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間際でさえ美しいのか
「あっ」
思わず、声を上げた。窓辺に佇み話していた彼の鼻から、すぅ、とまた血が垂れたのだ。
え?と困惑の声を上げた瞬間、彼が咳き込む。そして口元を押えた手からぱたぱたと零れ落ちる、深紅が。華奢で蝋人形のように白い指を伝い、溢れ、手首へと落ちる。普段あまり表情の動かない彼の、驚いたようなその顔。
「ああ・・・済まない、布を」
「分かったし、動かんとき。大丈夫やよ、狼狽えんと静かにな」
自分で言いに来させなよ
「あの・・・今お時間、宜しいかしら」
私は、病室のカーテンをそっと開ける。個人医院とはいえ歴史が長いせいか、随分と病室の手入れは行き届いていた。
”彼”は、窓の外を見つめている。一瞬その様子が死体のように見えてはっとしたが、すぐに彼はこちらを振り向いた。
「あんた・・アリス、だっけ。見舞いに来るのに拳銃引っ提げて来るってことは、一人で来たんだ。なら狙撃に気を付けたほうが良い」
ちらと