シェア
安道久一郎 Qichiro Ando
2024年9月25日 14:18
夏が終わろうとしているこの時期の夕暮れを、俺は最近になってようやく好きになり始めていた。我が赴任先の最寄り駅の駐輪スペースに愛車のトライアンフSPEEDを停める。ヘルメットを脱ぐと真夏に比べていくらか汗の出は優しいものになっていることを実感する。メット内の嫌な蒸し加減や白シャツを濡らす汗も多少は引いており、運転中に袖口から吹き込んでくる風が毛穴を引き締めてくるように冷たくなっている。この駅
2024年8月29日 13:51
セミの鳴き声も随分と落ち着いてきたように感じる。あの騒音レベルとは程遠い不思議な心地よさがある、九月初旬の音。俺は窓の外をふわふわと漂う入道雲とその手前で揺れるレースのカーテンの影を網膜にうつしていた。今日は2学期の始業日、クラスメイトたちは再会に胸躍るといった様子だ。方々から大きな声を出し合い各々の喜びの丈と夏休みの土産話を披露していた。教室窓側の二列目後方に陣取った俺の新たな席は誰からも見