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発酵食品と本質への鍵

数日前、京都の居酒屋でいつもお世話になっている方と酒を飲みつつ、店主とも楽しくお話をさせて頂いた。その会話の中で、面白いなーと思ったのが、「食べ物を守るために食べにくくする」話だった。

世の中には発酵食品がとっても好きというか、発酵が趣味になっている人はわりとたくさんいる。そしてその店主は、なかなかの発酵野郎だった。納豆とか、臭豆腐とか、臭い系の発酵食品の話になった。店主によると、こういった食品が持っている属性として「臭いけど食うとうまい」というものがある。

確かにそれはそうだ。納豆も臭豆腐も食う前の臭いというハードルを超えればとても美味なものだと思う。鮒ずし、ホンオフェとかシュールストレミングなど、世界には壮絶に臭い発酵食品というものが多数存在している。なんでそんなものが存在するのか、という話だ。

店主が唱えていた説というか、そういうことが書かれた本などがあるのかもわからないが、店主は「臭い食べ物は、それが何なのか知らない人間や動物は食べない」ということを言う。

そういう発酵食品は、もちろん保存性の高さみたいなのもあるのだが、「めっちゃ臭いけどこれは食える」という「知識」を鍵にしないと食料にならない。たとえば、ある民族が納豆を見て、臭いを嗅いで、「これは腐ってる」と思って口にしない。しかし、「納豆は臭くても食える」という知識を共有しているある民族(日本人)は喜んで口にする。

臭いものに限らず、そういった「食えなさそうな食べ物」というのは、コミュニティ内に共有されている知識を持っていないと食べることができないので、つまりこれは、自分たちの食糧を守る上で有効だったのだという。

つまり、「食えなさそうな食べ物」を見つけたり開発したりすると、他の民族とか動物に奪われたりすることが無くなるので、戦争に巻き込まれているときや、災害が起こったときに食糧を守り、生存の可能性を高めることにつながる。これが、「食べ物を守るために食べにくくする」ということだ。

これは面白いなーと思った。思えば、先日タンザニアの村に滞在したとき、その村で主食になっていたのはキャッサバだった。

本当はトウモロコシの粉を水で煮てごはんみたく炊いた「ウガリ」という食べ物が結構メジャーだし手軽なのだが、トウモロコシは育てても猿とか近所のマサイ族の牛とかに食べられてしまうので、守るのが大変だ。

キャッサバは、芋なわけなのだけれど、めちゃくちゃ固くて、一見、木みたいで、1時間位じっくり煮ないとおいしく食べられないので猿も牛にとっても一見食えなさそうだし、食わない。トウモロコシ的なリスクが少ないから、その村では主食として採用されていた。余談だけどキャッサバ、塩気のある水でちゃんと煮るとうまい。

この考え方はいろんなものに転用できるような気がしていて、たとえば、「一見難しそうだけど実は平易な本」に、コミュニティ内で共有したい情報を書く、とか、「一見面倒くさそうな人に見せかけることで、新しい人に近づかれないようにして、気心が知れた人とだけ付き合う」とか。

本質に対する知識、というのは「鍵」になる。ので、勉強は大事だなあ、と思った。

関係ないけど、「チェンソーマン」に「シュールストレミングの悪魔」とか出てきたらすごい臭くて強いんだろうなあと思った(※)。

※「チェンソーマン」に登場する「○○の悪魔」は「○○」が怖ければ怖いほど強い。

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