまでやっていた作業に残っている状態を専門用語で注意残余と呼ぶ。ほんの数秒をメールに費やしただけでも、犠牲になるのは数秒以上である。切り替え時間の長さを確定することはできないが、集中する先を切り替えた後、再び元の作業に100%集中できるまでには何分も時間かかると言う。

しかし、並行して複数の作業ができる「スーパーマルチタスカー」と呼ばれる人が、人口の1から2%のみ存在する。

限りある作業記憶

マルチタスクは、集中力が低下するだけでなく、作業記憶(ワーキングメモリ)にも影響が及ぶ。作業記憶とは、今頭にあることを留めておくための知能の作業台である。

サイレントモードでもスマホは私たちの邪魔をする

大学生500人の記憶力と集中力を調査すると、スマホを教室の外に置いた学生の方が、サイレントモードにしてポケットにしまった学生よりも良い結果が出た。

リンクがあるだけで気が散る

ポケットの中のスマホが持つデジタルな魔力を、脳は、無意識のレベルで感知し、スマホを無視することに知能の処理能力を使ってしまう。その結果、本来の集中力を発揮できなくなる。何かを無視するというのは、脳に働くことを強いる能動的な行為である。1日に何百回もドーパミンを少しずつ放出してくれる。存在を無視するために、脳は知能の容量を割かなければならないのである。気を散らされる。存在が当たり前になると、それが存在しない時でも強い欲求を感じるようになる。現代社会では、集中力は貴重品になってしまった。

長期記憶を作るには集中が必要

短期記憶を作るのであれば、脳は既存の細胞のつながりを強化するだけで良い。長期記憶を作る場合(専門用語では固定化と呼ぶ)は、プロセスがより複雑になる。脳細胞間に新しいつながりを作らなければならない。記憶を維持し、長く保たれるようにするためには、新たなタンパク質を合成しなければいけない。さらに新しくできたつながりを強化するために、そのことに集中することで、そこを通る信号を何度も出さなければならない。

脳は近道が大好き

脳は体の中で、最もエネルギーを必要とする器官である。成人で、総消費エネルギーの2割を費やしている。10代の若者なら約3割、新生児などは5割である。

石器時代には、欲しいだけのカロリーを体に取り込めることができなかったので、脳も、エネルギーを節約し、効率的に物事を進めようとする。記憶に関しては、特にエネルギーがかかるため、Google効果と呼ばれるように、別の場所に保存されているからと脳が自分では覚えようとしない現象が起きる。これは、その情報そのものよりも、その情報がどこにあるのかを優先して記憶するためである。美術館で見る絵画についても、写真を撮った作品は、それほど記憶に残っていなかった。

では、なぜ私たちは知識を身に付けなくてはいけないのだろうか。社会とつながり、批判的な問いかけをし、情報の正確さを精査するために、人間には知識が必要である。情報をその人の個人的体験と融合させ、私たちが知識と呼ぶものを構築するのである。本当の意味で何かを深く学ぶためには、集中と熟考が求められる。

周囲への無関心

知らない人と10分間自由に話してもらう実験では、視界にスマホがあった人たちはあまり楽しくなかった上に、相手を信用しづらく共感しにくいと感じていた。これは当然のことながら、ドーパミンが何に興味を向けるべきか指示していたためである。無視するというのは能動的な行為であり、会話についていけなくなる。ドーパミンの役割は何が重要で、何に集中を傾けるべきかを伝えることであるが、ここで言う重要とは、祖先を生き延びさせ遺伝子を残させることであった。


第5章: スクリーンがメンタルヘルスや睡眠に与える影響

20代のスマホ利用習慣とメンタルヘルス

20代の若者およそ4000人にスマホの利用習慣を聞き取り、その後1年にわたって観察を続けた研究がある。熱心にスマホを使う人ほど、ストレスの問題を抱えている率が高く、鬱症状のあるケースも多かった。デジタルデトックスが心の健康に良いだろうと思っていても、実際に実行していたのは、わずか30%にも満たなかった。

過小評価されている睡眠

眠っている時も起きている時と同じくらい脳はエネルギーを消費している。睡眠時には、昼間壊れたタンパク質が老廃物として脳から除去される。この老廃物は1日に何グラムにもなり、1年間で脳と同じ重さのゴミが捨てられることになる。脳が機能するためには、清掃システムがちゃんと機能することが不可欠である。

それ以外に人間が眠る最も重要な理由は、短期記録から長期記憶への移動である固定化が行われることである。

ブルーライトの闇

体内リズムはどのくらい光を浴びたか等によって制御される。眠りにつく時間を体に知らせるメラトニンというホルモンの働きである。メラトニンは、脳内の松果体という分泌器で合成される。分泌量は日中は少なく夕方になると増え、夜に最多になる。ブルーライトにはメラトニンの分泌を抑える特殊な効果がある。ブルーライトを見ると、「さぁ、起きろ油断せず警戒を怠るな!」と細胞が脳に告げる。

眠りにつく前に、スマホやタブレット端末を使うと、ブルーライトが脳を目覚めさせ、メラトニンの分泌を抑えるだけでなく、分泌を2〜3時間遅らせる。


第6章: SNS-現代最強のインフルエンサー

人間の脳は悪い噂が大好き

他の人が何をしているのか、互いにどんな関係があるのか。これを知っておくと有利だったため、人間にはそういう情報を得たいという強い欲求がある。実際に悪い噂は絆を強める。2人の人間が第三者のことを話す時、内容が悪いことであれば、双方に強い仲間意識が芽生えることが判明している。悪い情報が重要なのは、誰が信用でき、誰と距離を取った方が良いのかを把握することができるからである。

人生の数年がFacebookに吸い取られる

私たちはFacebookをよく使う。平均すると、1日30分以上かけている。同じだけの時間を今後も費やすなら、現在の20歳が80歳になる頃には、人生の5年間はSNSに費やす計算になり、そのうちの3年近くがFacebookに充てられる。

SNSの影響

マーク・ザッカーバーグは「自分の周囲の人のことを知っておきたい」という人間の欲求をネットワーク化することに成功した。それに加えて人間に根ざす「自分のことを話したい」という欲求も、成功の秘訣である。

自分のことを話す欲求

私たちは自分のことを話したい。自分のことを話しているときの方が、他人の話をしているときに比べて、被験者の脳の複数箇所で活動が活発になっていた。具体的には、目の奥に位置する内側前頭前皮質、そして報酬中枢と呼ばれる側坐核が活性化する。人間が先天的に自分のことを話すと報酬をもらえるようになっているのは、周りの人との絆を強め、他者と協力して何かをする可能性を高めるためである。

SNSを使うほど孤独に

調査によると、SNSを熱心に利用している人たちの方が孤独を感じている。孤独というのは、友達やチャット、着信の数で数値化ができるものではない。体感するものである。本当の人間関係、つまりリアルに人と会うほど幸福感が増す。一方で、Facebookに時間を使うほど幸福感は減る。

SNSが自己イメージに与える影響

10代を含む若者1500人を対象にした調査では、「Instagramのせいで、自分の容姿に対するイメージが悪くなった」と感じている。良い人生とはこうあるべきだという基準が手の届かない位置に設定されてしまい、その結果、自分は最下層にいると感じてしまう。

他人は自己を映す鏡

ミラーニューロンは、他者を模倣することで学習する脳の神経細胞である。ドアに指を挟んだ人の写真を見ると、あなたの脳でも指を挟んだ人の脳と同じような活動が起こる。痛みまでは感じなくても、他人がどう感じているかを理解することに役立つ。

頭の中を理解することは、生まれつきプロというわけにはいかない。脳の最も発達した部分である前頭葉が成熟する幼児期や10代にトレーニングを積む必要がある。親兄弟や友達と対面でやりとりすることで、ゆっくりと経験の助けを得ていく。そうやって、他人の心境や考えや意図をうまく認識できるようになる。ミラーニューロンを最大限に機能させるためには、実際に他人と会う必要がある。映画鑑賞には効果はないが、目の前で実演される演劇鑑賞には効果があった。

1日に3〜4時間、スマホなどの画面を見て過ごしていると、顔の見えないコミュニケーションばかりになり、若者の共感力を弱めてしまう。心理学者のキース・キャンベルは「ナルシズムという伝染病」がいかにしてSNSの誕生とともに広がったのか、なぜ自分のことばかり気になり、他の人はどうでもよくなったのかを論じている。

SNSの悪影響

研究によると、SNSによって「辛い状況の人に共感できる能力である共感的配慮」と「別の人間の価値観にのっとり、その人の視点で世の中を見る対人関係における感受性」の2つが悪化している。

SNSがもたらした影響

Facebookの元副社長はインタビューで「SNSが人々に与えた影響を悔いている。私たちが作り出したのは、短絡的なドーパミンを原動力にした、永遠に続くフィードバックのループである。それが既存の社会機能を壊してしまった」と語った。


第7章: バカになっていく子供たち

子供のスマホ依存

乳児、つまり月齢12ヶ月までの4人に1人がインターネットを使っている。2歳児は、半数以上がインターネットを毎日使っている。7歳児のほとんどがインターネットを毎日利用し、11歳は実質全員が自分のスマホを持っている。ティーネージャーは、1日に3〜4時間、スマホに費やしている。

脳の奥にある前頭葉は「ポテトチップスを全部食べてしまえ」という衝動に命をかけ、放置を先延ばしにすることができるが、成熟するのが一番遅い。一方、ポテトチップスを全部食べてしまえと背中を押す部分は、すぐに発達する。

アルコールは禁止してるのに

ドーパミンシステムの活動は、生きている間に減少していき、10年で約1割減ると言われている。若い時ほどの興奮を感じることはなく、そこまでのリスクを冒すこともなくなる。ドーパミンが一番活発なのは、ティーンエイジャーの頃で、その量は、報酬という形で激しく増えるし、失望すると、やはり激しく減る。

若者の方が依存症になるリスクが高い。アルコールを早くに覚えるのを規制しているのは、それが大きな理由である。米国小児科学会は、子供、特に1歳半未満の子供には、タブレット端末やスマホ使用を制限すべきだと主張している。

スマホ追放で成績アップ

イギリスの複数の学校では、スマホの使用を禁止した。生徒たちは、朝スマホを預け、学校が終わると返してもらう。その結果成績が上がった。特に成績を伸ばしたのは、勉強で苦労していた生徒たちだった。一部の生徒、特に成績上位の生徒は、スマホが気になることもあるかもしれない。だが、それ以外の生徒にとっては、スマホは害にしかならない。1日2時間を超えるスクリーンタイムは、鬱のリスクを高める。

1日に7時間のスクリーンタイムという想像を絶するほど長いスクリーンタイムを費やすティーンエイジャーは2割もいる。つまり、ティーンエイジャーの5分の1が起きている間の自由時間をずっとスクリーンを見つめて過ごしている。


第8章: 運動というスマートな対抗策

運動の効果

体を動かすと心が健康になるのは、ただの始まりに過ぎず、基本的にすべての知的能力が運動によって機能を向上させる。普段からランニングをしている会計士が、決算期の忙しい時期にも、同僚ほどストレスを受けないのは、生物学的な理由がある。ストレスのシステムが「ストレスとは、猛獣から走って逃げること」だった時代に形成されたからである。体を鍛えているおかげで、決算報告書に目を通したり、プレゼンしたりする時にもあまりストレスシステムを作動させずに済む。

運動の頻度

一番良いのは6ヶ月間に最低52時間、週に2時間の運動をすること。それより長く運動してもさらに効果があるわけではないようだ。


第9章: 脳はスマホに適応するのか?

タクシー運転手の脳が変化した理由

ロンドンでタクシーに乗ると、運転手が地図もGPSもなしに目的地にたどり着くことに驚く。ロンドンでタクシー運転手になるのは果敢な挑戦で、道路を2万本、場所を5万箇所記憶しなければならない。知識があまりにも広範囲なため「ザ・ナレッジ」という名前が付いているほど。このテストに合格した人たちの脳は、記憶中枢である海馬、正確には海馬の後ろのほうにある後部が成長して大きくなる。

学習による脳の変化

学習によって会話が成長し、物理的に大きくなる。脳は可塑性、変化することを示す。

デジタル時代のアドバイス

  • 自分のスマホ利用時間を知ろう

  • 目覚まし時計と腕時計を買おう

  • 毎日1〜2時間、スマホをオフにしよう

  • プッシュ通知もすべてオフにしよう

  • スマホの表示をモノクロにしよう

  • 運転中はサイレントモードにしよう

  • 集中力が必要な作業をするときは、スマホを隣の部屋に置いておこう

  • チャットやメールをチェックする時間を決めよう

  • 友達と会っている時は、スマホをマナーモードにして遠ざけておき、一緒にいる相手に集中しよう

  • 寝る直前に仕事のメールを開かない

  • SNSは積極的に交流したいと思う人だけをフォローしよう

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