【日記】自転車

 五年以上は使っていたママチャリがあったんだけど、タイヤのフレームというのかホイールというのか、金属部分が歪んで、一定周期でヨレヨレするようになっていて、走れないことはないけれども不快だし全体にサビているしもう少しグレードの高い自転車に乗ってみたいという、いくつかの理由で新しいチャリを買うことにした。
 自転車のグレードは、大別して、ママチャリ、シティサイクルというらしい、それから電動チャリ、クロスバイク、マウンテンバイク、ロードバイクというのがあるらしい。
 電動も考えたけれども、バッテリーがへたってきた時に、えらく重たいだけのチャリになることを考えると、結構迷った末に除外した。
 マウンテンバイクは、極端にいえば岩肌をブレーキを掛けながら登るようなイメージがあり、平地をシャンシャン走るのとは違う。
 だいたい、クロスバイクとロードバイクに選択肢を絞った。それでネット記事の比較などを読んで、イマイチイメージが沸かないので、店頭で聞いてみることにした。
 某自転車販売のチェーン店に入る。四名くらい店員がいるが、一人以外は鈍重な動きをしている。その、店長格の一人が話しかけてきた。
 自分は、ママチャリではない、おそらくロードバイクやクロスバイクのあるゾーンを眺めていたところだ。
「競技用をお探しですか?」
「いや……」
「あんまり競技競技していないのですかね」
 よく用語はわからないが、自分の言わんとしているニュアンスを即座に把握し、商品の選択肢を絞られた瞬間だった。
 この、当意即妙。プロと接した時の心地よさである。
 曰く。特にロードバイクにもなると乗り方が完全に違う。泥除けもライトもスタンドも付いていない。タイヤの種類も違うので空気入れも専用のものを買わなければいけない。普段使いには全く向いていない。
 クロスバイクの中でも、それら、ライトやスタンドのついた、空気入れも普通のでいいかなりシティサイクルに近いものがある。あとでカゴを足すことも可能だ。
 ということで、そのシティサイクル寄りのクロスバイクを購入することにした。わずかな空き時間で、本来見にくるだけのつもりだったが、購入意欲が俄然上がってきたので、一度用事を済ませて、閉店間際の店に入ってその場で購入し、乗って帰った。
 各種の書類を書いている時に、日中見かけた、あまり仕事の出来ない新人のようなスタッフが、色違いの在庫があるのか探しているようなことを言っていた。
「俺しか見れねえからな……」
 何やらのサイトにアクセス出来るのが、その人しかいないらしい。子供用のチャリを選んでいる父娘が待っていた。「ピンク色のが在庫がありました」などと説明している。
 一日の、一瞬のクリップではあるが、店の普段の様子がしのばれる。
 クロスバイクは、乗り心地は最高だった。気がついたら、自動車と匹敵する速度が出ている。この加速感は、今までのママチャリでのギア調整とは次元が違う。大地の揺れがじかに響いてくるので、大地と一体になったような気がした。
 今度の休日は、純粋に自転車を漕ぐだけの日を作ろうと思っている。

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