玖馬巌@くまラボ

兼業SF作家。創作の話題がメインですが、科学論まわりの話題についてもたまに呟きます。

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    自身のnoteのうち創作関連の記事をまとめています。

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    自身のnoteのうち、科学・技術に関する記事をまとめています。

最近の記事

SF短編『月と蛍、静夜の思い/ 群游する青』(第2回かぐやSFコンテスト選外佳作作品)

 墨のように真っ暗な海の底で、わたしは静かに息を殺していた。  太陽の光もほぼ届かない、闇が支配する場所。海面から差してくるわずかな光と同じ明るさに体表を仄かに発光させ、海底から一定の距離を保ちつつじっと好機をうかがう。  わたしの眼が、一匹の小さな甲殻類の姿をとらえる。青とも緑とも水色ともつかない、暗い色。わたしは吸い込んだ海水を小刻みに噴射し、相手の後方斜め上へと静かに移動する。砂の中に獲物でも見つけたのか、相手はこちらに気付いた様子はない。  今だ! と思ったと同時

    • 【朗読テスト】SF短編「ダムナティオ・メモリアエ」

      SF短編「ダムナティオ・メモリアエ」の朗読テストです。 朗読音声:VOICEVOX「冥鳴ひまり」 

      • 科学・芸術・大阪の未来のすがた:SF短編『みをつくしの人形遣いたち』

        はじめに 本記事は、正井 編「大阪SFアンソロジー:OSAKA2045」(Kaguya Books / 社会評論社)に収録された拙作、『みをつくしの人形遣いたち』に対する著者自身による作品解説記事です。  まず作品内容を簡単に紹介したのち、記事タイトルにもなっている作品テーマ(科学・芸術・大阪の未来のすがた)についてつらつらと語ります。  あくまで作品解説という立て付けですが内容的には独立していますので、上記のテーマにビビッと来た方は、ぜひお読みいただければと思います。

        • SF短編『ダムナティオ・メモリアエ』

           刺すような夏の日差しの中、ロードバイクに乗った選手たちが、次々と海岸線の国道を猛スピードで走り抜けていく。季節は八月。およそスポーツには向かない酷暑の季節にもかかわらず、約300名の参加者たちが、島の外周100kmのコースを走破しようと挑む。  ここは瀬戸内海に浮かぶ島、金魚島。そこで年に一回開催される市民やアマチュア主体のホビーレース、ゴールド杯。その盛り上がりと熱気にわたしはすっかりとあてられていた。 「驚いたかい、エマちゃん」  選手たちを自動追尾するドローンから

        SF短編『月と蛍、静夜の思い/ 群游する青』(第2回かぐやSFコンテスト選外佳作作品)

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          小説活動2年目(2021年度)の活動メモ

          本記事の趣旨 ・そろそろ2021年度も終わるので、今年一年の活動をざっと記録しておこうと思います。(個人用備忘録のため特にオチはありません、すみません) 2021年度の活動記録 ・21年3月末:第9回ハヤカワSFコンテスト 応募 →一次落選 ・6月: ハヤカワ「異常論文」公募 → 落選 ・7月: 第2回かぐやSFコンテスト応募(初の短編チャレンジ) → 選外佳作 ・8月: 同人作品制作(Pixiv) ・9月: 北大CoSTEP専科B集中演習にて、短編作品を制作 ・9月末

          小説活動2年目(2021年度)の活動メモ

          反証可能性概念に関する整理メモ ~俺たちは雰囲気で反証主義をやっていた(かもしれない)

          本記事の要旨・科学哲学の話題でよく使われる「反証可能性」は、実はかなりふわふわした概念になっている(更に、ポパーが明確に定義しなかったこともあり、文献によって定義が微妙に異なっていることもある) ・本記事はそれを科学史・科学哲学大好きおじさんである筆者(ガチ素人)がなんとか自分なりに理解しようと足掻いた結果をまとめたメモです そもそものきっかけ(神の存在問題)本記事を書くことになったのは、twitteであんちべさん(@AntiBaysian)としましまさん(@Shima_

          反証可能性概念に関する整理メモ ~俺たちは雰囲気で反証主義をやっていた(かもしれない)

          小説=ソフトウェア仮説:エンジニアリングの視点から小説をとらえ直してみる試み

          要旨・昨今のエンタメ小説を取り巻く環境は、ソフトウェアのそれと類比してとらえてみると何となくわかりやすい ・上記の考察を更に一段階進めることで、小説とはソフトウェアの一種であり、また既存のソフトウェア開発の各種手法が、小説執筆にも何らかの形で適用可能であるという可能性が示唆される ・特に現状、書下ろし小説の執筆に関しては標準化されたプロセスが無い状態であるが、ここには伝統的なソフトウェア開発の手法であるウォーターフォール・モデルを適用できると推測される 背景と動機筆者はDX

          小説=ソフトウェア仮説:エンジニアリングの視点から小説をとらえ直してみる試み

          統計的仮説検定の秘められたお気持ちを探る(その①:モーダストレンスとポパーの反証主義)

          更新履歴・ver1を執筆&公開(2020年11月14日) ・ver2に更新&公開(2020年11月15日) ➡ 仮説検定の記述を修正&ポパーの反証主義に関する記述を修正・追記 ➡ 野心的過ぎたタイトルを変更(お気持ち理解は遥か遠い…) 要旨(Abstract)・統計的仮説検定は、モーダストレンス(後件否定)という推論形式の一種だと理解すると分かりやすい(ポパーの反証主義とも類似点がある) ・統計的仮説検定には、歴史的に ①フィッシャーの有意性検定 ②ネイマン・ピア

          統計的仮説検定の秘められたお気持ちを探る(その①:モーダストレンスとポパーの反証主義)