サイエンスの御作法から今の生活の悩みを考える
人それぞれ悩みや苦しみがあります。
会社での人間関係、家庭での人間関係、健康問題、将来の進路などなど。
何も悩みも苦しみもないという方はいないのではないでしょうか。
大なり小なり思い悩んだり、あるいは渇望したり。
長らく欲しかったものをやっと手に入れた時、ひとときの多幸感に包まれても、さらなる手に入れたいものが現れる。
欲望も止めどなく溢れてくるものです。
そこでよく聞く言葉に
『足るを知る』
という仏教用語がございます。
今ある状況に満足する、今が満ち足りていることに気づきなさい。
ということですが、
そんな説教じみた話は聴きたくない。宗教なんて興味がない。と拒否反応を起こす方もいらっしゃるでしょう。
サイエンスの世界、とくに遺伝子やタンパク質の働きなどを中心にした『分子生物学』という学問と、ヒトをはじめとする生物が生まれて成体へとなる過程を知る『発生生物学』という学問があります。
これらを合わせて、遺伝子やタンパク質といった分子の働きに注目して生物の成り立ちを探ろうとする学問があります。
この学問の御作法としては、注目した因子(遺伝子(DNA, RNA)、タンパク質)の働き(機能)を調べるために、2種類の実験を行います。
それらは『機能欠失実験』と『過剰発現実験』です。
『機能欠失実験』は、その生き物から、注目している分子X(遺伝子Xやタンパク質X)が失われている状態にします。
一方、『過剰発現実験』は分子Xが豊富に存在している状態にする実験です。
この2種類の結果を合わせて、分子Xの機能がわかるというわけです。
それではこの『機能欠失実験』よろしく、皆様のお悩みを解析してみるとしましょう。
例えば会社での人間関係、昇進問題ですと、
あなたはどこかしらの会社にお勤めなわけです。
そこには頼りにできない上司や扱いに困る部下、あるいは養育費を考えてさらなる昇給を求めて昇進を急ぐ、などが問題として降りかかってきているのです。
しかし現にあなたは、いまの職場に身を置いており、お給料が発生しています。
それでなんとかやりくり出来ていませんか。
たとえ今の職場を去らざるを得ない状況になっても、あなたには家族がいて、あなたにはその身体があって、命があって、お腹はすくし眠くもなります。
それが失われたならどのようになりますか?
愛する家族がいちどきにいなくなる
家が無くなる
このnoteを読むことも出来なくなる←そのデバイスを失う
それらを想像すると、いまあなたは満ち足りているのです。
無かった時の状態こそが、『機能欠失実験』を行なった状態となるわけです。
これで今回の思考実験は充分なのですが、試しに『過剰発現実験』を行なってみますと、
例えば「昇進が出来た」、「嫌な上司がいなくなった」、「給料が上がった」など、渇望していた状況が満たされることになります。
生物だとそれで生じる影響を調べることで、『機能欠失実験』の結果と照らし合わせて、分子Xの働きの『確からしさ』を増すこととなります。
しかしながら人間ですと、欲求が満たされますと、往々にして次なる欲求へとその矛先が自動的に変わっていきやすいのです。
ですから、現状に辟易とするばかりでなく、現状が失われた状態、
もしくは現状が失われつつあるなかでも、その後に残るものについてフォーカスしてみて下さい。
初めてそこにある『幸せ』に気づくかもしれません。
肩書き、地位、名誉、お金、物、これらへの執着こそがストレスの根源かもしれません。
だからといって全て捨ててしまえというのではありません。それぞれとても大切なものですから。
しかしそれがなくてもあなたが生き続けていること、さらには家族が側に居続けてくれること、それらにこそ、目を向けさえすれば良いのです。
するといずれ必ずやジャンプ出来る時がやって来ます。それまではただしゃがみ込んでいる間に過ぎないのです。
しゃがめば足元に小さな蟻がエサを運ぶ姿が目にできるかもしれません。物事を子供の目線で見ることでの気づきがあるかもしれません。
サイエンスの『モノの見方』から見えてくる『今』を受容する。
この視点は『マインドフルネス』とも通じます。
おしまい