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「書」報せん スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』

1.お薬の内容(どんな本?)

名称:小説含有文庫本
『グレート・ギャツビー』中央公論社
成分:恋愛小説 / 映画原作 / アメリカ文学 / セレブ
内容量:356ページ
製造年月日:2006年11月10日 初版発行
症状(こんな人におすすめ)
・ひとつの目標に向かって進んでいる人
・映画を見た人で、原作に興味がある人
・昼ドラが好きな人

2.あらすじ

 豪華絢爛な屋敷に住み、夜な夜なパーティを開く謎の男ギャツビー。証券会社に勤めるニック・キャラウェイは就職のために故郷を離れ、たまたまその隣の家で一人暮らしをはじめることになった。ある日、ニックはそのパーティに招待され、ギャツビーのことを知ることになる。ギャツビーには想いを寄せている女性デイジーがいるが、ニックはその複雑な人間関係に巻き込まれていき……。

3.効能・効果(書評・感想)

 どうも、華麗なるギャツビーの映画はレオ様の方を観ました空条浩です。グレートギャツビーと言えばオリラジのあっちゃんが解説してくれてましたね。

 ストーリーの流れと時代背景について、面白く、わかりやすく解説してくれています。小説を読んだ後でも楽しめる動画だったのでおすすめです!
 さて、物語の筋はあっちゃんの動画や映画などで「こんな話なんだ」というふうに掴むことができると思うんですが、小説だからこそ描かれていると言うところもあります。そこも紹介出来ればなと思います。

「誰かのことを批判したくなったときには、こう考えるようにするんだよ」と父は言った。「世間のすべての人が、お前のように恵まれた条件を与えられたわけではないのと」 P9

 物語を読み始めたとき、いきなり胸に刺さる一文が来ます。心当たりありますねえ。よく誰かに注意したり怒ったりしたとき「あんなに言わなくても良かったな……」と思うことが多々ありました。ここから始まってこの後ニックはギャツビーと出会い、煌びやかなパーティとその影に潜む人間関係に巻き込まれていきます。

「ああ、あなたはあまりに多くを求めすぎる!」と彼女はギャツビーに向かって叫んだ。「私はこの今あなたのことを愛している。それだけでは足りないの? 過去は変えられないのよ」、そして力なくしくしく泣き始めた。「彼を愛していたこともかつてあった。ーーでもそのときだってあなたのことも愛していた」 P241

 ギャツビーが思いを寄せる女性、デイジーにはトムと言うクセモノ夫がいました。まさにギャツビーVSトムの対決シーン。昼ドラみたいな展開の中、デイジーがギャツビーに向かって叫びます。
 ここがギャツビーの考えと真っ向からぶつかるんですね。ギャツビーは「すべてを昔のままに戻して見せる(P202)」と決め、デイジーに「愛してなかった」とトムに告げるように言った。しかしデイジーは「トムを愛していたのも事実だ」と突っぱねるわけです。敵であるトムではなくメインヒロインのデイジーがギャツビーと真逆の意見をぶつけるという物語の構造も興味深いと思いました。
 このトムとデイジー、ギャツビーの関係がとある事故によって大きく変化し、ギャツビーは命を落としてしまう。次の引用はギャツビーの死後、ニックとギャツビーの父が会って話すシーン。

「この本をたまたま見つけました」と老人は言った。「これを見ればおわかりになるでしょう? ジミーは人の先に立つようにできておったんです。あの子はいつも何かを胸に決意して生きておりました。(中略)」 P312

 老人(ギャツビーの父)がニックにギャツビーの遺品である本を見せるシーンなんですが、ただの本ではない。そこにはギャツビーの"スケジュール"が書かれていた。
 この小説は一見「手段を選ばずに略奪愛をしようとした男が、色々な人間関係に巻き込まれて失敗した挙句に死んでしまった、可哀想な末路」という話にも取れるかもしれない。でも本当にそれだけでしょうか?
 スケジュールの中には彼の努力が詰まっていた。ここに彼が「グレート・ギャツビー」と呼ばれる所以があると思います。そして小説は最後こう締めくくられる。

ギャツビーは緑の灯火を信じていた。年を追うごとに我々の前からどんどん遠のいていく、陶酔に満ちた未来を。それはあのとき我々の手からすり抜けていった。でもまだ大丈夫。明日はもっと遠くへ走ろう。両腕をもっと先まで差し出そう……そうすればある晴れた朝にーー P325

 ここでエピグラフ(物語が始まる前に書かれる引用文のこと)がグッと来ます。まだ読んでない方はぜひ読んでいただきたい。ギャツビーは一見、何不自由なく欲しいものを全て手に入れられる男に見えた。でも実は、ただ緑の灯火を信じて追いかけるために、努力を続けていた男だった。他人や過去に干渉したのが仇となってしまって、思うように行かなかったかもしれない。でも、それさえ無かったら違う未来があったと思うんですよね。
 僕は、やり方はともかくとしてギャツビーはかっこいいと思います。僕らも緑の灯火を追いかけながらも時に遠のいて絶望するかもしれない。でもギャツビーのことを思い出して走っていくと、もしかしたらある晴れた朝に……そんな風に思わせてくれる小説でもあります。

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