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医師になろうと思ったきっかけ

決まって聞かれる質問。

「なんで医者になろうと思ったの?」

はじめましての人や入試、就活、様々な場面で幾度となく投げかけられてきた。

これを読んでくれている貴方も気になるところであろう。

理由は様々であるが、実は明確な動機がある。

この2つは似て非なる物だと思う。今日は後者について語ろうと思う。
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それは高校生のある日、Vは保健の授業の一環で産婦人科医の講演会に出席していた。
もとより医師になろうと漠然と考えていたのできちんと聞こうと思っていたが、「お医者さんはやっぱり大変そうだなー」「早くおわんないかなぁー」という気持ちもあった。

そんな最中突如として強烈なスライドを見た。

それは日本の人工妊娠中絶の件数である。
————実に10万超えという多さ。しかも、当時の自分と同世代が圧倒的に多かったのである

その時、私の中で何かが動いた。

「彼女たちは苦しんでいる。決してこの選択を望んでいるわけではない。何か、食い止める方法はないだろうか。」

自分の世代で妊娠並びに中絶という決断に至ったのは経済的、社会的、家庭的など様々なトラブルがあるに違いない。私自身も複雑な家庭環境に育ち、誰にも相談できない。事情をわかってくれる人は周りに1人もいない。そんな気持ちを抱えてながら生きていた。

身に起きた事柄は違えど、話せる人が欲しいというのは皆同じ気持ちだと考えた。

私だったらなれる。この人たちの理解者に。

人を救いたいという気持ちが産声を上げた瞬間であった。

かくして医学部に進学したわけだが、やはりこの現状はおかしいのではないかと疑問を抱き続けている。中絶というのは女性に大変な苦痛を伴う。肉体的なものはもちろん、1番は精神的なものだと考える。

「孕む」という行為は男性が主導権を持って生まれる事象であるにも関わらず、心も身体も傷付くのは女性なのである。ましては中絶という名の元にやらせている事は人殺しである。望まない妊娠を終わらせるためとはいえむごすぎるではなかろうか。

多くの人は知らないのであろう。実は男性の身体を強制的に不妊にできる方法がある事を。しかし、この方法は全然普及していないように思える。望まない妊娠を避ける画期的な方法であるのに。

しかも、この6年の医学教育を受ける中で女性の中絶については多く学ぶ機会があったにも関わらず、男性向けの避妊術は1度も触れる機会がなかった。産婦人科や泌尿器科の国家試験の過去問を解いていても、選択肢にすら上がっていない。

実際に行うには倫理的な問題を伴うとはいえ、もう少し認知されてもいいのではないだろうか。
なぜかを考えた時、やはり国レベルでマスクされているのではと考えた。その理由は何度も申し上げてる通り、この国が家父長制や男尊女卑に支配されているからではないかと推測する。

いつも傷つくのは女性ばかり。失恋する時も、同じ事を考えていた。その根底にあるのが子孫を残すという原始的な行為のパターナリズムであるのだと、気付いたのである。

生物学的な機序は変えられないにしろ、人間社会がある限り、男女それぞれの尊厳は保障されるべきである。

少し話がずれたので戻そう。
あと少しで免許を得るための関所をくぐるわけであるが、私は医術によって人を救いたい。そう考えている。

しかし、真に私が求めるゴールは法律的な解決も必要である。そしてそれを全うするためには医術のみでは叶わない。

1人きりでは無理だ。

そんな時、興味を持ってくれたのが実に10年来の付き合いがある親友であった。

先月、数年ぶりの再会を果たしたのだが、長い付き合いの中で初めてこのきっかけの話をした。その時、素晴らしい志だと言ってくれた。できる事はなんでも協力する。将来、一緒に何か始められたらいいねと。

というのも、会ってない間に女性の地位向上のプロジェクトに取り組んでいて、この世の中の理不尽を変えていこうとアクションを起こしていたらしい。

私自身も興味はあるものの、これまで取り組めなかった問題に立ち向かっている。それだけでも尊敬できる上に、目指したり取り組もうとした理由を聞くと、やはり自身が辛い体験をしていたり、おかしいと思った事を変えたいという動機なのである。

「この国変えてやろーぜ!」

そう言ってさよならしたのである。

実現できる日はきっとくる。

そう思って、道を歩んでいこうと思う。

いばらの道であろうと、行先は薔薇色だ。

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