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裁判傍聴:強要・傷害 ダム飛び込み強要事件

強要、傷害
(わ)第510号

古い事件ではあるが、傍聴記録なのでnoteに記しておく。

事件をザックリと説明。
借金18000円を返さなかったことに腹を立て、3人で共謀し被害者を脅し、無理矢理ダム湖の橋から飛び込ませた事件であ~る。

被告人は3人だが、1人は未成年者のため、2人(被告男性M・被告女性K)が同じ法廷で裁かれる。

新件。
被告人2人が入廷し、被告男性Mは堂々とした態度で、弁護士と笑いながら会話をしていた。

被告女性Kは席に座るなり号泣し、過呼吸にでもなったか胸を押さえたり、背中を丸くしたりしていた。

何とも対照的な2人だ。
MとKは、婚姻はしていないが同棲をしている。


そもそも、借金という18000円は、被告女性Kの知人Wが被害者に貸した金である。
2人は取り立てを頼まれたと言うが、知人Wによると
『もし返してもらえたら、そのお金は使っていいよ』……とのこと。
実際、被告女性Kが1万円、被告男性Mが8千円を手に入れる予定であったことが、調べで分かっている。


この裁判には、5人の登場人物が関与しているので、超アナログ的で申し訳ないが図にしてみた。

※事件当時の年齢
被害者男性(43才)
被告女性K(27才)
被告男性M(28才)
少年A(19才)
被告女性Kの知人W

被告女性Kは被害者とも顔見知りだ。
取り立てをするのに、被害者を捕まえたが、その時にお金を持っていなかった。
被害者に、借用書を書かせ期日を決めた。
返済日が遅れたら1日千円の利息とした。


悪徳金融もビックリする利息だ


案の定。
期日にお金が払われること無く、被害者本人からも連絡は無かった。

数日後。
被告女性Kが被害者となる男性の携帯電話を鳴らしてみた。
電話に出たのは本人では無く、マスカット球場で携帯を拾った人が電話口に出た。
被告女性Kは、被害者がお金を払わず、野球観戦していたことを知り怒りに震えた。
そして被害者の落とした携帯を被告女性Kが取りに行った。

検察官から、なぜ被害者の携帯を取りに行ったか聞かれ

被告女性K
『私は人が良いので、忙しいのに取りに行ってあげたんです』


忙しいって……この人、無職なんだけどね。


更に数日後。
被告女性Kが、自動車を運転していると、リュックを背負い自転車に乗った被害者を発見する。
被告女性Kは車をおり、被害者のリュックを掴み、自分の車に押込み、同棲している家に連れ帰った。

検察官
『なぜ家に連れ帰ったのですか?』

被告女性K
『話がしたかった』

検察官
『家に連れ込まなくても、外で十分に話は出来ますよね?
なぜ、そうしなかったのですか?』

被告女性K
『パニックでよく分からなかった……』


家に連れ込んだが、同棲中の被告男性Mは仕事中(パチンコ店員)だった為、その仕事場で知り合った無職の少年Aを家に呼んだ。

仕事を終え被告男性Mも加わり、被害者に対し臓器を売って金を作れだの、知り合いの893を呼ぶぞと脅す。

日にちをまたいだ夜中1時頃。
3人は共謀して、吉備中央町吉川 の落合ダムに被害者を連れて行き、堤体橋で約1時間20分に渡り殴る蹴るの暴行を加える。


裁判官
『なぜ、ダムに行くことになったのですか?』

被告女性K
『少年Aが、人がダムから落ちる姿を見たいと言ったからです』

裁判官
『あなたは、それを聞いてどう思いましたか?』

被告女性K
『情緒不安定だったので覚えていません』


橋の上で長時間にわたり暴行したあげく
『橋から飛び降りろ!』と強要しだす。

当然、被害者は躊躇(ちゅうちょ)する。
被告男性Mは、怯える被害者の姿を携帯写メで撮影し
『逃げてもええよ~、これバラまいて、893つこ~て捕まえるから。
見付けたら殺すからな』
そう脅し、また暴行を加えた。

被告女性K
『水がある所じゃなく、あっちのコンクリートの方に飛び込めや!』と指示する。
被害者は、下がコンクリートだとまず助からないと思い、水がある所に必死にとどまった。

裁判官
『パイプにしがみついた被害者に何を思ったのですか?』

被告女性K
『覚えていません』

裁判官
『あなた、この時に被害者に激しく足蹴りしていますよね』

被告女性K
『情緒不安定だったので、よく覚えていません』


なかなか飛び降りないことに、更に暴力が激しくなり、服は引き裂かれ被害者はパンツ1枚にされた。


忘れてはならない。
借りた金は18000円。
そして、金を借りた相手でも無い3人に暴行されていることを……


夜中3時過。
人気の無い場所で、誰かに助けを求めることも出来ず。
被害者は、このまま殴り殺されるか、橋から飛び降りるかの選択を迫られる。
そして、小さな望みをかけ、生き抜く為に橋から飛び降りることを決意する!


橋から湖面まで4.5メートル、ダム湖の水深は25メートル。


彼は意を決して飛び降りたーー!

Oh my Godーーー!


それを見届けた3人は、何もなかったようにその場から立ち去った。

裁判官
『被害者を車に乗せた時点から、いつ殺すと分かったのですか?』

被告女性K
『◯ちゃん(被害者)をダムから落とすと聞いて、殺すんだなって分かった』

裁判官
速攻で
『いつ聞いたのですか?』

被告女性K
はっ!と気が付き
『覚えていません』


おっしぃーーーい!
罪名が増えそうだったのに!
それに監禁も加えてやれ!


激しい暴力から逃れるため、橋から飛び降りた被害者は、なんと幸運にも生きていたーー!!

飛び降りた後、水面に出ていたダム管理棟のハシゴに、命からがらしがみついた。

……2時間後。
釣りに来ていた会社員に発見される。
この会社員の通報で、駆け付けた岡山北署員に救助された。
被害者は、肋骨骨折、全身打撲などで全治3週間のケガを負わされていた。


大切なことなので、もう一度いう
18000円で……
いや、もうええか……。


被告女性Kは、示談金として親が24万円を被害者に支払った。
それで許して貰えると思っているのか被告女性Kは
『私は情緒不安定の病気で、思い出すだけで気分が悪くなります。
名前を聞いただけで、拒絶反応が出ます。
なのに、お金を借りてた◯ちゃん(被害者)が訴えるのはおかしい!
不起訴にして下さい!』

裁判官は、この言葉にカチンときたらしい。
険しい顔付きになり
『不起訴にして欲しいそうですが、あなたが被害者に対して正しいことをしたのは、どこですか?』

被告女性K
『1週間風呂に入って無かったから、風呂を貸したり、ご飯を奢ったりしました』

裁判官
『あなたは、世話をしたと?』

被告女性K
『はい』

裁判官
『では、どうしていれば被害者は、ここまで酷い目に合わなかったと思いますか?』

被告女性K
『携帯を渡してもお礼を言わなかったし、返済が遅れても謝りもしなった。もし、ちゃんと謝っていればあそこまでしなかった』

裁判官
『ふぅ~~ん……』


怒ってんね、裁判官


被告女性K
『私は◯ちゃん(被害者)に精神的に傷つけられたんです!!』

裁判官
『ふぅ~~ん……と、言うと?』

被告女性K
『◯ちゃん(被害者)が2週間、風呂に入って無いのに、車の後ろに入って来たり、ダッシュボードに足をかけたりしました!』


……よ~分からん


裁判官は強い口調で
『自分は悪く無いと言いたいのですね』

被告女性K
『だって…………ゴニョゴニョ』

裁判官
『あなたは、自分の方が被害者ぶってますよね。
都合が悪いことは、覚えていない、情緒不安定で何も考えられなかったと。
もっと自分で、事件のことを考えた方がいいですよ!!』

バッサリ!

被告女性K
『…………はい』


裁判官が、こんなに感情をあらわにするのは珍しい。
そりゃそうだろう、さんざん暴行を繰り返し、ダムに飛び込ませたのに不起訴にしてくれって……そりゃないぜ。


この後、被告男性Mも証言台に立ったが、同じ様な言い分だ。
反省の微塵もない。


金を返さなかったことは、被害者にも責任はあるが、危うく18000円で命を奪われそうになったことは、災難としか言いようが無い。

そして被告女性Kは、1万欲しさに被害者に怪我を負わす。
結果、前科付きになり、示談金24万を支払う。
犯罪とは実に割りにあわないのものである。
ちなみに、被告女性Kは自身の被害者意識が強いため、被害者に対し一言の謝罪は無かった。
もし仮に、被害者が死亡していた場合。
こんなものでは済まない事に気が付いて欲しいものだ。
被害者の命があったことに感謝するべきだ。

被告女性Kには難しいだろうけどな……。

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