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数学科の大学院進学について

 記事を見つけた方初めまして。q3wと申します。数学科の大学院試験が実質終わりましたので、実際に感じたこと・勉強したことをまとめます。
~自己紹介 ~
産近甲龍 理学部 数学科系 在学中の大学4回生です。
教員免許 中学:数学、高校:数学・情報を取得見込みです。


・大学院を意識したきっかけ

 僕が、大学院進学を本格的に意識したのは、大学3回生の夏のタイミングです。前述の通り、教員免許を取得することもあり、大学3回生の春学期のタイミングでは、「大学院進学・就職・教採」のどの進路にするかで悩んでいました。学歴コンプレックスを抱えていることもあり、院進しても良いなと甘いことを考えていましたが、実際進路を考える際は非常に悩みました。

 もともと「教採」を目指す場合、高校の数学の先生になりたいと考えていたことと、弊学の教員採用の実績を確認した際に、新卒で高校の数学の先生に正規雇用で採用されることが難しいことを知ったこと、数学をより探究してから先生になることも良いなと考えていたこともあり、「教採」を目指す場合は大学院に進学しても良いなと考えていました。
 「就職活動」をする場合、本当に大学院に進学した方が良いのかとても悩みました。そんな時に、たまたま大学の学内で自分が少し気になっていた業界のインターンの募集があり、そのインターンに参加しました。その企業の夏期インターンは4日間のインターンだったので他の参加者の方との交流もできたのですが、その際に話を聞いてみると大学院生だよっていう方がとても多かったこともあり、大学院に進学してから就活をしても良いのではと考えるようになりました。

・受験した大学院と志望した理由

 数学科の学生で大学院進学を目指す場合、どの研究科に進学するか悩む人も多いと思います。実際、数学系の院や、情報系の院・教育系の院・物理系の院など、、、どの系統の院に進学するかで悩む人も多いと思います。
 私の場合、今、数学科で勉強している分野が好きだったことと研究してみたいなと思える内容があったため、そのまま数学系の院に進学を目指すことにしました。

 受験した(これからする)大学院は以下の通りです。
・名古屋大学大学院多元数理研究科(不合格)
・神戸大学大学院理学研究科数学専攻
・弊学大学院理学研究科数学専攻

 実際、受験校を選ぶ際には指導教官の先生ともご相談して決めました。
 多元数理の場合、過去問が公開されていること+自分の研究分野の先生が多いこと+外部生を多く受け入れていることもあり受験を決めました。
 神戸大学の場合、指導教官の先生の出身校でもあり、研究分野を大きく変えることなく進学できることもあり受験を決めました。
 弊学は滑り止めとして受けました。

結果的には多元数理は実力不足、神戸は1次通ったものの、2次面接で落とされました。あまり取る気がなかったようです。外部受験はやはり辛いですね。ただ弊学の大学院は結果的に7.8割取り、特待をいただき国公立と同程度の学費で進学できました。

・勉強したこと

 以後、数学系の院試勉強についてお話しさせてもらいます。
 基本的に数学系の大学院試験では「微分積分、線形代数、集合・位相、専門」の内容が院試で出題されると思います。(難易度の高い大学院では一部、例外はあるかもしれません。)
 僕の場合、「微分積分」、「線形代数」、「集合・位相」、「複素関数」、「微分幾何学(専門)」、「群論」について勉強をしました。それぞれ自分の状況、使用した参考書とオススメの参考書をまとめておきます。
ただ、数学系の大学院の場合、論証力が求められる問題もあり、分からない問題をその都度、本やインターネット等で調べて定理・命題が正しいかをcheckしていくことは大切だと思います。あくまで参考程度に考えてもらえると幸いです。

・「微分積分」

 微分積分は、一番苦労した分野でした。というのも、2回生の時に、多変数関数を授業でやったものの、先生がかなり分かりにくく自分の中にうまく落とし込めていなかったことと、個人的に知識が独立してるような分野だと感じていたこともあり、覚え直さないといけないことが多い分野でした。
使用していた参考書は、
・明快演習 微分積分 (共立出版)

・詳解と演習大学院入試問題<数学> (数理工学社)

・解析入門 Ⅰ (東京大学出版会)

 この3つの本と過去問の演習を中心に勉強していました。特に、一番初めに明快演習 微分積分を勉強することはとてもオススメです。知っておかないいけない問題が網羅的に掲載されていることがあり、問題演習として手と頭を動かしながら知識を構築していくことが可能だと感じました。ただし、多変数の微分・積分についてはこの参考書の練習だけでなく詳解と演習大学院入試問題<数学>についても確認しておくことをオススメします。詳解と演習大学院入試問題<数学>については院試で頻出な多変数関数の問題について確認することができるので演習量を増やすために勉強しても良いと思います。   また、多元数理の場合、明快演習 微分積分だけでは不十分だと思います。
 解析入門Ⅰについては分からない定理について調べる辞書的な参考書として使用していました。

・「線形代数」

 線形代数は比較的、対策が容易な分野でした。知らないといけない考え方もありましたが、どちらかというと1度、理論を理解してしまえば、あとは計算が正しくできるかが大切になってくる分野だと思います。私の場合、線形代数の計算と固有値問題の背景知識などがあったため対策は比較的、容易でした。
使用していた参考書は、
・明快演習 線形代数 (共立出版)

・線型代数入門 (東京大学出版会)

 この2つの本と過去問を中心に勉強していました。ただ、多くの大学院試験の場合、明快演習 線型代数の知識のみで十分対応できると思います。その大学院の過去問を見てみて論証問題が多く出題される場合は、線型代数入門も必要かなと思います。明快演習 線型代数については第4章ベクトル空間と、第5章線形写像が非常に分かりやすく、第1章~第3章と第7章で行列と行列式の計算について確認ができるのでオススメです。

・「集合と位相」

 集合・位相についても非常に苦労した分野でした。位相空間がとても抽象的な理論で多くの数学科の学生が苦労する分野だと思います。実際、大学院試験の対策としてもかなり難しくまた、覚えることが多いため非常に難しかったです。
使用していた参考書は、
・手を動かしてまなぶ集合と位相 (裳華房)

・集合と位相 そのまま使える答えの書き方 (講談社)

・集合・位相入門(松坂和夫の数学入門シリーズ1)

この3つの参考書を用いて勉強していました。
 基本的な問題演習は、「手を動かしてまなぶ集合と位相」で演習問題を解いていくことで過去問に対応できると思います。実際に大学院の過去問と全く同じ問題が沢山掲載されていました。注意点として、「手を動かしてまなぶ集合と位相」では、難しい分野にアスタリスクがついているのですが、基本的にアスタリスクがついているセクションの問題は院試で出題されにくいかつ内容が急に難しくなることがあるので演習をしていく上で注意が必要です。(※ただし難易度の高い大学院ではアスタリスクのつくセクションから問題が出題されることも十分考えられます。)また、論理記号の問題が載っていないことも注意が必要です。(論理記号の問題も国立の院試では出にくいですが、私の大学院の過去問では出題されていたこともあったので過去問を確認して、出題傾向をしっかり分析しておくことが大切です。)
 「集合と位相 そのまま使える答えの書き方」については、論理記号について対策ができ、実数の連続性についての問題が非常に分かりやすくまとめられています。またε-δ論法やε-N論法の例題もあるので対策本としてはオススメです。位相空間についても大学院の院試で出題されそうな問題しか掲載されていないので比較的演習がしやすい問題になっていると思います。ただし定義や定理が最低限しか掲載されていないので「手を動かしてまなぶ集合と位相」と一緒に勉強することを強くオススメします。
 3つ目の「集合・位相入門(松坂和夫 数学入門シリーズ1)」については、少し難しい内容も掲載されていますが、しっかり読む力を持って勉強していくと非常に分かりやすい参考書になっていると思います。前述の通り「手を動かしてまなぶ集合と位相」だけでも十分対策にはなりますが、アスタリスクがついているセクションは「手を動かしてまなぶ集合と位相」だけで取り組んでいくのは少し難しいように感じました。(おそらく難しい内容を省略することで、読みやすく取り組みやすい演習書を目指して藤岡先生は執筆されていると思いますが、それ故に難しい内容について背景知識が省略されており取り組みにくい部分があると感じました。)
また、少し専門的な内容になりますが、位相空間において開集合を考える際にどの位相空間の開集合系に入るかを意識的に読む・解くことが位相空間では大切ですが、「手を動かしてまなぶ集合と位相」だけではその対応が難しいと感じました。なので、先に「手を動かしてまなぶ集合と位相」に取り組んである程度できてから、松坂先生の「集合・位相入門(松坂和夫 数学入門シリーズ1)」を読むことで、集合・位相についてより理解が深まる徒感じました。

・「複素関数」

 複素関数については、一番容易に対策ができた分野でした。というのも、後述で詳解しますが、マセマ複素関数を読んで対策したのですが、実質3日で対策が終了してしまい、あとは過去問を解いて対策していました。ただし、マセマ複素関数を読むためには微分積分の知識が必須です。微分積分のマクローリン展開や多変数関数の知識があって初めて内容を理解できる分野ですので「微分積分」をある程度しっかり勉強してから、対策するようにしてください。また、3日で対策したとは言っていますが、院試直前期の質の高い集中力で3日で対策をしたので2.3週間ぐらいは対策に時間を要すると考えてもらって差し支えないです。
使用していた参考書は、
・複素関数キャンパス・ゼミ (マセマ出版社)

 この1冊で、十分対策が可能だと思います。ただし、孤立真性特異点が出てくる留数定理の実積分の応用など応用問題は掲載されていないので、過去問を通して勉強していくことが必要だと思います。また、前述の通り微分積分の知識をふんだんに使うので微分積分の勉強が一通り終わってから勉強することを強くオススメします。個人的には「複素平面の構築の仕方⇒複素関数の考え方⇒正則関数とは⇒コーシー・リーマンの方程式+(グリーンの定理)⇒コーシーの積分定理⇒コーシーの積分公式⇒グルサの定理⇒マクローリン展開⇒ローラン展開⇒留数の考え方・計算方法⇒留数定理⇒留数定理を用いた実積分の応用」がコンパクトにまとめられており証明も非常に読みやすく、分かりやすい参考書でした。

~いったん今日はここまで~
ではまた^^

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