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【やまけんゲスト】GUCCIもやってるブランドの作戦のヒミツ

Voicy「コテツのブランディングと商売の話」コラム
読めばブランディングができて商売が上手くなる

このコラムは、コテツがVoicyのブランディングと商売の話で語った内容を文章化し加筆したものです。
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Voicyもお聴きください。

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Voicy No.0067 2021年11月2日放送
【やまけんゲスト】GUCCIもやってるブランドの作戦のヒミツ

コテツのブレーン、やまけん登場。

やまけん(山田研太)さんの自己紹介

天才研究家です。

以前は個人事業主に売上の上げ方や経営、集客について教える事業をやっていました。最近では「天才の研究」Vol.3を書いているところです。天才の研究をしているのと、天才の人たちが自分にしかできないことを形にするビジネスを「アート型ビジネス」とくくって、そういう新しい概念を体系化しようとしています。

昔、経営塾をやっていたときは、基本は自分が教えている生徒さんに日次で受注・売上みたいに数値を報告してもらっていました。個人事業主なのでどんぶり勘定でやるから、そのときは数字で管理していました。そうしないと3カ月みたいな期間で売上を上げることはできないから、それを徹底的にやっていたけど、今は売上とか数値は使わずに、その人が本当にやりたいテーマを大事にしているので、全く逆のことをずっとやっています。

こまごまPDCAを回すよりも、本当に突き抜けていくために天才性が花開いて、独自ポジションでやれるところを深く研究して勉強会もやっている感じです。


ハイブランドはなんで巨額の経費でイベントをやるのか?


やまけん:いろいろ行った中でいいなと思うときもあれば、そんなにぴんとこないときもあるんですか。

コテツ:ほぼ、いいなと思います。消費者目線で面白いなと思うし、ビジネスをやっている企業側というか、個人事業主でも中小企業の人でも、自分達がやるとしたらという視点で見ると、クライアントや一緒に勉強会に参加している人と話すときという視点からいっても、これはめちゃくちゃ意味がある。

やまけん:それはビジネス的な観点から、どう機能しているんですか。

コテツ:商売では、日本はアメリカのビジネスのやり方が刷り込まれています。コマーシャルを打つ。認知を上げる。今だったらネットもあるので、コンバージョンで階段を上がってもらう技術をどう高めるかみたいなことでPDCAを回せとなる。

今回のGUCCIのガーデンとかブルガリやオーデマ・ピゲという時計ブランドがやっていたりするし、各高級ブランドが必ずやるんですが、計算は正直、成り立たないのです。

では、どういう意味があるかというと、ブランドに最初に触れてもらう接点として、日本人は、とても説明が大好きです。理屈をこねる。日本の家電や車が世界で出ていたときも、燃費がこれぐらいいいですとか、機能がいくつ付いてますとか。

でも、ヨーロッパのブランドは、最初に美しいとか楽しいとか感じてもらえばいいという程度でやっていたりします。そこで接点を持った人は製品のクオリティーがどうだとか、機能やクオリティーの理屈抜きに、興味を持たせるだけでいいじゃないかという割り切りが敷居を下げることになっていて、これはかなりいいかなと思います。

やまけん:それはGUCCIが別に好きじゃない人も、見に行ったりするものですか。

コテツ:これは多分「友達を誘ってくれ企画」だと思っています。GUCCIが全く興味の箸にも棒にもかからないような感じの方が自分で足を運ぶことはないですが、無料のイベントだし友達を誘いやすいところがあって、今回GUCCIのガーデンはインスタ映えの空間ではあるんですけど、写真を撮らせてバズらせるのをあまり目的にしていません。友達とのデートコンテンツとしてのイベントに位置づけているのではないかと自分は受け止めていまして、そのイメージのほうが強いかもしれない。

やまけん:そこで1回行って、GUCCIという世界観に触れてぴんときた人が、初めてGUCCIと接点を持ったという人で、その次にアクションとしてはGUCCIの店に来店することになるのですか。

コテツ:来店してもらえたらいいと思っていると思いますが、日本の企業みたいに、「3億もかけて企画やるんだったら、費用対効果はどうなっているんだ」みたいなことを詰めていたら、絶対に成り立たない企画です。

平日にグルコンの仲間たちと行ってきたんです。1時に行ってきたんですが、女性の20代前半までの方が、めちゃくちゃいるのです。予約制ですが。おそらくGUCCIのバッグを購入する方よりは10歳下かなと思います。本当に買っている30代半ばから上の女性からすると、1日に数百人は入っていると思うんですが、10下の人はおそらく1%~2%しか来店に至らないと思うんです。

ただ、これを言ったら「やらなきゃいい」というのが日本企業の考え方だし、会議で通らないと思いますが、これをどんどん言ってもらって、GUCCIってめっちゃ楽しかったよねということがのちに効いてくるということでやれるところが海外のハイブランドの強さなので、そんなに来店しないんじゃないかと思います。

やまけん:でも、それはGUCCIみたいに既にブランドになっているところだったらあれだけど、ブランドビジネスだけではなく、ライブにしてそういう展示会に近いフロントエンドをつくる意味があるということですね。その場合は何を大事にしていますか。

コテツ:これは1つ手前のところで発想の転換が必要です。日本でビジネスをやっている人たちは、全員が商品を売ったときに、あまり利益を取らない考えがある。そもそも、それだとこういうイベントはできないのです。無料で試してもらうことなので。

いろんな側面があると思いますが、日本人は通常業務をしっかりやるのがまっとうな商売のやり方とかお客さんの向き合い方だという気持ちが強い。通常営業を横に置いてでも無料で楽しんでもらうイベントをやるよりは、今日の営業頑張ろうみたいな。さらには、その値付け自体が安すぎる。GUCCIの場合は数億円かけていると思いますが、数億円はかけないにしても、3日間で数十万数百万です。日本人は初めての人に来てもらえる企画をやろうと思っても、そもそも薄利でやっているからできないので。

今回このGUCCIのイベントに行って本当に強く思うのが、海外のハイブランドは商品原価だけ言うと、5%とかのものもいっぱいあるんです。商品を売ったときの利益を過大にもらうことによってクオリティーを上げるほうにお金を回せるのと、こうやって顧客体験にお金を回せるという事実に着目することは、結構大事かなと思います。

やまけん:つくるときはKPIを設定しないにしても、何を一番のゴールにやる感じですか。

コテツ:ブランドは理屈による説得よりは、体験とか感覚的に「いいよね」なので、感覚的にいいよねと思ってもらえる人が増えたかどうかを軸にやっているイベントです。なので、今やまけんさんが言われたようなKPIとかコンバージョンは、ヨーロッパのブランドがこういうことをやるとき、そもそも指標として持ってない。これが日本的ビジネスとかアメリカのMBAビジネスからすると結構驚愕で、それって企画の時点でつぶされますよね。

ただ、膨大に製品を売ったときの利益で、膨大な利益を乗せてプライシングしているかから、その利益の中でこういう無料イベントをやって、体験で喜んでもらえる人が増えたらということで、やっているイベントになっています。

やまけん:でも、自分たちは普段だったらバックや服があったりするわけですが、商品を買ってもらうことがゴールではないから、空間とか体験に対して商品を売る感じではなく、世界観を準備することになりますか。

コテツ:そうです。買ってもらうことだけを短絡的にゴールにするのは無駄だと思いますが、ブランドって目先の利益を取りにいって、ずっとそれをやり続けている限りは、もうブランドにはならないと決めたほうが多分いいと思うんです。

やまけんさんが天才性の研究とプロデュースの中で「バーやまけん」という謎の企画をやっているでしょう。自分のコンテンツとかに興味がある人と、ただZoomでしゃべる飲み会をするという。コロナのときに会えないからZoomでやまけんさんのコンテンツを目にした人と飲んだときに、そこでコンテンツをいくつ売るとかではないところがある。

だから、なおのこと、やまけんさんの言っているニュアンスとか着眼点を気に入ってもらうことによって、その先一緒にその研究・勉強をやっていって、もしかしたら何かに参加するかもしれない。それは極めてブランド的ですが、日本企業は全部計測するのです。マーケティング最強説みたいなものを日本企業や個人事業主は持っていると思っています。


何をヒントにしたらいいか?

コテツ:GUCCIのこのイベントに行って、別にGUCCI自体を知りたくなくても、行ったときに、こんな無駄なことをやって長い時間をかけてファンや興味に灯をつけているんだなぐらいで、無料のイベントなので眺めにいく意味はあると思います。ハイブランドは昔からずっとやっているんですよね、こういう無駄な体感イベントを。

コロナの前はアルチザン(職人)イベントというのを結構見に行っていたんです。GUCCIが靴を縫う人とか財布を縫う人をイタリアから呼んで、店頭で靴を縫っているところを見せるだけで、もちろん職人だからセールスはできません。相手もイタリア語だし、こっちも日本語じゃないですか。だから、ただただ縫っているのを見せるという。

でも、デパートでやっている革小物とかを売っている方の催事と違って、職人がセールスして今ここでつくったのを買ってくださいではなくて、ディスプレーみたいな感じでやっているんです。それも僕たちはこういう職人がつくったものを売っていますということですが、アメリカとか日本の「KPIを定めて」というのからいくと、やるだけ無駄なイベントばかりですよね。

やまけん:例えばミュージシャンは普通に詩と曲をつくることをやっていて、曲を売るとなったらマネタイズされるし、今マネタイズするならライブみたいな感じになるけど、PVみたいな位置付けなのかな。

コテツ:そうです。

やまけん:でもそれって、普通にやっている人たちは曲を商品だと思っているから、曲をつくって出すことしかやっていなくて、PVなんか別にそこでマネタイズしているわけでしかないから、それってどう思う?という話になる。

自分のアート型ビジネスの中では、そういうのを当たり前に研究しているからそういう位置付けだとわかるけど、そういうことがわからない人は、自分のスタイルとか世界観みたいなものを外に出していくというか、それをつくっていくこと自体をやったことがないし、発想の中にもないから、それがない人はこういうイベントをフロントとしてつくると思うと、結構難しいのかなと思ったりします。

コテツ:今やまけんさんが言われたとおりで、ミュージシャンは雰囲気でファンになるというのがあるじゃないですか。曲もいいけど、その人が狭い部屋でギターを抱えて作曲しているんじゃないかみたいな、ムードで好きになるというか。

商売って単刀直入にメリットが伝わって、それで説得して買ってもらえばいいのではないファンのなり方があるけれど、それは一見無駄のようにも見えるし、とても効率が悪いし、やっているほうも手応えがないので、あまりやりたがらないです。

特に中小企業とか個人事業主は全然やっている余裕がないというのもあるけれど、それをもう一個戻ると、通常営業で薄利でやっていかないと、通常営業で利益を取り続けることしか考えていないので、プライシングを上げて、その分体験イベントをつくると発想を変えれば、第一歩としては成り立つのかなと思います。

やまけん:でもまず1個としては、実際に具体的なところを考えてみたときに、自分がどういうふうにやって、それがBtoBとかBtoCでも、GUCCIのいう展覧会みたいなものでも、今日の話だったら優先順位があり、ビジネス全体の中でのお金の使い方みたいな話でもあったけれど、まず実際はうちでそれをやってみると考えるとしたら、そういうブランド的な観点が自分の中にあるのかみたいなことがまずわかる。

コテツ:自分がやっている商売やご自身のブランド上、無料でニュアンスとか雰囲気を感じられるものをお金と時間をかけてやってみる。どうしても日本人はスーパーの試食みたいに、食べてもらったその場で売り込みが始めないと納得いかないというか、そこで売り込みもせずクロージングもせず数字も取らないとなったら、やる意味があるのかとなる.。

けれども本当にブランドになっていこうと思ったら、そもそも好きになってもらわないと始まらないところがある。説得とかを排除して、そういう無料イベントというか、無料の接点の機会をどう取ろうと考えてみるのは、こういうGUCCIとかハイブランドのイベントがやっているところからの学びのポイントかなと思います。

やまけん:ぜひやってみてほしいですね。

コテツ:というところで、今日はここまでにします。


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