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アホウドリのくちばし

無意識に、なんとなく脳内に形成されているイメージというものがあります。

それはアウトプットすることで露呈することも。

突然ですが、ニワトリの絵を描いてみます。

ニワトリの場合

ニワトリイラストのコピー

上手いか下手かはさておき、ニワトリだな、という認識はして戴けるかとおもいます。

さて実際は、

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こちらは天王寺動物園のニワトリのまさひろ。

写真と比較すると、イラストにはアゴの肉髭(にくぜん)はありませんが、トサカは赤、くちばしの色は黄色という点はあっていますよね。

カラスの場合

続きまして、

からすのパンやさん

御存知、加古里子先生の名作「からすのパンやさん」です。

この表紙画に描かれているお父さんとお母さんカラスのくちばしは「黄色」です。


はじめてのずかん_カラス

上の写真は、「はじめてのずかん (講談社の動く図鑑MOVE)」のカラスのページです。

ご覧のように、ハシブトガラスとハシボソガラスともにくちばしの色は「黒色」です。

日本には上記2種類を含む全てで7種類のカラスがいるそうですが、その全てのくちばしは「黒色」です。

下記サイトで7種類のカラスを写真で確認できます。

しかし黄色いくちばしのカラスは存在します。

キバシガラスです。

ヨーロッパのアルプスやエベレストでの観察もされるという、高山に生息する種のようです。

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加古先生が間違っていると指摘したいわけではありません。

ひょっとすると、このキバシガラスをモデルにされたのかもしれませんし。

生物学的に日本に多く生息するカラスは、くちばしが黒であるということであり、絵本の世界にその正確性を求めることが必要かといえばそうとも限りません。

それに色合いとして、黒いくちばしだと絵本としても暗くなりがちでしょうし。


アホウドリの場合

アホウドリ。

なんとも可哀想な名前。

人間がアホウドリを乱獲していた頃、ヒトが近寄っても飛び立てずに捕まってしまうマヌケな鳥という意味合いから名付けられたという説がありますが、なんとも気の毒です。

そうかと思えば、翼と風を巧みに利用することで長距離を容易に飛ぶ特徴から、ゴルフでパーから3打少なくホール終了した時、アホウドリの英名「アルバトロス albatrus」と呼ばれる、非常に名誉的な名前でもあります。

このアホウドリ。

11匹のねこ_あほうどり

こちらも名著、馬場のぼる先生の「11ぴきのねことあほうどり」で登場します。

この11ぴきシリーズはどれも本当に面白いです。

作品で描かれているあほうどりは、ご覧のように「黄色いくちばし」です。


先日問題が生じました。

子供と「ダーウィンが来た!」を観ていると、

「アホウドリのくちばしは「黄色」じゃないんだね、11匹のねこに出てくるあほうどりは「黄色」だけど」

と子供が言い出すのです。

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(上の写真は、山階鳥類研究所広報ブログより)

それまでアホウドリのくちばしの色を認識すらしていませんでしたし、絵本のくちばしの色も憶えていませんでした。

様々な画像を見る限り、アホウドリのくちばしは白色〜ピンク色であるようです。


おわりに

子供の指摘にただただ驚くばかりでした。


ここでも絵本が間違っていると申したいわけではありません。

この違いによって、なんら日常の生活に困るようなことでもないですし(←そこ?)


ただし、「違いに気づくことが出来た」ということは、「理解が出来た」ということを意味しており、そういった意味でも認識させることに絵本が一役買ってくれたともいえます。

なんでも生物学的に正しいように描かれることが正義ということではないと思います。

ふつう、くちばしの色なんて気にしていないですから(←え、みなさんはそうでもない??)。


ただこのようなハッとさせられるような経験によって、オトナの我々が知らなかったことをあらためて学ぶ機会となっていることは確かです。


なんとなく我々がカラスの絵を描いた際に、

その絵のクチバシを黒でなく黄色に塗っていた場合、

それは何処かしらからつくりあげられた脳内イメージや先入観によって描いたものなのか、

はたまたそれをキバシガラスを描いたのだと説明することができるのか、

そこが大切なのだと思います。


兎にも角にも私にとっては非常におもしろい発見でした。


おわり

最後までお読みいただきありがとうございます。 いただいたサポートは麦チョコ研究助成金として大切に使用させて戴きたいと思います。