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スタートアップが起業から2年以内に海外進出する方法

TL;DR(要約)海外展開するなら特定市場に最適化する前にしましょうね、やり方はアジャイルで!という話。

 グロースハッカーとしていろんな海外進出案件を手がけています。東南アジアからヨーロッパへ、ヨーロッパから日本へ、アメリカからヨーロッパへ。いろんなパターンがあります。残念ながら日本企業の海外進出をお手伝いしたことはないのですが、遠巻きに見ていると日本企業の海外進出のやり方はそのほかの国のやり方とは随分と違うような気がします。それで成功していればいいのですが、大抵は失敗していますね。

 ボクがお手伝いをしたスタートアップはたいてい起業から2年以内に海外進出をしています。あ、ボクがお手伝いしたから海外進出できたという意味ではないですよ。ボクが海外進出支援のために雇われたタイミングがたいてい起業から2年以内という意味です!

なぜ2年目なのか?

 1年目はプロダクトマーケットフィットを一生懸命探しているタイミングです。サービスの開発はそれ以前からやっているかもしれません。うまくいくスタートアップは1年以内にプロダクトマーケットフィットを見つけてマーケットでの地位を確立します。そしてマーケットは必ずしも自国とは限りません。だって、シンガポールなんてそれほど大きな市場じゃないからシンガポールのスタートアップはアメリカからはじめた方がいい場合も多いわけです。

 プロダクトマーケットフィットが見つかったら次のマーケットに行くのにあまり時間はかかりません。特に英語の場合はおそらく意図せずに他国から使われているケースがほとんどです。そういうマーケットはすでにプロダクトマーケットフィットがあるということなので大きな労力を必要とせずにユーザーを集めることができます。

 もう一つの理由は一つのマーケットに時間をかけすぎるとそのマーケットにだけ最適化されて、他のマーケットとフィットしなくなるからです。多くの日本のスタートアップは日本での事業基盤を重視しすぎるために他のマーケットとフィットしないものになってしまうケースが多いように思われます。

海外のスタートアップたちは何をしているのか?

 アムステルダムのミートアップやスタートアップのイベントには様々な国から参加者が来ます。ヨーロッパ周辺地域はもちろんのこと、アメリカやブラジルからも参加があります。そんな巨大なカンファレンスじゃないですよ。10人くらいのミートアップです。これはアムステルダムでの特殊事情ではなく、シンガポールでも同じでした。普通にフランスから参加者が来ていました。

 彼らの多くは職場を求めてくるのですが、自社サービスを売り込みに来る人も少なくありません。例えばハッカソンの企画をしているAngelhackは2011年創業ですがすでに44カ国でハッカソンを開催しています。アムステルダムでも開催したのですが、送り込まれた社員はただ一人。2週間ほどアムステルダムに滞在して、地元の大小のミートアップに積極的に参加して人脈を増やし、企業や団体のスポンサーシップを取り付けて帰って行きました。

 そのほか、シンガポールやオランダのスタートアップも基本的にクライアントへのプレゼンは電話やテレビ会議です。これはソフトウェアのような実際に手にとって試せるものだけでなく、サービスも同様です。トライアルのサービスを提供し、実際にそのサービスを体験してもらう。もちろん、このトライアルは有償で、それを原資として現地で必要なリソースを確保します。

海外進出に必要なもの

 これは業種によっても違うとは思うのですが、ボクが手がけることの多いサービスやソフトウェアなどは一定のパターンがあります。そしてそのパターンにハマるにはいくつかの条件をクリアしないといけません。

パイプライン

 まずパイプラインですね。これがないとお話になりません。マーケティングリードじゃないですよ。営業パイプラインです。たとえ日本にいても海外でパイプラインを作ることは可能です。そして実案件ができてから実際の進出をします。

 パイプラインの作り方ですが、アウトバウンドが中心となります。インバウンドなんて悠長なことをやってたらいつまでたってもパイプラインなんて作れません。必要なのはマーケティングではなく営業です。

 え?そんなの無理だって?無理じゃないですよ。ボク自身がクライアントのためにパイプライン作りましたから。

専任の営業

 パイプラインが必要ということは営業が必要ということです。そして、その営業はその国進出をミッションとします。英語だからそいつにアメリカとシンガポールとイギリスをやらせよう!とかダメですよ。アメリカならアメリカだけに集中する。

 アメリカへ進出するのであればアメリカ専任の営業を雇いましょう。アメリカで雇わなくていいですよ。日本が本社なら日本で英語の話せる人を雇えばいいです。その人の責任は日本からアメリカでのパイプラインを作ること。そしてその案件をクローズすることです。

 え?日本でアメリカの案件をクローズするの?はい、そうです。出張は必要?必要ないです。アメリカやヨーロッパであれば電話とメールで全てできるはずです。出張しないとクローズできない営業はダメな営業なのでチェンジです。その代わり、優秀な営業にはたっぷりインセンティブをあげましょう。優秀な営業の給料はめっちゃ高いです。日本で言う所の部長級の給料は必要だと理解してください。

海外進出に必要ないもの

現地法人

 最初は現地での法人登記の必要はありません。全て出張ベースでやりましょう。契約も大抵は現地企業と海外本社の間でできるはずです。契約書は英語のものを準備しましょう。日本語の契約書が使えるのは残念ながら日本だけです。

駐在員

 現地でフリーランス契約をするのが一番望ましいです。英語圏であればLinkedInで募集をかけましょう。毎月本社宛に請求書を送ってもらいましょう。最初は正社員にする必要ありません。だって現地法人がないんですから!

 どうしても正社員を送り込みたかったら出張ベースで3ヶ月くらいですかね。スーツケースひとつで行ってきましょう。成果が出て利益が出るくらいの案件ができたら現地法人を作って正社員を雇えばいい。成果が出ないのにそれ以上は無駄です。一から出直してまた3ヶ月出張ベースです。

こんなめちゃくちゃなやり方でいいのか?

 このやり方がめちゃくちゃだと思う人はスタートアップが分かっていません。失敗して学んでどんどん最適化していくのがスタートアップでありアジャイルです。失敗を恐れていっぱい時間をかけて準備して、最終的にドカンと失敗するウォーターフォールなやり方だとどうなるか?そういう例はすでにたくさんありますよね!

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