見出し画像

物理学における新しい情報理論的世界観

物理学の一番大きな売り物は、世界観です。たとえば地球は平坦ではなく丸く、宇宙という空間に浮かぶ一つの天体であり、地上の重力と天体の運動は同じ法則に支配された現象であるなど、人類の考え方を大きく変えるのが、物理学です。基礎科学である量子情報物理学でも、そういうところに大きな面白みがあります。

素粒子や宇宙などの理論物理学は、世間で言うところの実学とも繋がっています。そもそも量子コンピュータの着想は理論物理学者のリチャード・ファインマンさん。具体化したディビット・ドイチェさんも量子重力研究者。量子情報分野で有名なレイモンド・ラフラメさんは元はホーキング博士の学生でした。ジョン・プレスキルさんも素粒子理論の出身です。

ブラックホールの量子力学を考え続ける中から、スピンオフとして量子メモリや量子コンピュータ等への新しいアイデアが生まれてきます。今では量子力学の研究は多岐に渡るようになり、量子コンピュータや量子通信などの工学的な応用も活発に行われています。基礎の中の基礎としての基礎物理学であった量子力学の研究は、応用工学の最先端に躍り出ている現状です。

また量子技術の進展は、生みの親である基礎物理学にも大きなフィードバックを与えます。応用としての量子情報技術の成熟が、例えばブラックホール情報喪失問題に対して新しい視点やアイデアを与えてくれるのが、この分野の現在の世界的な状況です。

現代物理学において、量子力学は重要な柱になっています。またその研究は多くのサプライズを人類に与えてきました。そして五感で感じる物体や時空は、決して感じるままの存在ではないことを教えてくれています。この世界の全てのモノは、「そこ」という場所にはっきりと「実在する」という単純素朴な存在ではないのです。

現在人類が手にしている、ミクロ領域でも実験的に検証済みである根源的理論は、場の量子論です。素粒子の標準理論も、この場の理論で記述されています。その場の量子論における「存在」の概念とは、日常とは随分違うものになっています。そのことを教えてくれる1つが、ウンルー効果です。等速直線運動をしながら真空状態の場と相互作用する測定機はもちろん粒子を観測しませんが、同じ真空中を一様加速度運動する測定機は、量子場がもつ零点振動を、加速度に比例した温度の粒子の集まりとして観測するのです。

このような基礎的理論研究が将来の革新的な技術の「揺り籠」になれるという事実を、もっともっと多くの方に知って欲しいと願っています。

海外でも、既にその事実を十分に理解して、基礎研究を育てようとしています。 「量子力学を情報理論の一種とすれば、量子情報でこの世の機序を理解しようとするのは当然の流れだ」 「米国科学技術政策局は量子情報による宇宙の理解を「量子フロンティア」の一つに挙げた」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?