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図書館のお仕事「レファレンス業務」

 図書館の仕事は、本を貸すことだけではありません。図書館を運営する様々な仕事の中にレファレンス業務参考調査業務)があります。

 レファレンス業務とは、図書館の資料を使って利用者の疑問や質問に答えたり、必要とする資料や情報を探し出す手伝いをしたり、それを提供することです。

 ある程度大きな図書館にはレファレンス担当係がありますが、中小図書館や図書室では、貸出返却などのカウンター業務の中で行われています。

 しかし、このレファレンス業務なかなかの曲者で、パソコンをたたいただけでは、目的の資料を探し出せないことも多いのです。利用者の方の必要な情報が何百ページの中の一つのグラフのこともあります。

 自分の思っていることを言葉にすることが苦手な方もいらっしゃいます。
〇〇という方言を知りたいと思っているのに「方言の本ありますか。」とおっしゃる方。その方が本当に知りたいと思っていることを引き出す技術も必要になります。
 また、資料を探す際にも、ある程度あたりをつける必要があります。それには、知識と経験が必要なので、図書館にいる人間が同じレベルで行うことが難しいという事もあります。

 ある日、図書館のカウンターで「〇〇についての本はありますか?」と職員さんが聞かれ、端末のキーボードを多少たたき、「ありませんね。」と答えていました。そうして、その職員がにっこり笑顔で頭を下げている場面に遭遇したことがあります。利用者の方は「そうですか。」とカウンターを離れていきました。
 多分、書名件名くらいは検索したのでしょうが、該当する内容の本は出なかったという事のようでした。

 えーっ、それで終わりかい!時間をいただいてよろしければもう少し探します。とかないんかぁーい!
 自分の図書館になければ相互貸借で他館から借りるとか、レファレンス担当に相談しますとかないんかぁーい!利用者をありませんで返すのかぁ~!
笑顔の前にすることがあるだろうがぁー!

というのが、その時の私の心の声です。

 でも、あり得るんですよね、こういう対応。図書館学を学ばずにカウンターに座っている職員はいるんです、実際。本庁からの異動や事務職員として図書館で働く人など、図書館司書として働く基礎的知識のない人がカウンターに座ることは珍しくないです。どこも人手不足だし、開館時間が長くなっている中で司書じゃない人が座ること。

 でも、そういう人に司書資格の取れる学校で2年間かけて学んだり、司書講習で2か月間缶詰めになったり、1年間通信で学んだりする内容を勤務時間内に勉強してもらう事や勤務時間外に自分でしてもらうことはできません。だから、司書がその辺をフォローするわけですが、それが共通認識できていない場合もあるわけです。

 もう、20年ほど前に図書館システムの営業の人がデモでシステムの使い方を説明していた時、「このシステムなら、本庁から異動してきた人でもその日から業務に入れます。」って言っていて「アホか!」と思ったことがあります。図書館のシステムを営業して周っている人でもこんなこと言っちゃったりすることがあるのです。貸出返却業務だけがカウンターの仕事だと思っている人、いるんです。

 図書館を使い慣れている人であれば、「ありません。」でその場で帰されることがないことは解っていますが、そうでない人は無いという事で納得しちゃうんです。レファレンス業務の存在を知らないとそうなってしまうのです。

 でも、これじゃ、図書館じゃなく貸本屋ですよね。レファレンス業務は、図書館の仕事において重要な仕事の一つなのです。そして、面白くて達成感や充実感のある仕事なのです。

 レファレンス協同データベース というサイトがあります。このサイトでは、全国の図書館で日々行われているレファレンス業務をどんな風に調べて解決をしたかを見ることができます。回答のプロセスも記録されていますので、読み物としてもとても面白いと思います。お薦めです。

 インターネットを使って疑問を自分で解決できることも多い昨今ですが、意図して誤った情報を流したり、意図せずに誤った情報を提供してしまっていることもあります。それがネットの世界です。その辺の取捨選択をして本や資料を提供できるのが図書館なのだと思っています。


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