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美術館に行ける友達

美術館とか博物館とかに全く興味がない人もいる。鑑賞するというのは結構退屈だったりするから無理もない。僕も割とその質だし。だから行きたい企画展示があってもむやみに友達を誘うようなことはしない。基本的に一人か、たまに姉が行きたいと誘ってくるくらいだ。

そもそも、あの独特な雰囲気の空間を一緒に楽しめる人は少ない。建物内に漂う静寂と緊張。呼吸一つするにしても気を使わなければいけない。よっぽど興味があるか面白い作品でなければ、じっとしているのが苦手な人には地獄のような場所だ。

誰かと一緒に行くのであれば、お互い退屈せず楽しめることが前提になければいけない。作品よりも一緒にいる人がどんな様子か気になっていたら疲れてしまう。だから誘うとなると、相手のことをよくわかっていて気心の知れている人が自然と選ばれる。「自分なりに楽しんでくれる」もしくは「一緒にいて楽しい」。そんなことを確認しなくてもお互いが知っているような関係。

でも大抵そんな人はいないから、今まであまり誘っていくようなことはなかった。たまに学校の校外学習などで友達と行くことはあったが、それもずいぶん前の話で、大学に入ってからはほとんどなかった。


そんな性格をしているから、このまえ美術館に友達と行ったのは珍しいことだった。大学の同じ学科の子で、たぶん一番仲の良い友達。目黒にある庭園美術館の存在は知らなかったのだけど、いいところだからと誘われた。

もともと皇族の人か何かが暮らしていた建物らしく、宮殿のような美術館だった。「アール・デコと異郷への眼差し」という企画展示が開催されており、アフリカやアジアに取材したダイナミックな絵画や彫刻などのフランス美術が展示されていた。あまりそこら辺の事は詳しくないのでわからなかったけど、フランソワ・ポポの『シロクマ』が可愛いので見に行った方が良いと思う。

美術館の周りには手入れされた広い庭が2つあって、一つは芝の敷かれた上にベンチとパラソルの置かれた西洋風の、もう一つは池を囲むように石が配置された和風の様式になっていた。幼い頃よく遊んだ近所の家の庭に似ていて、なんだか懐かしかった。


正直、大きな美術館で開催されるようなビックネームの企画ではないし、全国ニュースで取り上げるような話題性もない。一人で行っていたら、たぶんそこまで記憶に残ってなかったかもしれない。

でも、楽しかった。たぶん一緒に行った友達との相性が良かったんだろう。美術館に行って楽しい人。なかなかいないから貴重だし、大切な存在なんだと思う。いつまで続く関係なのかわからないけど、また行けたらいいなぁ。



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