子供を魅了する遠野物語【絵本さんぽ】
『遠野』いつか行ってみたい土地です。
神聖で奇妙で綺麗な場所。
なのだろうと思っています。
その昔、岩波文庫の『遠野物語・山の人生』を読みました。
ある日、子供が図書館で借りていた『やまびと』という絵本を読んでいて「この本、おもしろい」といっていました。
こちらの本は、『遠野物語』をもとにした絵本です。
岩波文庫の『遠野物語』における物語の3番と7番の2話が収録されています。
3番の話は、
山奥において、長き黒髪を櫛でといていた美女を見掛けた猟師が、その女を銃で撃ってしまいます。
女のもとへ駆け寄ると既に倒れており、証しとして女の身長よりも長い黒髪を少し切り取って懐へしまい、家路に向かいます。
途中ひどい睡魔に襲われ立ち止まっていると、夢か現実かが判らないような状態のなか、身の丈の高い男がやって来て、男が持っていた懐の女の髪を取り返していったという。
その男は山男だった。
という話です。
第7番は、
ある民家の娘が栗拾いへ山に入ったまま行方不明になり、亡くなったものだと思い、その娘の枕を替わりにして葬式を出した。
数年後、猟師が山でこの娘に出逢った。
娘は、恐ろしきに人にさらわれ、隙がなく逃げられなかった。その男の子供を何人か産んだが、男は自分に似ていないと言ってその子達を喰ったのか、殺したのかはわからないが、どこかへ連れて行ってしまったという。
その男は背が高く目の色が皆とは異なっているらしい。
話しているうちに今にも男が帰ってきそうだと娘がいうので、猟師は怖くなって帰ったという。
という話です。
2話とも作中では山男は気配などに留まり、その姿がハッキリと登場するわけではありません。
それでも普通の人間と異なる『やまびと』がいるという状況が恐ろしさとともに伝わってきます。
この岩波文庫の活字で感じた感覚は、そのまま絵本からも伝わってきます。
このようなミステリアスな情景などへ、子供が興味を持ったことに驚きを隠せませんでした。
この『やまびと』という絵本は、図書館で本を借りる際に「気に入らないかも」と思いつつ、私がこっそりと忍ばせた1冊であったので、気に入ったことは尚更意外でした。
ひょっとすると近頃は『鬼滅の刃』の世界観に浸っていたこともあり、もとより妖怪も好きなことから、鬼、山奥、といった雰囲気やプロットに抵抗なく入り込めたのかもしれません。
いずれにしても遠野に長く伝えられてきた物語を面白く受け止めたことは事実です。
柳田国男をして「必ずや深い人間的意味があるはずである」といわせた遠野の物語は我が子に何か大きな『意味』がもたらしたことには違いありません。
おしまい