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2人の団体が出来上がるまで②~たりないふたり~

サムネイルイラスト:カネコモネ

こんにちは、QoiQoiの大橋悠太です。
今回は以前も書いた記事の続きになります。
僕ら二人の団体QoiQoiができるまでのメイキング的な話を書いていこうと思います。まだ前回の記事を読んでいない方はこちらから↓

今回は2人それぞれの違いに気が付き、それを受け入れるまでを書いてみたいと思います。
ではいきます。


思考からそもそも違う二人

僕らが一緒に作品を制作し始めた2018年当初から、僕は相方である吉次との考え方の違いに戸惑っていました。僕が考えていることに対して全く違うことを答えたり、投げかけてきたりするからです。
具体例をあげれば、僕らの旗揚げ公演である『いたす』の稽古中、稽古場で上手くいかないシーンがありました。その作品は僕が演出担当の作品だったのですが、照明を使わずに懐中電灯のみで役者同士照らし合いながら劇を進行する演出にしていました。しかしどうにも役者は演技がしづらそうで、僕は拙いながらイメージを伝えますがそれでもシーンは上手く表現できませんでした。
そのシーンに関して稽古後、吉次に「演出のイメージの伝え方が上手くいかん! どうしたらいいんだ、、、」と相談している時に「使っている懐中電灯をさっさと本番で使うやつに統一しないからじゃない? それ決めたらもっとやりやすくなるよ」と言われました。

いま考えれば自分で演技する際にも、モノが揃っていないと演技がしづらいのだから当然と言えば当然なのですが、当時の僕は右も左も分からないポンコツだったので、自分の演出のイメージの伝え方ばかりを考えてしまっていました。
なのでその視点は青天の霹靂の如き衝撃でした。
そして懐中電灯を揃えてみるとシーンは一気にはっきりして、何が問題なのか、どこを改善するべきかが見えてきて、次の段階に進むことが出来ました。

他にも基本的に大橋悠太という人間は、目の前の問題や壁を乗り越えることに夢中で、それ以外が見えなくなる。自分が何処に向かうために壁を乗り越えているのかを一旦横に置いてしまう人間でした。
猪突猛進型というか、とにかく手にしている問題を解決してから次に進もうとするので、解決するまでは他に手が回らない状態でした。
なので脚本を書きながら、稽古場を探すのも大変ですし、途中からそこに演出問題、舞台美術問題、音響・照明問題と、沢山解決しなくてはならないものが迫ってきて、その度に頭がショートしていました。
それを吉次に「次はこれ、その問題は今はまだ解決できないから一旦置け、その間これ考える、で次これ」というような感じで道筋を整えるといったフォローをしてもらっていました。

吉次は年齢的には僕の2つ上になるのですが、そもそもの考え方として逆算型の人間でした。ある目的があったとして、その達成の為には何が必要で、自分が何をすればいいかを最初に考えてから動き出すタイプです。
猪突猛進型の大橋とは反対のタイプでした。


集中の仕方の違い

猪突猛進型の大橋と逆算型の吉次、時々吉次の逆算についていけず大橋から煙が上がりながらも、どうにかこうにか制作は進んでいきました。
そんな中ふと僕は気が付いたことがありました。
自分の出来なさ具合に辟易していた時に、「自分が出来ている貢献は何だろう」と考えてみると、出来ないながらもずっとやり続けること自体が自分の貢献なんだと思いました。
と言うのも相方の吉次は集中の波が激しいタイプで、エンジンのかかり方も0か100かという感じで、ずっと寝ていたと思ったら急にすごい集中力で頭を回転させる人間でした。反面、常に考え続けたり常に動き続けるという事が苦手なのです。
一方僕は一気にエンジンがかかるようなタイプではなく、常にアベレージ60%をキープするようなタイプで、集中の波も穏やか、なのでずっと同じことをしていてもそこまで苦じゃなく、マイペースに進めるタイプです。反面、一気に進めるということが苦手で、スピード勝負の時に判断力が欠けるといった弱点もありました。

そうした二人の違いが『いたす』の作品制作中に見えてきて、それまで衝突も多かったのですが、相手が考える事が違うという事を理解した状態で会話できるようになり、そうした衝突が少なくなっていきました。
そして相手が苦手とする部分を互いにフォローをしようとする思考が二人の間で生まれたことで、団体としても団結力が強くなったように思いました。
そうした理解が進むまでにかなりの時間を二人で過ごしたように思います。来る日も来る日も吉次と顔を合わせ、二人してお互いの顔を見て辟易するくらいには会っていました。
でもそのおかげでそれぞれの思考や生活リズムが分かってきて、言葉で理解する前に相手がどんな状態が見れば分かるようになり、結果として作業効率は上がりました。

誰かと一緒に何かをするのはとても骨の折れる作業で、劇団やユニットなどをキチンと継続していこうと思ったら、まず相手と過ごす時間を増やさないと団体としての芯を作るのは難しいのではないかと思います。
今団体の運営で悩んでいる方がいるのなら、僕は「まず団体の全員と話し合ったり、一緒に身体を突き合わせて何かを作ったりする時間を増やした方がいい」とアドバイスするでしょう。
そうしないと言葉だけでは見えてこない、相手の本当にやりたい事、好きな事、目指している方向が見えず、この団体で何がしたいのかという一番大事な部分が共有できないからです。
一定期間、期限を決めて毎日会うとか、週5週4で会うとかするのはおススメです。


たりないふたり

僕ら二人は集中や思考パターンが全く違います。
しかしだからこそ、その違いを織り込んだ上で作品制作の仕方を設計しています。
「この作業は吉次は苦手そうだから俺がやろう」逆もまた然りで「大橋が考えられない部分を練っておいて、いつでもフォローできる状態にしておこう」など、互いの弱点を補えるようにしています。
弱点を計算に入れて仕事設計する、これはぜひ皆さんにも実践してみてもらいたいところです!

僕らがもしも団体を組んでいなかったら、吉次は一人では自分のやりたい事を実現できないし、大橋は進むうちに自分がやりたい事がわからなくなっていたことでしょう。
たりないからこそお互いを必要とし合い、尊敬しながら作品制作出来ていると(大橋は!)思っています。

今日も作品を作り続けられていることに感謝しつつ、また作業に戻ろうと思います。
また次回、別の記事でお会いしましょう。ではまた。

QoiQoi 大橋悠太


QoiQoiプロフィール
2018年2月9日に大橋悠太と吉次匠生によって結成されたアートユニット。 当初はano(アノ)として活動していたが、2020年10月1日より団体名を改めQoiQoi(コイコイ)として新たな活動を始めている。

また、「想像力を創造する」を信念に演劇、映像、インスタレーションなどさざまな分野を飛び越え作品制作を行う。団体名のQoiQoiもquality of imaginationが由来である。 また、社会問題から個人の体験まで幅広い事象を可視化し、常に観客に「当事者性」を提示する作品作りが特徴である。

このnoteでは作品制作のことを中心に、被災地のことや原発のこと、その他考えたことなど、読んでくれている方へなるべく為になるような記事や僕らをより知っていただける記事を書いていくことを目指しています。
もしも気に入った記事や活動の参考にして頂けたら、スキやQoiQoiをフォローをしてもらえたら嬉しいです。
また、僕たちの活動を応援・サポートしてくれる方を募集しています。
サポートして頂いた資金は現地取材や稽古など全て作品作りに使用させていただきます。
今後とも我々QoiQoi(コイコイ)をよろしくお願いいたします。

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