間違った心の傷の癒し方
「お前なんて生まれようが生まれまいがどっちでもよかった」
これはある日母から言われた言葉であると共に、今もなお私の心に住み着き、末長く離れてくれない傷痕である。
じゃあなんで産んだの?
生まれなかったら私は堕胎されていたの?
望まれない子であったの?
自身を否定する言葉たちが薄ら笑いを浮かべながら心でこだましていく。
この苦しみから解き放たれるにはどうしたらいいの?
生まれてきた意味をどうやって証明すればいいの?
苦しみを掻き消す策を必死に探していく。
そしてある日たどり着いた。
「私なんて最初っからいらなかったんだから、死んじゃえばいいんだ。」
その結論に至った時から、いくつもの自傷行為が始まった。
その一つが髪を引き抜く。
一本また一本。
少しの痛みが心地よいとすら思えてくる。
頭皮が見えれば歩いていて恥ずかしくなる。
何あの子という目で周りに見られる。
そうすれば人目を避けるようになって社会から消えていい存在になれると思った。
面白い事に、抜いていけば抜いていくほど気持ち良い。気づいた時には、硬貨1枚分の肌が露出していた。
これでいいんだ。これでよかったんだ。
そう思うとますます止められなくなり、今も私の頭部にはアジサイの葉1枚分の島ができている。
でも、葉っぱだけが出来るだけで花は咲いてくれない。
一向に死ぬことが出来ない。
次に手をつけたのは腕切り。
「あんたなんて医者になれっこない」
「なれたところで全く期待しないから」
15でこの道を目指してその切符を手にした時から言われてきた。いや、切符を手にする前に努力している段階から言われてきた。
普段から見ている人に言われるのなら本当に向いてないんだな。
勉強する頭も手も他のことに使うべきなのかな。
そう思うと鉛筆を握っている手が傷付けば私は勉強などできなくなると考えた。
だから身体に教え込むように切り刻んだ。
お前なんて医者になれない。なっても使い物にならない。今やってる努力は無駄だ。
頭が否定してくるから無理矢理身体に刻み込んだ。
それでも、一向に死ぬことが出来ない。
どうやったら死ねるんだ?
息が出来なくなれば死ねるじゃん。
そう思って始めたのが喫煙だ。
苦い、臭い、気持ち悪い。
そう思っているけど早く死ねると思ったらやめられない。ニコチンの依存性がその願望を叶える触媒になっているとすら思えてきた。
それでも、一向に死ぬことが出来ない。
やっぱり無理だ。
幾度となく悪魔たちは絶望の淵に貶めてきた。
しかし、希望はまだあったのである。
「Vってほんと頭良いよね!!」
「Vさんのひたむきな姿を見て、私も初心に帰らないとなと思いました」
「あなたが僕の生徒でいてくれる事を誇らしく思うよ」
私の周囲に居てくれた人たちが投げかけてくれ言葉である。期待もしておらず突拍子もなく突きつけられた言葉たちが、私の心の中に天使を産んでくれた。
「あなたは生きるべき、大切な存在。必要としてくれる人たちがいるから。」
天使たちの言葉にも最初は「何を無責任な」と反抗していたが、生きていると悪い事だけではなく、いい事も起こるのである。
その結果私は
「そうだよね。いくら近しい人に否定されようと私の頑張りや努力を見てくれている人たちはいる。そういう人たちのために生きよう。」
常日頃お会いできたり投げかけてくれはしないが、ある日突然私の枯れ切った心に恵みの雨を注いでくれる存在はいる。
そう思って、今日も目標のために生きて頑張っている。
まだ悪魔たちは消え切っていないが、支配されそうな時は気の置けない存在たちや先生たちに相談するという打開策を見つける事が出来た。
今自分を傷つける事で心の傷を癒そうとしている人たちも、ぜひ実践してみてほしい。
そんな話せる人誰もいないという人も大丈夫。
ここに1人います。
あなたと同じ苦しみを味わってきた人が。
今度は私があなたに潤いを与える番です。
砂漠に虹をかけられるよう、一緒に乗り越えようね。
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