【日記】日曜画家

 時計の針が十時を超えている。ぼちぼち眠くなってくるところで、最近は早寝をするきわめて健康的な、おじいちゃんみたいな生活をしている。
 仕事を変えるまでは、そうはいかなかった。
 こんな生活を望んでいたのかもしれない、と思った。
 一日三時間しか寝ていない。精神に可能な限りの負荷を掛け、最大限のパフォーマンスを出す。締め切りまでに息をつめて走り抜ける。異常な精神状態。トランス、トリップ、覚醒剤を使ってさらに加速する、幻影を見る、人として存在がバラバラになり始める、等々といった、異様に精神を切り詰めることによって得られる神がかり的なイメージだの制作物だのというものに、昔は漠然と憧れみたいなものがあったような気がするが、飽き飽きしてしまった。
 修行僧みたいなもの。ニーチェの批判する、生命の力を削る方になぜかひた走ること。
 そうではなく、登山家のように、毎日足を動かし、一日一歩、であるから三日で三歩、着実に進むだとか、日曜に大工をやるとか、日差しを浴びて爽やかな気分になるとか、コツコツ勉強して一定の成果を得るとか、そんな風な存在様態にシフトしつつあるのを感じる。
 ただ、それはそれで狂的な状態というのもあり得る。マグリットの狂気、なるものがあればそれだろうか。彼もまさに日曜大工的な、あるいは職業気質的な絵の書き方をしていたという。ゴッホも、案外そんな書き方をしていたのかもしれない。セザンヌはどうだろうか。

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