【読書録】フロイト全集14 晩年の信仰

 フロイト全集14巻、有名な『狼男』分析を読むつもりで読み始めたけれども、とりあえず月報を読んでいる。
 あまりよく知らない、いろんなジャンルの偉い先生方の、論評がつづく。
 その中、月報の最後の文章、濱田秀伯という人の、「ジャネとフロイト」という文章の中で、知っている人は知っている、『ヒステリー研究』という、フロイト初期の出世作みたいな研究本を共同制作した人について触れていて、この人、フロイトとの共同研究が終わり、フロイトから離れたあと、フランスに戻ったり、アメリカの心理学研究の会員になったりしたのちに、八十歳近くになったころに、信心深くなった、と書いてあった。
 最近、そういう人を見掛けることが多い。生まれた頃から信仰があるわけではなく、いや、もしかしたら内面的にはあったのかもしれない。それが、とにかく、最晩年、信仰が生まれたり、回帰してきたりする。
 ハイデガーも、スピリチュアリティという意味で少し違うかもしれないが、似たようなことは起こっている。晩年の講義とか読んでいると、四大要素とか、自然を擬人化して偉大であると言ったり、これもどこか似たような経過を辿っているように感じる。
 ジャネもハイデガーも、科学と哲学と違いはあるが、たとえば神という概念を解体するような、それまでの仕事を見るには、たぶん宗教とは背を向けるような研究をしているように映る。
 それが、晩年に、何か神のようなものにすがったり、古くてパワーのある何かに言い知れない力を感じる、といったトーンだったりする。これは何なんだろうか。
 他に例が思い浮かばないので、それほどはいないのかもしれない。しかし、どこか典型と思わせる何かがある。続報期待。

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