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母の日なのに、買いたい花がない

昨日は母の日だった。

このご時世とあって、花屋は営業していなくて、スーパーの花屋が少しボリューミーになっているか、駅前改札に母の日限定の花屋が出ているくらいで、花を調達できる場所は少なかった。

今回私は、花卉業界の人に一言物申してやりたいことがある。

「なんでカーネーションの鉢植えばっかりなんだ。」

と。

鉢植え…?


正直、鉢植えって重いし、プレゼントして縁起のいいものだとは思えない。もちろんそういうカーネーションの品種があるのもわかるけど、土が部屋の中にあるのが嫌な人もいる。そこへきて、どこも似たり寄ったりの白い鉢に入っていて、なんとなくおばさんくさい全体感で、20年前に売っていたものと全然変わっていないではないか。個性無し。買う気にならない。

だから、ちらっと人目を引くことはできるけど、手に取ってもらったり、じっくりみてもらったりする誘引力がないのだ。


今朝、出勤して、主婦の社員に、

昨日母の日でしたけど、なにかもらいましたか?

と聞いてみた。

ううーん、うちはそういうのは全然!

と。

期待してないよ(笑)

と。

残念。そもそも母の日のイベント感が、今年は、なのか、年々、なのか、薄まってきているのも、超くやしい。

前に、なんかの動画で、24時間365日間無給で働き続けてください、と要求されて、絶対無理!と全員がこたえ、それをあなたの身近でしている人がいますよ。あなたのお母さんです。という映像を見た。それでみんな泣き出して、そうだった、お母さんごめん、いつもありがとう。といって、連絡する。

きっかけはなんでもいいんだけど、感謝を伝えるべき人に、伝えられる人間に、自分はなれているだろうか。照れて逃げていないか。


…話を戻して(笑)

私が花屋を経営するとしたら、カーネーションは全部ブーケにする。その方がお母さんはすぐ飾りやすいし、世話の手間は少なくなる。花の小さな変化に気づき、ありふれた日常がささやかな幸せの毎日に変わる。自分でも買ってみようかな、なんて思ったり。

さらに、カーネーションはどこから調達してきたものか、パンフレットや、お店とお客様とのコミュニケーションに組み込む。例えば、カーネーションの生産量世界一はコロンビアと言われている。花もちがよく、強い。航空貨物で運ばれてくる。何日前に、コロンビアで切り取られた花なのか。コロンビアの生産農家の顔は、名前は、どのくらいの広さの農園か、いまこのカーネーションが陳列されるまでにどんなストーリーがあったのか。生産地の違いでどれだけカーネーションが変わってくるか。多分カーネーションでそれを表現するのは難しいけど…

とりあえず鉢植えにして売ってるだけじゃ、プラスチックの鉢がごみになるだけで、しかも売れずに廃棄処分となったら、もう悪循環でしかない。生産者がどんな気持ちで作ってくれたか、どう楽しんでほしいか、もっとみえるようにする。関わった人に関しても、サプライチェーンに関しても、透明性があって、知ったうえで買った方が、思い入れがあるプレゼントになる。

そして、花のことをもっと知ってもらえるように、カーネーションのすばらしさ、花の奥深さをふんだんに表現できるお店をつくる。例えば、カーネーションといえば、赤色だけど、その花言葉は色によって変わる。赤なら、「母への愛」。黄色は、「友情」。バラなんて、本数によっても意味が変わる。そして、カーネーションにも種類がたくさんあって、花弁の形がまるで変わってくる。世話に関しては、水の入れ替えは毎日できなくても2日に1回で大丈夫なこと、花瓶の大きさは、花全体の半分より低い高さのものだときれいにみえること、花の本数は奇数にするとかざりやすくなること…カーネーションの高さを一本一本変えて切ったら個性的に活けられるし、花びらのしおれ具合をみると花の健康状態がわかる。そんな小さなことを知るだけで、花を観察することが本当に面白くなってくる。花園チックな花屋を作って、買ってもらえなくても、長居できる空間を作ってみたい。花に関する体験をしてもらえるような場所を作ってみたい。

母の日だからといって、カーネーションだけを押してもしょうがないので、ラナンキュラスとか、フリージアとか(時期的には終わってるが)、これから出回るひまわりとか、一緒に買いたくなる花を取り揃えて、全部ほしい!と言ってもらえるようなお店を作る。そしてなんといっても、切り花にこだわる。アレンジの多彩さも、花の鮮度も、世話の楽しさも、やっぱり切り花が手軽だと思う。


年に一度、花の需要が上がるシーズン。

もっと日本の花卉業界は盛り上げられないか。

どれだけのひとが、おかあさんに花をあげただろう。

花でなくても、人の人生がもっと豊かになる世の中をつくりたい。

こんな私はひまわりを買って、部屋に命があることに、なんとなくやすらぎを覚える。

私はこのコロナ事情が終わったら、大田市場に行って、花の流通、仕入れを見学しようと思う。

とっても楽しみ。

そして、早く花に関する知り合いを作りたい。

もっと知りたい。

そして、もっと自分の描く世界を表現したい。



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