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『不道徳教育講座/三島由紀夫』解説

『不道徳教育講座』を読み終えたので、備忘録的に書評します。

概要

『金閣寺』で有名な三島由紀夫氏のつづるコラム集。本人の思想をつづったものもあれば、投書に対して返信といった形式をとったものもあります。とてもユーモラスかつシニカルな文体でかかれており、背徳とはまた違った愉悦を感じさせます。

道徳の逆張りで、かえって道徳心を芽生えさせる

不道徳教育講座という名の通り、世間の道徳的事項に対して「こうしなさい」「ああしなさい」といった指導が項目別になされています。

例えば「女に暴力を用いるべし」という項目では、「レディファーストが浸透した地域では、夫人は途上国のDV夫に憧れる」といった例をあげ、女に手を挙げることがいかに素晴らしいかつらつらと書き連ねられています。

ここだけ見ると「そんな馬鹿な話しがあるか」とるお思いになるでしょう。「そんな事許されるはずがない」と憤る方もいらっしゃるかもしれません。そんな人は、まんまと三島由紀夫氏の術中にはまっているのだろうと思います。というのも、このように道徳的に許されない事を奨励することによって、かえって人々に道徳心を芽生えさせるのが、彼の目的なのではないかと私は思います。

Twitterでも見かけるスタイル

そんな逆張りのスタイル、Twitterでも見かけるなと思いました。悪を肯定して人々の目を向けることによって一考させるみたいなスタイル。

それを既に昭和42年の時点でやってたんですね。

よく考えたら私もよくやるスタイルでした。
「弊社寮は土日は湯船に湯が張られない、食堂も稼働しない!働かざるものは食うべからずという教訓を叩き込んでくれるいい会社だなぁ!この調子で残業しない人には罰金でも課したらどうだ!」という感じで。

硬い文章の割に読みやすく、現代にも通じるユーモアや皮肉がふんだんに盛り込まれた面白い作品でした。


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