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自己実現とは一体何なのか?

「自己実現」という言葉が世に浸透しつつあります。

ですが「自己実現ってどういうもの?」と聞かれると、案外答えられないのではないでしょうか。

なんとなく、「ありのままの自分で生きること」とか「自分自身に正直でいること」みたいなイメージなのかなと。

自己実現というのは、しっかりその実体を掴むことができれば、人生を大きく変えるものになり得ます。

ということで、今回は「自己実現」をテーマに書いてみようと思います。


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<自己実現の歴史>

自己実現という言葉は、ドイツ生まれでユダヤ系の脳病理学者であるクルト・ゴールドシュタインが初めて用いたと言われています。
その後、"カウンセリングの父"と呼ばれるカール・ロジャーズや、欲求階層説で有名なアブラハム・マズローによって体系化されていき、徐々に広まっていくこととなります。
特にマズローは「人間性心理学(ヒューマニスティック心理学)」という領域を開拓し、人生を賭けて自己実現について研究を深めていきました。

<自己実現とは何か?>

ゴールドシュタインやマズローらが述べている「自己実現とは何か?」について内容を簡単に要約すると「自分の持っている能力や可能性を十二分に発揮し、自分らしくあること」だとされています。

なので、一般的に自己実現という言葉に対して抱かれているイメージは、概ねその通りということになります。ですが、仮に「ありのままの自分でいいんだよ」と曲の歌詞に100万回くらい出てくるような言葉を言われても、
ぶっちゃけどうすればいいかよくわからないし、何がどうなっていればOKなの?というところがあるかと思います。

なので、ここから自己実現というものをもう少し紐解くとともに、
どうやって自己実現していけばいいの?という具体的なところをお伝えできればと思います。


<自己実現欲求の追求>

マズローが提唱したものに欲求階層説というものがあります。
これは割と有名なので聞いたことある方も多いのではないでしょうか。
欲求階層説をめちゃくちゃかいつまんで説明すると、

  • 人間の欲求は5つの階層にわかれている(生理的欲求、安全欲求、所属と愛の欲求、承認欲求、自己実現欲求)

  • 生理的欲求(睡眠欲とか食欲とか)を最も低次な欲求とし、そこから高次な欲求へと段階的に満たされていくものである

  • 最も高次な欲求が「自己実現欲求」である

という感じです。

要するに、「人間のあらゆる欲求のうち、満たされた時に最も満足度が高いものが自己実現欲求であり、それこそ人生で追い求めるべきものである」ということです。

そしてこの自己実現欲求にはいくつかの特徴があります。
自分自身が抱いている欲求を羅列していったときに、以下の特徴に当てはまるかどうかが一つ自分の自己実現欲求を見極める際の重要なポイントとなるということです。


<自己実現欲求の特徴>

①目的的な欲求である(⇔手段的な欲求)
「目的的」という言葉、少しとっつきにくいかもしれませんが、
これはある欲求に関して「なぜそうした欲求を抱いているのか?」と問われた際に、どれだけ考えても「そこにそれ以上の理由がない」というものです。

分かりやすいのは登山家の例です。
イギリスの登山家であるジョージ・マロリーが、インタビュアーに「なぜあなたは山に登るんですか?」と尋ねられた際、「なぜって?そこに山があるからさ」と答えたのは有名な話です。

この場合彼にとっては、"山登りをすること"こそが、自己実現欲求を追求することなんですね。
これが仮に「うーん、やっぱり頂上に登ったときの眺めが最高だからさ。それを見たいんだ」という回答であったならば、「山登りをする」という行為は「頂上からの景色を見る」ための手段になります。

こうなると「山に登りたい」という欲求は手段的な欲求だということになり、それはつまり自己実現欲求ではないということになります。

「理由なんかねぇ!ただ俺は山に登りたいんだ!」という場合は、それは山に登るという行為自体が目的であり、それは目的的な欲求ということになります。

これが特徴一つ目。

②基本的欲求のどれにも当てはまらない
欲求階層説においては、自己実現欲求以外の欲求(生理的欲求、安全欲求、所属と愛の欲求、承認欲求)は「基本的欲求」と呼ばれており、
この基本的欲求に関しては、全ての人間に共通するものであるとされています。つまり「人間みんな同じくその欲求を持っている」ということです。

誰だって安全な暮らしがしたいし、誰だって愛情に満ちた人間関係を築きたい。誰だって他人に認められたいし、誰だって自分に自信を持ちたいんです。これはよっぽど何か複雑で特別な事情がない限りは、みんな共通です。

一方、自己実現欲求は人によってその形はそれぞれ違います。

とにかく人を笑わせることが自己実現欲求だという人もいますし、自分の感性を音楽に載せて表現することが自己実現欲求だという人もいます。川辺で石を積み上げることが自己実現だという人もいるかもしれません。
ここは人と違って当たり前ですし、他人と比較する必要もなければ、誰かから批判されることなんて全く以てお門違いです。

なので、自分自身が抱いている欲求が、突き詰めていったときに基本的欲求のどこにも行き着かないという場合は、その欲求はもしかすると自己実現欲求なのかもしれません。

これが二つ目の特徴。


③「自分」にしかその欲求を満たせない
自己実現欲求は、他人によって満たされることはありません。自分自身の行動によってのみ満たすことができるものです。

先ほどの登山家の例ですが、山登りをすることこそが自己実現欲求だという彼が、例えば途中で足を骨折してしまったとしましょう。

その時に、骨折した彼をおぶって頂上を目指しても、彼の欲求は決して満たされません。他人に背負われて頂上を目指すこと、山登りをすることは、彼にとっては何の意味もありません。

つまり、自分自身でその欲求を追求してこそ、初めてそこに満足を得られるというわけです。

これが三つ目の特徴になります。


<自分だけの自己実現欲求を探し出す方法>

では自分にとっての自己実現欲求をどのように探し出せばいいか、というところについてです。自己実現欲求は、以下3つのステップで探し出すことができます。

【STEP1:欲求を洗い出す】
自分自身が抱えている欲求を、小さいものから大きいものまで、優劣付けずにひたすら全て洗い出します。この時、実際にそれが実現できるかという実現可能性については考えない方がいいです。

【STEP2:欲求を深掘りする】
洗い出した欲求を、一つ一つ丁寧に磨いていくようなイメージです。

例えば「転職したい」という欲求の場合ですが、これは典型的な手段的欲求にあたります。なのでこれを、以下のように深掘りしていくわけです。

■「転職したい」という欲求の深掘りの例
Q:なぜ転職したいのか?
 A:キャリアアップして自分の市場価値を高めたいから
Q:なぜ自分の市場価値を高めたいのか?
 A:会社に縛られず、自分の力で稼げるようになりたいから
Q:なぜ会社に縛られず、自分の力で稼げるようになりたいのか?
 A:いつでも自分の身一つで稼げる状態を作れれば、失敗を恐れず色々なことに挑戦できるから
Q:なぜ色々なことに挑戦したいのか?
 A:挑戦していく過程で色んな価値観に出会えたり、新しい刺激に触れたりできるから
Q:なぜ色んな価値観に出会ったり、新しい刺激に触れたりしたいのか?
 A:そこにそれ以上の理由はない。人生を通してとにかく新しいことにチャレンジしている状態でありたい、ただそれだけ。

このように欲求を深掘りしていくと、自分にとって根源的な欲求が見えてくるわけですね。

【STEP3:全体を統合する】
それぞれの欲求を深掘りしていくと、最初はバラバラに見えた欲求たちが集約されていき、自分の欲求の根源となるものが見えてきます。これらを最後まとめていくと「自分だけの自己実現欲求の形」が見えてきます。



<まとめ>

自己実現欲求が見つかれば、「自分って結局何がやりたいんだろう?」とか「何のために生きてるんだろう?」といった悩みは消えてなくなります。

大きく向かうべき方向性が見えているので、何かを選択するときも確固たる自信を持って選択できますし、目の前の仕事や勉強にも意味付けができるようになります。


そう、自分だけの自己実現欲求を見つけることは、
人生を迷いなく生きていくための魔法のコンパスを手にすることなのです。

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