【読書録】アレクサンドル・ジノヴィエフ『カタストロイカ』 2

 あの許すべからざる侵略戦争が起きるはるか前に読み始めたのだが、読むことをサボっているうちに、社会情勢がこんなに変わってしまうとは、夢にも思わなかった。

あの私営トイレットには、四つの便器(〈便座つき〉)と六つの小便器(〈立小便用〉)しかない。国の定めた料金というのは、立小便用が手を洗わないで五十コペイカ、手を洗えば一ルーブリ、さらに鏡の前で髪をとかせば二ルーブリ。便座つきが紙なしで一ルーブリ、紙つきで二ルーブリだ。これほどの暴利的料金をもってしてさえ、トイレットがここ半年間に揚げた収益を出そうとしたら、パルトグラート中があのトイレットへ用を足しに行って、しかもひとり当り小便用が一秒、大便用が二秒で用を足さにゃならん計算だ。ところがKGBの観察によると、トイレはガラガラだそうだ。……

アレクサンドル・ジノヴィエフ『カタストロイカ』、141~142ページ

 いずれ同じ調子で、ペレストロイカが起こった当時のことを、面白おかしく、だが「いくら誇張したように見えても、それこそが当時の現実だったのだ」調で、本当らしく語るのである。
 面白おかしいのであるが、時世が時世であるだけに、それほど無邪気にも読めない。ロシアが、暴走すると、とんでもないことになる。
 今回の戦争の原因は、私が信頼を置いている社会学者の説によれば、「ロシア宇宙主義」という思想が、関わっているらしい。それがわからなければ、今回の戦争は皮相的な視点に留まるだろうとも。なので、割と性急に、そのあたりがわかる本を読まなければと思っている。

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