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読書録

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2022年4月の記事一覧

【読書録】アレクサンドル・ジノヴィエフ『カタストロイカ』 2

 あの許すべからざる侵略戦争が起きるはるか前に読み始めたのだが、読むことをサボっているうちに、社会情勢がこんなに変わってしまうとは、夢にも思わなかった。

 いずれ同じ調子で、ペレストロイカが起こった当時のことを、面白おかしく、だが「いくら誇張したように見えても、それこそが当時の現実だったのだ」調で、本当らしく語るのである。
 面白おかしいのであるが、時世が時世であるだけに、それほど無邪気にも読め

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【読書録】ディドロ他『百科全書』4 神と王の気配が強いんじゃ

 引き続きこの本を読んでいる。
 「自然法」「主権者」「親権」の項目。これらに滲んでいるのは、王権と親権の、今とは違う、今現在の日本の社会からは想像もつかない力関係としての王権と親権の力である。主権の奥には、神の力がある、神がいなければ、王は力をもたない、神の代理として振る舞うのが王である、等々、はっきりと書かれている。その力に歪んでいて、たぶん、現在ではこれは事典としては成り立たないのではないか

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【読書録】ディドロ他『百科全書』3 フロイトと同じやり方

 1700年代という時代の風を大きく孕んで書かれた、ディドロ=ダランベールの『百科全書』。よくよく調べると、全巻書き切られた頃には発禁だか何かされていて、後半はコッソリ制作されていたらしい。その中の項目のいくつかの抜粋で構成されている、岩波文庫版の『百科全書』を今読み進めている。

 今読んでいるのが、短いけれども「自然状態」の項目。ルソーが社会契約説を提唱する際に利用した考えだ。社会、法律が生ま

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