💟第9話 瞼の母の教訓-甘え心を断ち切る!
🟡瞼の母を訪ねて
お寺の生活にも少し慣れた頃、師匠・富永慶法老師の許可を得て、芳聖が、母や幼い弟妹を喜ばせようと、法要で貰ったお饅頭を持って、母の郷里、岡崎市明見町田代の河合家を訪ねて行った時のことです。
既に従弟の代となって久しい河合家の屋敷の一隅に、母子三人でひっそりと暮らしていた母 元子は、芳聖の顔を見るや驚き、幼児二人を連れて逃げるように家の中に入り、戸を閉めて芳聖を中に入れず、「何しに来た?」と仰ったのです。
芳聖が「法要で貰ったお饅頭を食べて貰おうと持って来た!」と告げると、母 元子は「饅頭をそこに置いて、早くお寺に帰れ!」と仰って、芳聖に会おうともしなかったのです。
その時芳聖は、当時、この世で唯一の心の拠り所であり、瞼の母とも恋い慕う、その母の思いもよらぬ冷淡な対応に、かつて尊良精神を熱っぽく語りたまいし同じ母とは思えず、悲しさが胸いっぱいに満ち、絶望のあまり生きる勇気を失ってしまったのでした。
🟡小僧、早まるな!
母に言われるままに、お饅頭を玄関に置いて帰路についたものの、芳聖は、もうお寺には帰る気にならず、その日の夕刻、林の中の木に縄をかけて首吊り自殺をしようとしたのです。
ところがその時、幸運にも芳聖は、たまたま通り掛かった男性に助けられたのでした。その男性は、近くの食堂に芳聖を連れて行き、夕飯をご馳走してくれた上に、親身になって芳聖の辛い身の上話を聞き、
と、芳聖が自殺を思い留まるよう諄々と諭して、お寺まで送って来てくれたのです。
🟡甘え心を断ち切る!
この日の母の冷淡な対応は、少年芳聖にとって実に辛い体験でしたが、甘え心を断ち切って独立心や忍耐力を養い、この世を雄々しく生きぬくための尊い教訓となったのでした。
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