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舞台「素敵なカミングアウト」感想

現在六行会ホールにて公演中の舞台「素敵なカミングアウト」、TEAM STAR・TEAM MOONそれぞれ二公演ずつ観劇しました。
少し思うところがあるのと、自分の中で整理をつけたいため、感想をnoteに残そうと思います。
これから観劇する方はネタバレ注意です。

「素敵なカミングアウト」とは……?

母に先立たれた苫米地家は今やバラバラ状態。
ある日、父が再婚するという報せを受け、久々に家族全員で食事をすることになりホテルのラウンジに集まったのだが、そこで父がゲイであることをカミングアウトする…。
父が明かしたまさかの真実。
そこへ父の婚約者が結婚の挨拶へやってくる。
悪夢の一夜が幕を開けた。
動揺を隠せない兄妹たちが織りなす誤解とウソ。
人生の皮肉に立ちむかう家族の滑稽さを描いたバンプなワンシチュエーション、抱腹絶倒のファミリーコメディ!
家族って楽しい!

https://ticket.rakuten.co.jp/stage/RTR2KKM/

結論から言うと、カミングアウトによってなんやかんや起きるけど、結果バラバラだった家族がもう一度まとまって、素敵なカミングアウトになったよね。って話なんだと思う。
改めてあらすじを読んだけど、四回観ても人生の皮肉がなんだったかはわからないし、立ちむかうというよりは逃げ惑っていたように感じた。さらに言えば家族というか次郎・朋美・重彦の三人だけが奔走していた気がする。

ラストに受けた印象の違い

「いや全然素敵やないよね!?」これが初日、TEAM STARの公演を観た感想。
すぐに暴力に訴える長男、その長男に逆らえない次男・長女・三男、過去何度も長男と衝突し警察沙汰になるような取っ組み合いまで起こした父親。
劇中でも長男と父親が繰り返し喧嘩腰になる様が描写されていて、それでなぜゲイをカミングアウトした父親を、急に泣いて褒め称え出すのかが理解出来なくて混乱した。
そもそも父親が「長男には言わない方がいい」って言っといて、最後手のひら返して次男の責任にするの、ひどくない?
あんな長男で、更に逆らえないんだから、次男が自分の事情を抜きにしても隠して誤魔化したくなるのは仕方ないのでは?
長男が感激して認めて、次男や三男が隠していたことを流れで打ち明けることになり、なんだかうやむやに解決したように感じてしまい、到底カミングアウトが素敵だったとは思えなかった。
まず全員ルディに土下座して謝れや。

それに対してMOONは、長男の暴力描写がなく、頑固かつ粗暴ではあるけれど真面目で悪い奴ではなさそう……という印象を受けたため、ラストの感激にまだ説得力が生まれたように思う。説得力というか、納得?
初日はひたすらルディがただただ傷つけられたように見えて可哀想で、観ていて悲愴感がすごかったのだけれど、二日目はあまり感じなかった。これも大きな要因だと思うけど、ここに関しては何が異なるのかいまいちわかっていないため、言語化が出来ない。

これが令和にやるべき作品?

気になったセリフ

父親のカミングアウトを肯定的に受け止める長女に対して、次男が「女だからか?女の人ってゲイの人好きだろ」というセリフ。
ド偏見にも程がねえか?
長女は押し付けられてるという発言はあれど、バラバラになった後も一番父親と接してたからこそ、父親の気持ちを尊重しようって発想がすぐ出てきたんじゃないの?女だからとか関係ないよね?

あと、次男の婚約者である舞子が、婚約者の父親がゲイであることを知った時の「あなたのお父さん、オカマなの!?あなたもオカマってこと!?」という一連のセリフ。
散々若い女だって劇中で明言されている舞子から出るセリフにしては、不自然すぎない?あと、今時オカマとか言わないでしょ……
ここはさすがに次男から「厳密にはゲイとオカマは違うよ」と補足が入るけど、その補足って適当に付け足しゃ済むってもんじゃないと思うよ。

七年前の脚本

どうやら「素敵なカミングアウト」の脚本は、七年前のものらしい。
だからといって許されるものでもないと思うし、じゃあ時代に合わせて加筆修正すべきでは?とも思う。
どれだけ弄ってるのか、知る由もないのでわからないですけど。
ただ、演じてる俳優さん方に問題は一ミリもなく、台本に書いてあるセリフなんだから仕方ないよね、って話だし、もっと倫理観のないセリフやストーリーなんてこの世に山ほどあるはず。
それはそういうものなんだから、これはわたしが脚本と合わなかった部分。そう納得している。

ひどすぎるアドリブ

長男は誤解や嘘によって舞子を父親の再婚相手だと思い込んでいて、舞子へ父親に関する質問を投げかけ続けるシーンがある。その流れで「予行練習」と称して舞子を自分の母親だと想定して話す部分について。
ここはTEAMによって異なり、TEAM STARではいい歳したオッサンが、「ママ〜!ママ〜!」と赤子の真似をして迫る様が本当に気持ち悪い。
仮に自分の父親と再婚し自分の母親になる相手だろうと、自分より歳下の若い女の人に対してオギャるの、マジで笑えないほどキツい。

更に長男が舞子から、母親になりきって言葉をかけてもらうシーンがある。(もちろん舞子は自身が長男の母親役とは理解しておらず、ただ頼まれたセリフをそのまま繰り返すだけというもの)
TEAM STARの初日のソワレでは、長男が舞子の着ているワンピースを「カーテンみたい」だと言い、舞子自身に「わたしのカーテンを開けて」と言わせた挙句その「カーテン」を跪いて開こうとしていた。
あまりの不快さに、思わず席を立とうかと思った。こんなのただのセクハラでしかない。

TEAM MOONではこのシーン、舞子からは「道彦(長男の名前)、おやすみ」「あったかくして寝るのよ」といった、常識の範囲内で考えられる母親が言いそうなセリフを言ってもらっていた。ということは、STAR側の完全なるアドリブやんけ。

そもそもTEAM STARの長男は、事あるごとに暴力を振るおうとする描写がある。実際殴る芝居が入っていたかもしれない、嫌すぎて記憶にない。
長男は不必要に舞子に触れようともするし、初日のマチネでは確か舞子に「好き」とか言わせてた気がする。
ここは本来、長男が亡くなった母親を思い出し感極まるシーンのはず。変なセクハラアドリブは本気でいらない。

他に気になった点

TEAM MOONと比較して、TEAM STARはどうも面白おかしくカミングアウトしようとしている気がする。
「ゲイなんだ」と父親が明かすところで、毎回ふざけてるように思えたんだけど、気のせい?
そこが、ゲイであることに対して笑わせようとしている風に見えて、とてももやもやした。
あとやけに下ネタというか、下品な演技も多かったように思う。
この作品の笑えるところって、ゲイだと明かすことや父親がゲイだったこと自体が面白いのではなく、カミングアウトによって動揺し、咄嗟についた嘘や勘違いによって起こる「すれ違い」の会話劇だと思うんですが。
二日目のアフタートークで、次男役の小澤さんが「STARはエンターテイナー、MOONは舞台」とおっしゃっていたけど、わたしの受けた印象もまさにそれで、ちゃんとコメディとして観られたのはMOONだけだった。
ただ、わたしにはそのエンタメ性はわからなかったし、STARの方ふざけすぎやない?と思っただけだったけど。
「人のセクシュアリティを笑いのネタにするような作品、わたしには合わない」が初日の感想だったので。

とか言いつつあと四公演観るんです

なぜならチケットがあるから。
アドリブなんて事前に知りようもないから買い控えることも出来ないし、お金をドブに捨ててチケットを破り捨てるしかない。
もちろん所持しているチケットの中にはTEAM STARの公演もある。
お願いだから、セクハラアドリブはやめてほしい。あと、変にセクシュアリティを笑いものにするような演技も。
それがTEAMの、ひいては作品の方針ですって言うなら仕方ない。諦めます。
まあ文句は言うし、観ながら舌打ちくらいするかもしれない。最悪席を立つこともあるかもだけど、それは本当に申し訳ない。

良かった点というか、見どころ

それぞれの登場人物が抱えている秘密と、カミングアウトについては、前半部分にかなりの伏線が散りばめられてあって、二回観るとそこの部分に気付けてすごい楽しい。
これは一公演のみだとなかなか気付くのは難しいと思うし、なんと!会場ではリピーターチケットが売っていて、観劇後の半券提示でチケットがお安く買える!
あと、片方のTEAMにボロカス言ったけど、それぞれのTEAMで本当に受ける印象が変わる。セリフの言い回しや立ち位置も変わるからその違いも楽しめます。
個人的にはSTARの長女がすごく好きで、父親の世話を押し付けられても仕方ないなあって結局自ら進んで色々しちゃいそうなところ、好感度高かった。

本音

初日のソワレ後、観劇していた友人がわたしの顔を見るなり「金払ってこんな不快な思いするとは思わんかった」と吐き捨てるように言った。
初めてそんな彼女を見た。会場内にも関わらず、まあまあな声量でキレてた。
わたしはその場では言葉にならず、ホテルへ帰る道中に突然全部嫌になって号泣した。

万が一これを読んだ推しが嫌な思いをするかもしれない、罪悪感を抱くかも、逆にこんな感想を書いたわたしへ不快さを感じるかも。
願わくば読まないで、そして嫌いにならないでほしい。そもそも好きではないのは重々承知の上、でも推しにとっての良きおたくでいたい。
そんなことを考えながら、次の公演をむかえる。

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