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Movie:『パピチャ 未来へのランウェイ』(2019,🇫🇷🇩🇿🇧🇪🇶🇦)(#22)

カンヌ国際映画祭にもノミネートされた本作が日本で10月30日に上映開始されました。
タイトルにある“パピチャ”とはアルジェリアのスラングで、“愉快で魅力的で常識にとらわれない自由な女性”という意味だそうです。
もしそうした女性が一般的であれば、こうしたスラングもなかったのかもしれません。
つまり“マイノリティ”であることを示唆します。

主人公たちは大切にしていたものがありました。
それは“誇り”です。
実はアルジェリア自体は元々90%以上がスンニ派のムスリムの、イスラム教国です。
旧宗主国のフランスとの戦争を経て独立した国です。
女性は時折“ハイク”と呼ばれる生成色の大判の布で頭から全身を覆いますが、これはアルジェリアの伝統衣装であり、独立戦争でも身につけていたといいます。
映画の中でも主人公の母がハイクを纏い、ピストルを打つ真似をするシーンがあります。

この“ハイク”を使ってファッションショーをするまでの困難がこの映画のベースにあります。
ショーは成功とはいえない結果で終わります。日本でいう“同調圧力”に抗えば、傍にいる“死”が簡単に肩を叩いてくる、彼女たちはそんな世界に生きていました。

逆を言えば、日本でそんな死と隣合わせの同調圧力がどれほどあるでしょうか?

そうした視点で観ながら、印象的な2つのシーンがありました。
一つが、ハイクを纏った主人公の姉が銃撃されるシーンです。
銃撃犯は真っ黒なニカブで覆った女性でした。
もう一つは、ニカブを纏った女性達(“ニカブ”は女性が着るべき衣装として推奨されている)が主人公の下宿先に訪れて悪態をつくシーンです。
ニカブを纏った彼女達が風紀委員のようにも映りました。
これらは女性同士で反駁し合っているもので、問題は単純な性差の問題だけでないという特徴的なシーンで、ハイクの生成(白)とニカブの黒の対照を強調しています。

昨今アメリカを中心に起こっている人種差別に対する抗議も色による反駁です。
やはり“明暗”を分け、優劣をつけてはいけないのでしょう。
昼と夜に、優劣などなく、そこにはただ好みがあるだけなのですから。


頂いたものは知識として還元したいので、アマゾンで書籍購入に費やすつもりです。😄