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奥川投手の復活と伝説の復活を遂げたあの4人

奥川投手が勝った!

6月14日、京セラドーム。奥川恭伸投手が980日ぶりに勝ちました。ヒジ痛、足首の骨折、腰痛、度重なるケガを乗り越え、凡人には経験しようのない苦しみを乗り越えてたどり着いた1勝です。あの涙がそれを物語ります。

これまでも、復活まであと一歩というタイミングまで行っては、またやり直しという。そんな一進一退というよりも、地道に進んだ9歩が一瞬で8歩後退させられるといったような、想像を絶する落胆を繰り返してきたのだと、いろいろな報道から推察します。

願わくば、もう奈落に落ちることなく、一進一退でよいので、奥川投手にはマウンドに立ち続けてほしいと思います。それでもやはり、ファンは大きな期待をしてしまうのですけれどね。

伝説の復活を遂げたあの4人

スワローズ、ガラスのエースの系譜。そんな系譜、ない方が良いのだけれど、スワローズにはケガから伝説の復活を遂げた先人がいます。

今一度、その復活を振り返り、奥川投手の復活がチームに勢いを与えるものになることを願いたいと思います。

☆☆☆ 荒木大輔投手 ☆☆☆

元祖甲子園のアイドル。神宮球場とクラブハウスをつなぐ地下トンネル、通称荒木トンネルはこの方が由来

前年に初の二桁勝利を挙げていたプロ6年目の1988年、ヒジ痛発症。トミー・ジョン手術。そして翌年もトミー・ジョン再手術。再手術って…。当時はまだトミー・ジョン手術の先駆けの時代。本当に復帰できるのかどうかもわからない不安の中でのリハビリだったことでしょう。

1992年9月24日。神宮球場でのカープ戦。石井一久→金沢→角とつなぎ、4-3で1点ビハインドの7回、1死1塁の場面で1541日ぶりの一軍登板です。江藤智選手から三振を奪い、チームの逆転勝利に貢献。本拠地神宮球場は恐ろしいほどの一体感と歓声だったそうです。

この年は野村監督の3年目。そうです。野村監督のもとで14年ぶりに優勝したあの年です。熾烈な上位争いから8月の7連勝で見えてきた優勝。ところが9月に9連敗し3位転落。9月24日はこの連敗後に再び上昇のきざしが見えた中での復活登板でした。

しかしその後、4連敗を挟み、10月3日の神宮球場でのドラゴンズ戦。荒木大輔投手が7回無失点。チームは完封勝利、荒木大輔投手が1611日ぶりの勝利を手にします。ここから首位阪神をまくり、連勝を重ね、優勝決定の10月10日の甲子園も荒木大輔投手が先発。5回1失点でつなぎ、この年、右肩のケガで2年以上のブランクから復活した伊東昭光投手が最後を締め、優勝にたどり着くのです。

ケガに苦しんだ投手の復活が優勝を後押しするという、最高のシナリオを描いてくれたのが荒木大輔投手の復活でした。

☆☆☆ 伊藤智仁投手 ☆☆☆

言わずと知れた伝説の高速スライダーの使い手。現一軍投手コーチ。

プロ1年目。1993年7月4日の登板を最後に離脱するまで7勝2敗。投球回109回に対して奪三振126、防御率0.91、WHIP0.96、何なんだこの数字は。改めて凄まじい投手です。

以降2年間を右肩のリハビリに費やします。そして1996年5月19日。東京ドームのジャイアンツ戦。1050日ぶりの一軍登板。奥川投手のブランクはトモさんに匹敵するものだったんだなあ。

チームは野村監督7年目のシーズン。3位、4位あたりで上位をうかがう状況でした。0-1で追いかける展開の中、7回にリリーフ登板。1回無失点での復活です。この日チームは負けますが上位追撃の力となる大きな復活でした。

続く5月29日の神宮球場でのジャイアンツ戦。1-2でリードの9回1死、山部投手の後を継ぎ、プロ初セーブ。その後もシーズンで14試合のリリーフ登板を重ねました。最終的にチームは4位でシーズン終了。

伊藤投手はその後、コンディションと相談しつつ2000年までキャリアを積み重ねます。そして2001年。再び完全なる離脱。2度目の長期リハビリ

2002年、秋季リーグで実戦登板。9球目に脱臼。こんな悲劇が起きるものでしょうか。2003年、秋季リーグで最速109キロの引退登板。

伊藤智仁投手の足跡は長谷川晶一氏の著書により、筆者がここに書くことの1000倍くらいよくわかります。伊藤智仁投手コーチは今の奥川投手をどんな想いで見ているのでしょうか。

☆☆☆ 館山昌平投手 ☆☆☆

トミー・ジョン3度の男。10度の手術、191針の男。

プロ2年目にトミー・ジョン手術、3年目にプロ初勝利。ここからの8年が館山投手の全盛期です。しかし11年目の2013年に2度目のトミー・ジョン手術を経て、2014年は復活の年になるはずだったところ、実戦登板まで行きながらの再手術。苦しい…。なんという苦行。

そして2015年6月28日。神宮球場のジャイアンツ戦。復活登板。先発。

チームは熾烈な上位争い。優勝も狙えるし、一歩間違えば最下位まで転落もあり得る大混戦でした。真中監督の1年目です。

この日の館山投手は4回まで無失点。しかし5回につかまり4失点。7安打、3奪三振、5四死球。交代。いいところもまだまだのところも見られた、ただただ一軍のマウンドで館山投手が見られたことが嬉しかったという登板でした。

この5回にジャイアンツに逆転されたものの、菅野投手を攻略し再逆転。チームは勝ちます。秋吉→オンドルセク→ロマン→バーネットとつなぎ館山投手に負けをつけなかった

そして2015年7月11日。神宮球場のベイスターズ戦。6回1失点。1019日ぶりの勝利を館山投手は手にします。涙はありませんでした。すがすがしい復活劇でした。

館山投手はこの年ここから6勝を挙げます。この6勝が大きかった。ご存じの通り、激動のシーズン終盤でスワローズは勝ち切り優勝。館山投手の復活なくして、この優勝はなかったのではないでしょうか。

☆☆☆ 由規投手 ☆☆☆

甲子園のヒーロー。ドラフト1位。まさに奥川投手と重なる由規投手。

高卒3年目の二桁勝利。このまま駆け上がることを期待された高卒4年目、出身地仙台が被災した2011年、9月に右肩の故障により離脱。

ここからこんなにも長い長いリハビリ生活を送るとは。実戦登板に至りながらも回復しない右肩。2015年のシーズンオフには育成契約となります。

上向かない。状態が上がらない。4年間、5年間という月日をリハビリに費やすというのはプロ野球選手にとって、どれだけの苦行なのでしょう。

しかし復活の瞬間は訪れます。2016年7月9日。神宮球場のドラゴンズ戦。先発。

チームは真中監督の2年目。すっかり下位に低迷してしまった夏。5回3失点で踏ん張りながらも6回はアウト取れず、10安打、4奪三振、2四死球、自責点5で降板。負け投手となります。勝てなかったけれど、一軍のマウンドで由規投手が見られたこと自体がもう伝説的なできごとです。

2016年7月24日。ナゴヤドームのドラゴンズ戦。先発して6回途中で自責点2、村中→ルーキ→秋吉とつないで1786日ぶりの勝利。1786日ですよ。奥川投手の2倍近い月日をただただリハビリに費やした由規投手。恐ろしい月日です。

続けて8月4日には神宮球場で1797日ぶりの勝利

チームはこの8月に15勝9敗の復活を遂げ4位まで順位を戻しますが最終的には5位でシーズン終了。でも希望のある8月だったんだなあ。

由規投手は翌年は10先発登板。以降再び右肩の状態に悩み続けますが、2024年現在も埼玉武蔵ヒートベアーズにてコーチ兼任投手。長い現役生活を続けています。

想像を絶するリハビリを乗り越えた先には

先人たちの足跡を振り返ると、1611日、1050日、1019日、1786日、という途方もない月日が並びます。奥川投手は980日ぶりの勝利。先人たちの努力と執念の何と凄まじいことか…。

先人たちは見事に復活を遂げ、チームに勢いをもたらし、しかし残念ながら全盛期の輝きを長く取り戻すことができたわけではありませんでした。奥川投手は果たしてこの先、どこまで勝ち続けられるのでしょうか。願わくばこの980日ぶりの勝利が伝説の復活劇となるのではなく、これから先、奥川投手が長い全盛期の中で数々の伝説を残してくれることを願いたいと思います。

最後に最近のスワローズ

★吉村貢司郎に頼もしさを感じるような歯がゆいような。
★鈴木叶!何か持ってる。彼は持ってる。
★青木宣親の盗塁!武岡龍世が最高に気持ちいい。
じわじわと状態を上げているけれど、ズドンと加速したい今日この頃。

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