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生命にとって、タンパク質ってなに?そもそも生命ってなに?

おはようございます。こんにちは。こんばんは。

自己紹介以降、初の投稿になります。結構期間が空きましたね……。下書きはいろいろ書いたのですが、ニッチなネタが多すぎて、初投稿にはあまり適さないかなぁというものばかり……。ネタ選びが難しい。

そこで今回は、私の専門分野の一つでもある、「タンパク質」について、思うところを書いてみることにしました。一応、タンパク質のことをあまりご存じない方に向けて書いたつもりです。どうぞ最後まで読んでいただけたらと思います。

0.はじめに

みなさん、「タンパク質」と言われて思い浮かべるものってなんですか?

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これですか?

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これですか?

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それともこれですか?

私は、これです。

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……、わけのわからない画像が出てきましたね。グロ画像ですか?違います。タンパク質です。リボソームっていうタンパク質です。

本記事では、世間一般でおそらく思われているようなタンパク質像とは大きく離れた、生物にとってのタンパク質の役割について話したいと思います。

1.タンパク質のイメージ

私は、大学でタンパク質について研究を行っています。ですから、おそらく私には「世間一般でのタンパク質のイメージ」というのがあまりわかっていません。

ただまあ、多分「三大栄養素の一つ」だとか、「摂取すると筋肉がつきやすくなるらしい」だとか、そんなイメージなのではないでしょうか?

昨今はコロナウイルスの「スパイクタンパク質」がテレビ番組でも取り扱われることが多く、「タンパク質は、形が重要な意味を持っているんだな」などと、なんとなくでも認識されている方はいるかもしれません。正解です。タンパク質って、形が重要なんです。

しかしここでは、このようなタンパク質の形に触れつつも、もっと前段階の「生命にとってタンパク質とはなにか」という話をしたいと思います。

2.生命ってなに?

突然哲学の話みたいになりましたね。皆さんは「生命」って何だと思いますか?

厳密な定義を考えたことがある人は少ないかもしれません。定義などなくとも、我々は目の前の物体が生命を持っているか否か、大抵は判別できます。

たとえば、目の前に石ころが差し出されたとしましょう。

石ころ

これは、生命を持っていますか?

そうですね、答えは決まっています。「いいえ」です。ここで「はい」と答えるのは、なんでも周りと逆のことを言いたい小学生か、こめかみに銃口を突き付けられている人くらいだと思います。

では、これならどうですか?

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これも答えは決まっていますね。「かわいい」です。違いました。「はい」です。かわいいですね。かわいい。あと佐々木希もかわいい。

このように、「生命を持っているか否か」、書くのが面倒なのでこれから「生物」という言葉を使いますが、「生物かそうでないか」というのは、比較的判断のしやすい問いのように思われます。

では、これはどうでしょう?

コロナウイルス_NHK

皆さんご存じの、コロナウイルスです。答えは「いいえ」です。でも、なぜでしょう?明確に答えられる人は多くないのではないでしょうか?「ウイルスは生物ではないってみんなが言っているから」じゃダメですよ。

ウイルスは、増殖します。当然ですね。細菌や植物、動物と同じように、個体が増えていきます。

ウイルスは、進化します。昨今は「変異株」という言葉をよく耳にしますね。この変異というものはあらゆる生物にも起こります。大げさに言ったら、生まれた子供の背中に羽が生えていたり、水かきができて泳げるようになったりということです。もちろん、足がなくなって歩けなくなるかもしれません。口がなくなって、食事ができなくなるかもしれません。「変異」はランダムで、生物に有利になるとは限りません。その中で有利になるものを「進化」と呼ぶわけです。ウイルスも変異を繰り返し、たくさんの失敗の変異を経て、人間の薬が効かない進化や、より感染力が強くなる進化を偶然引き当て、それが「変異株」として広まるわけです。

ちょっと長くなりましたが、ウイルスはこのような生物的特徴を、これらに限らず多数持っています。それにもかかわらず生物でないと言われるのは、一体なぜなのでしょう?

まあ、ここまで言っておいてアレなんですが、生物の明確な定義はありません。というのも、人類は未だ、生物の本質を掴み切れていないからです。「目の前に出された物体が生物か生物でないかは大体わかるが、いざ『生物ってなに?』と訊かれるとよくわからない」という状況なのです。というわけで、諸説あるうちの、(私の思う)「王道の」ものを紹介しましょう。

3.生物の定義

生物の定義は、無数にあります。たとえば「細胞膜で囲われていること」というものがあります。確かに、これまで見つかっている生物は皆細胞膜を持っています。では、「細胞膜を持っていなければ生物でない」と言うのでしょうか?

それでもいいと思います。たとえば火星で新しい生物(らしきもの)が見つかって、しかしこれが細胞膜を持っていなかったとしましょう。その時は、新たに「火星型生物」などとカテゴリーを作ればいいのです。「地球型生物は細胞膜を持っているが、火星型生物は細胞膜を持っているとは限らない」みたいな。ややこしいですが、困ることはありません。

一般的な生物の特徴として、他には「進化すること」というものもあります。ですが、さっき書いた通り、ウイルスも進化をします。もちろん、この説を採用して「ウイルスを生物に含めて議論をする」というのもアリです。ですがまあ、ここでは「ウイルスは生物に含まない」としておきましょう。

ややこしいでしょうかね。ここで意識してほしいのは、「生物とは何か」という問いに、答えは見つかっていないということです。なので、自分の目的に合わせて好きに定義して構いません。まあ、あまり突飛なのは避けた方が良いですがね。

ところで、私は、もっと抽象的なカテゴライズが好きです。詳しく言うと何本も記事が書けるので、それは将来の自分に譲ります。簡単に言えば、「外界に合わせて変化しながら受け継がれていく情報」が生物の本質だと思っています。よくわからない?わかりませんよね。詳しい話はここではしませんが、まあ大丈夫です。大丈夫。多分。

生物は、増殖をしたり、子供を作ったりします。親と子供って、大体同じ姿、能力を持っていますよね。人間から突然カブトムシが生まれたり、マグロからカエルが生まれたり、トビからタカが生まれたりはしないわけです。

これは、ありとあらゆる生物が「DNA」と呼ばれる物質でできた「設計図」を持っているからです。親から子へ、この設計図が受け継がれるわけです。親からもらった設計図を持っているから、子は親と同じような体を作ることができるわけです。

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でも、考えてみてください。ある日突然、あなたがあなたのご両親から設計図を渡されたとします。いや、むしろ、最初に設計図をもらった時、つまり受精直後は、「設計図自体があなた」なのです。

では、ミスター/ミス設計図が、どうやって自分の体を作るのでしょうか。設計図だけあっても、トンカチやノコギリなどの道具がないと家は作れないでしょう。あなたは、「設計図通りに自分の体を作る道具」を手に入れる必要があります。

この道具こそが、タンパク質の重要な役割の一つです。DNAに書き込まれている様々な事柄は、主にタンパク質を通して実現されるのです。DNAに書いてあることを読み取るタンパク質が存在し、これがその情報をもとに様々なタンパク質を作ります。そうして作られたタンパク質を使って、生物は体を作っていくのです。

もちろん、タンパク質は道具になるだけではありません。部品にもなります。あるいは、インスリンやヘモグロビンのように伝令や運送のような仕事もします。家で言えば、壁や床を作る道具がタンパク質、ドアや窓、排水溝や換気扇などの特殊部品もタンパク質、冷房を操作するリモコンや、外と情報をやり取りするWi-Fiまでタンパク質でできているような状態です。すごいでしょ?

ちなみに、DNAの情報は、直接読み取られるわけではありません。DNAはいつも厳重に保管されていて、ある種「禁書」のような扱いを受けます。生物は、これをRNAという物質に「コピー」して、言ってみれば「写本」のような形で持ち出します(「mRNAワクチン」という言葉が最近流行っていますね)。これが読み取られて、タンパク質が作られるわけです。

この設計図は、いろいろな要因によって変化します。日の当たるところに放置していたので字が消えてしまったり、インクがはねて「し」が「じ」になってしまったり、あるいは設計図を下敷きにして落書きをしていたら、はみ出して余計なことを書き足してしまったり。これが、最初の方で書いた「変異」です。DNAでできた設計図は少しずつ変化し、その中で、生き残るのに有利なものが残っていきます。すなわち、「進化」をするのです。

そして、最も重要なこととして、この設計図には「どうやって子に設計図を受け継ぐか」という方法も載っています。これによって、38億年(諸説ありますが)前からずっと、この設計図が受け継がれてきているのです。

話が長くなりましたね、ごめんなさい。とにかく、生物にとって大事なのは「設計図が受け継がれていくこと」「設計図を読み取って体を作ること」であることがわかっていただけたと思います。体を作るのはタンパク質です。そして、作った体が次世代へ設計図を受け継ぎます。つまり、生物はタンパク質なしでは成り立たないのです。

4.さいごに

このように、タンパク質とは生物にとって不可欠な要素であるどころか、DNAと対となって、生物の本質そのものを構成するようなものであることがお分かりいただけたと思います。

このタンパク質ですが、種類によって本当に様々な形をしています。分解したい物質を掴める手のような形、センサーとして働けるような突起、小さい物質を通すためのトンネル、いらないときにトンネルを塞ぐための蓋、これらを繋ぐための連結部分など……。本当に多様な構造があります。

言ってみれば、レゴのようなものです。私たちは、レゴでできた作品(豚肉や大豆など)を食べて、消化によってこれをバラバラに分解します。アミノ酸ってやつですね。これを再度、今度は自分の使いたいような形に組み立てるのです。レゴの恐竜や車を持ってきて、バラバラにして、城を作ってみたり飛行機を作ってみたりするわけです。

生命について知るためには、タンパク質について知らなければなりません。タンパク質について知るには、その形を観察することが大事です。この「タンパク質の形について知る」というテーマは、後の記事でも扱いたいと思います。楽しみにしていただければと思います。

最後に、「リボソーム」の話をしましょう。記事の初めに載せた、あのグロ画像のことです。これは、「RNAから情報を読んで、タンパク質を作るタンパク質(正確には、RNAとタンパク質の複合体)」です。散々話していた、「設計図を読み取る」道具です。タンパク質の中でも最も重要なものの一つですね。お分かりいただけたら、皆さんは明日から毎朝、このリボソームの画像を欠かさずに拝んでいただきたいと思います。ちなみに、私のnoteアカウントのアイコンもリボソームなんですよ。拝んでくださいね。

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5.余談

生物の定義についての話で、「外界に合わせて変化しながら受け継がれていく情報」が生物の本質だという話をしました。もちろんこれは、数ある定義の中の一つです。必ずしも正解ではありません。

ですが、たとえば「AIが進化をし続けた場合、人間と見分けがつかなくなる日は来るのか」みたいな話がありますね。あるいは、少し触れたように、「火星で新しく発見された生物らしき存在は、地球型の生物とは全く違った物質でできている」なんてこともあり得ます。あるいは、ロボットはどうでしょう?自分で材料を集めてきて自分の体を作り、自分の複製を作って増えるロボットがいたら、あたかも生物のように見えませんか?

このように、生物の形式についてあり得る色々な形を考えたいときは、たとえば「情報=設計図=DNA」のような固定観念は捨てた方が良いでしょう。細胞膜や代謝といった概念も、必ずしも持っていなければならないものではないかもしれません。かといって、固定観念を捨てすぎてそこら辺の石ころも生物に含まれるようでは困るので、良い具合のラインを見極める必要があるわけです。そして、僕なりの見極めの結果が「外界に合わせて変化しながら受け継がれていく情報」だったのです。

そんな感じですから、まあ、皆さんは各々の興味に合わせて好きに生物を定義していただければと思います。是非考えてみてください。そして、コメント欄等で共有でもしていただけたら楽しいなと思います。

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