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呪術廻戦・渋谷事変の色彩設計を見よう

対象範囲:2期・渋谷事変
調査環境:Google Chrome・MacBook Pro
調査方法:アマゾンプライムを観て、目分量で色彩を抽出
レベル:色彩検定・2級程度
一部、ネタバレを含む。


色相

オープニング

今更、触れなくても良いとは思いつつ、まずはOPから見ていきたい。赤を基本色としており、前の「懐玉・玉折」オープニングの「青」と対比されているというコンセプトは前提知識として知っていた。

観る前は「赤と黒の構成は定番というか、もう見飽きたよな〜」と思っていたのだけれど、実際に観ると、シーンによって色彩の創意工夫が細部にまで見られ、これは、ちゃんと観なければと正座した。


全体的に赤系の画面の中で、反射光に緑が入っている。この緑は赤に対して、おおよその補色にあたる。ただし、青に近いので対角線上の色ではない。また、所々で炎が燃えているので黄みが入っている。

このように、補色の片方を使わず、両隣の色を用いた3色の配色をスプリットコンプリメンタリーという。

色相環上の関係・スプリットコンプリメンタリー

緑と赤を使う際に、気を付けなければならない事がある。それは、これらの有彩色が隣り合うと、境界線が曖昧になり目がチカチカする現象が起きる事(リープマン効果)

リープマン効果

これは明度差を付けると軽減される。

明度差を付けた例

OPを見ると、赤のビビットな色調と比較して、緑が明るくなっているので、目が痛くならない。


アクセント(メカ丸)

シーズン2 エピソード10 34話 07:00

赤・青・紫系の色のシーンが続く中、黄緑が入ることで、暗いシーンのアクセントになっている。その様はメカ丸という存在を表している感じがする。

色相環上の関係


地下鉄駅構内(脹相)

シーズン2 エピソード13 37話 4:46

電気が消された後の構内は全体が緑色に包まれる。この緑の気持ち悪さで自分は”冷たい熱帯魚”を思い出した。緑は赤と補色関係で、赤を際立たせる。血を使った術を使う登場人物”脹相”のための舞台だという事なのだと思う。

このように、色相感の対角線上の色の組み合わせをダイアードという。

色相環上の関係・ダイアード
リープマン効果

またここでは、あえてリープマン効果を利用し、血の赤を強調している。(…のかもしれない)


ただし、駅看板やサインのビビットな色彩が足され、全体的にPOPで可愛い色合いになっている。(これが渋谷っぽさとも言えるのか?)文脈を知らなければ、今にもダンスを始めるのかと思ってしまいそう。

色相環上に表すと、以下の様に三角形の関係になる。このような組み合わせをトライアドという。

色相環上の関係・トライアド



地下鉄トイレ内(脹相VS虎杖)

シーズン2 エピソード13 37話 12:00

虎杖が「俺の土俵に持ち込んだ」と言っていることからも、緑に包まれた空間から移動したことで、脹相の独壇場ではなくなったことを演出しているように見える。血が鮮やかさを失い、どす黒くなる。

ここで赤と青の演出が出てくる。この二人に何かしらの因縁があることの暗示なのか?

赤青の2色のハイライトに交互に照らされる。青と赤のハイライトは、実写の場合、ストロボにカラーフィルターを貼って撮影する。よく見る演出だが、アニメにされると新鮮だし、人物ごとにハイライトを描き分けているので、暗い中でも状況が分かりやすい。

戦いが終わった瞬間に隣の部屋の白い光に照らされ、燃え尽きたという感じがする。「立て…立つんだジョ〜ッ」


明度

ななみんブチギレ

シーズン2 エピソード12 36話 16:00

直前のシーンと比較して、同じ空間のはずなのに、明らかにコントラストが強くなっている。


色調


獄門疆の中

青緑系の色相でまとまっている。
このような、一つの支配的な色相による配色をドミナントカラー配色と言う。メカ丸の本体が居る部屋や夕焼けなども、1つの色相にまとまっている。


敵の作戦会議

シーズン2 エピソード8 32話 17:05

暗いシーンの中で急に明るい色調になる。内容が何の知識も罪もない一般人を巻き込む残虐な会話なのに、やけに明るいのが不気味な演出。

このように、一つの支配的なトーンによる配色をドミナントトーン配色と言う。


恋愛描写

シーズン2 エピソード6 30話 10:00
恋愛描写は全体的にピンク系の色でまとまっている。

このように、同系色相で複数のトーンを重ねる配色をトーンオントーン配色という。


南国

シーズン2 エピソード14 38話 16:00

陀艮の領域。全体的にビビットでカラフルな空間。近似したトーンで複数の色相を重ねる配色を、トーンイントーン配色という。

さらに、影が青になっているのが特徴。


エンディング

エモい感じに加工された渋谷の風景を背景に、登場人物が歩いたり景色を眺めたりする。

ここで思った。最近こういう加工をあまり見なくなったなと。


深読みおじさん

そして、気づいた。この「渋谷事変」は2018年10月という設定。そうか、2018年前後の流行りなんだ!全体が登場人物の見ていた世界・色彩とリンクしている!

CMに入る時のアイキャッチのレンズが歪んだ感じとか、ストロボにカラーフィルターを貼って撮影されているビジュアルを、あの時期からよく見る様になった気がする。駅看板やサインのビビットな色彩も、陀艮の領域のやたら椰子の木が生えている海辺も"平成レトロ"っぽい気がしてきた。

美々子/菜々子(どっちだっけ?)が格子状に切り裂かれるのも、"LAYERED"にしか見えなくなってきた。(2018年・吉田ユニ)


出典

この記事に出てくる色彩の知識は、色彩検定2級の内容。2級の難易度は自動車の免許くらいのレベル。受けると、このようにアニメを無駄に深読みして楽しんだりできるかもしれない。


感想

最近アニメをめっきり見なくなっていたので、他のアニメがどうなのか分からないが、短い映像しか見なくなった現代人に合わせて、飽きないように調整しているのかなと想像した。

あと、色彩に気を取られて観ていたので、後日内容を咀嚼するためにもう一度見たい。あと、原作も読みたくなったのだけど、この記事を書いていたら、週末が終わってしまった…

余談:個人的にワッと思ったシーンは、伊地知さんをナナミンが見つけたシーンの背景。ナナミン周辺の演出には来る物がある…


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