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アドベント交換日記2018

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#交換書簡

つまらない人間を愛しているか

つまらない人間を愛しているか

 怪獣歌会では、2018年の12月1日から25日まで、毎日noteを更新するという無謀な挑戦に乗り出しています。
 実は昨日から2018年の文フリ東京で頒布したQuaijiu Free 1のweb再録が始まっているのですが、それだけでは25日守りきれないので、怪獣歌会のメンバー内で交換書簡を回すことにしました。
 どんな話になるのかは誰にもわかりません。楽しみだね。

 今日から怪獣歌会は交換書簡

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愛と殺しのショータイム──凡庸な現実とドラマティックなフィクション

愛と殺しのショータイム──凡庸な現実とドラマティックなフィクション

アドベント交換日記、二番目は自称「妖怪・猫檀家」吉田瑞季です。山城周曰く「論理的サイコパスラブ実践主義者」。そっかー。

 山城氏は愛について書いて、「シリアルキラーどうですか?」という問いを投げてくれました。わたしも愛と殺しについて考えていたところですので、どんどん書いていきたいと思います。

 言っちゃうと、フィクションのシリアルキラーは好きなんですけど、現実のシリアルキラーは嫌いです。これは

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ぬいぐるみへの愛に悩んだときに

ぬいぐるみへの愛に悩んだときに

 こんばんは。アドベント交換日記三日目の担当は「虹色の水晶窟に住む蜥蜴」(命名:吉田)こと川野芽生です。
 蜥蜴なので心中とかシリアルキラーとか愛とかはよくわからない。変温動物なので。
 このあいだ、ある怪獣となぜか「寒さについてどう思う? 暑さは?」という会話をして、私はひたすら「寒さは美しい。暑さは美しくない。涼しさはきれい。あたたかさはかわいい。ぬるさはなんか不潔。熱も焔まで行けば美しい」と

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思慮深いひつじ

思慮深いひつじ

 怪獣歌会の交換日記、四番目は斉藤志歩が担当する。

 『斉藤さんにとって、ぬいぐるみ(への愛)ってどういう存在ですか?』

 まるちゃんはぬいぐるみのひつじだ。よく「一切は空(くう)」と言う。

 言う、というのは便宜的な言葉遣いで、実際には私の声帯が普段より一オクターブ高い音域で振動するのだ。川野さんがぬいぐるみについて『かれらには心があって、話しかければ答えてくれるのだけど、それはわたしが与

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お前はラブを「やる」のか?

お前はラブを「やる」のか?

 アドベント交換日記5番目を担当する唯物論的人間ラブ派の鳥居です。

 ラブについては日々考えていますが、考えているうちにちょっと困ったことに気がついてしまいました。

 人間、誰でも1つや2つは気に食わない存在とか、どう対処したらいいのかわからない対象を持っているように思います。
 私にはずっと態度を保留してきた三大属性というものがあり、それが「ポリアモリー」「唯物論者」「サイコパス」の3つでし

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ホモソーシャルにはいりたかった/フェミニズムをやってないフェミニスト

ホモソーシャルにはいりたかった/フェミニズムをやってないフェミニスト

【警告⚠この記事中には性暴力に関する描写が出てきます。】

 アドベント書簡も2周目にはいりました。山城周です。
 鳥居から言うと「フェミニズムをやっている人」らしい。どうかな?

 ちょうど先日知人が「自分は以前フェミニストを自認していたけど今は自認していない」って言ってたから理由を訊いた。「(フェミニズムに対して)リソースを割く余裕があるのにそれをしてないから」って言ってた。えっフェミニズムっ

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顔が好き(ラブフェアリ―との対話)

顔が好き(ラブフェアリ―との対話)

吉田です。アドベント交換日記も二周目に入りました。昨日はいったん文フリ配布フリペの記事を挟みましたが、その前の山城さんからの質問はこちら。

>吉田氏は「自分は悪をやらないけど悪ってる(あくってる)人モノことに好きを覚える人」に見える。愛が強い。悪、どうですか?

いやコレ一週目の「シリアルキラーどうですか?」の主語がちょっと抽象的になっただけやんけ~
しかもどうも山城氏はわたしが悪大好きガールで

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自由に生きて、自由に死んでくれ

自由に生きて、自由に死んでくれ

 斉藤です。

 前回の川野さんからの質問は以下のようなものだった。

 『人は自分に向けられる愛や関心からどうやって逃げて、あるいはどうやってそれらと折り合いをつけて生きているのか』

 難しい。人のことは知らないから、自分の話をしようと思う。

 私は性欲を感じることがあるが、ロマンティックな感情はよくわからない。いわゆる”交際”については、検討することがないわけではない。性的関係を持つにあた

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短歌のことなんて知るか

短歌のことなんて知るか

 山城周です。
 鳥居からのバトン、
 短歌って変じゃないですか? どうでもいい話をするには長すぎるし、物語をやるには短すぎる。やましろさんは短歌を作るとき何を考えているんだろう。この連作はこういう話にしよう、とか考えたりする? それともこんな話には興味がないかな?
 が、回ってきたときの私の第一声。

 「バトンむずかしいわ!!!!!!」

 ついに短歌のことを話す回が来てしまったかよ……って絶

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あわいのこと

あわいのこと

 ときどき、このうつつから一瞬だけ目を覚ましてしまったかのような、そんな瞬間が訪れた。わたしがなぜこの〈わたし〉の中に入っているのかわからなくなる瞬間だ。それは、頭で疑問に思うというのとは違っていて、自分がしゃぼんだまの被膜に包まれてまわりの世界から隔離されているような感覚を伴っていた。既視感に似ていると思う。歩いているとき、人と話しているとき、ふとしたときにやって来て、見た目はそっくりだけれどす

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見ること、書くこと、その自由

見ること、書くこと、その自由

 私は志賀直哉が好きだ。
 
 本を読むときに勝手に強化月間を設けることがある。昨年の夏は白樺派強化月間だった。武者小路、有島、里見らの作品を読み進む中で、気に入ったのが志賀だ。本当に面白いと思う。何がそんなに面白いのか、今回の記事で少しでも伝われば嬉しい。

 まずは作品から引用する。

『Kさんは勢よく燃え残りの薪を湖水へ遠く抛った。薪は赤い火の粉を散らしながら飛んでいった。それが、水に映って

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