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ジェンダーレンズでUXを覗く -GoogleのToward Gender Equity Onlineより-

GoogleからToward Gender Equity Onlineというレポートが出てました。(↓の2019年の振り返り記事で知りました。最後の方!)

ふだんUXを設計してて、当たり前に抜け落ちそうなのがジェンダーバイアス。このレポートはジェンダー公正なインターネットをどう目指す?を探るべく、世界7カ国で363人の定性調査、3618人の定量調査から、大きく4つの宣言を33ページにキュッとまとめたものです。

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女性をどう捉えてる?

主にシス女性の立場から公正なインターネットを考える構造になっているのですが、最初に思ったのは「女性」をどう捉えるのかってことでした。そこは、なるほど、女性だと本人が自認していることとしていて、レズビアン、トランス、クィア、または男性(?)まで、幅広い方たちを対象としています。虐待、LGBTQ+市民権、HIV+福祉、女性性器切除(FGM)、難民、障害など複雑な事情を専門とするNGOなどの協働で実施されたもよう。

センシティブさとどう向き合ってる?

次に気になるのは、どうやって心を開いてもらうかということ。

①現地NGOなどの協力で参加者を紹介してもらうこと、②コーヒーショップや大学キャンパスなど中立的な安全空間でインタビューを行うこと、③口頭による同意を現地語で行うこと、④インタビューの冒頭15-20分は目的の説明+どんな質問にも答える時間を作ること、⑤いつでもインタビューを中断できることを明示すること。

このあたりが重要なところかと思いました。自分が行うリサーチの指針でもParticipant First(参加者最優先)は常に大事にしているところ。

ジェンダーレンズがUXに求められそう

"夜中にネットしてたら、彼氏に『あー、すごく遅くまでネットしてたんだね』って言われたの...。今ではあまりネットには行かなくなったね。" 
ーマリア・リネス(弁護士/メキシコ)

なんといっても、このレポートの最大の特長は、ジェンダーレンズを通すことで高いレベルでのUXを目指せる、と語っているところ。

例えばGoogleの検索結果に現れるサジェストも、男性優位な結果であり(男性がユーザーが多いため)、そのバイアスを除くレンズを通すことで、多くの人に公正な機会を提供できるのでは、という仮説です。上記のインタビュー対象者の発言も、男性優位の現状を示唆しています。

ちょっと話はそれますが、実生活で言えば、例えば入力フォームを設計するとき、あなたなら性別欄をどう設計しますか? 男性と女性の2種類?

ちなみに世界標準としては、 ISO5218に沿って4種類(日本語だと①男性②女性③その他④回答しない)が一般的のようです。(勉強不足だった...)

限定的な利用者でなく、マイノリティの方々も大いに含まれるサービスは、今後、より包括的な視点でUXを設計する必要がありそうです。

ベースラインを一緒につくろうと呼びかけ

レポートでひときわ強いメッセージが、「オンラインでの公正な機会の構築は、権力のヒエラルキーを正すにも有効」と語られていることです。インターネットは時代遅れの差別に挑戦するためのツールを提供し、公平性を加速させるためにポジティブに利用できると主張しています。

そのために、倫理、リクルート、ビジネス、技術の4つの視点で、ジェンダー公正に取り組むための理由(宣言)が書かれています。これは本書のP26-28をぜひ見てください!

ちなみに、ジェンダー公正を測定するための5つのメトリクスもユニークです。サービスを提供する際、軽やかに使えるクエスチョンですね。

・アクティブユーザーのうち、男性と女性の割合は?
・あなたの市場(銀行員、大卒者など)のうち、女性は何%?
・新規ユーザー(過去7日間に登録した人)のうち、女性ユーザーは何%?
・主要機能の使用頻度(女性と男性を比較した場合)の差は何%?
・コンテンツを作成したユーザーの%差(女性と男性の比較)は?

企業や自治体に向けて、ジェンダーに関する己のベースラインをつくる活動をみなさんやっていきましょう!とレポートの後半では語っています。包括的なビジョン(これからの行動指針)を定めていくような、プロジェクトも増えていくといいですね。

さいごにリサーチ手法

プロジェクトリードのNithya Sambasivanは、人工知能と上級ユーザーエクスペリエンス(UX)の研究者。GoogleのPeople + AI Research (PAIR)所属。

気になる手法は、混合法(Mixed Methods)で、三角法(トライアンギュレーション)に注視してるとのこと。生データからの帰納的分析が柱のようです。定性データは、GTAもしくはKJ法などのアプローチで、CI(比較情報学)にも特筆しているので、違い類似点に着目しながら分析をしていそう。定性調査後(もしくは途中)から定量調査(サーベイ)を行っているような雰囲気。詳細なプロセスやタイムラインが明かされていないので憶測ですが、気になります。

そして、このボリュームを、33ページにシンプルにまとめる要約力よ...

この感想文を書くにあたり、Shaper+DeepLでざっと機械翻訳したものを添付します。(日本語的に変なところはいっぱいある)最初のイントロとエグゼクティブサマリ、末尾の結論あたりと、方法論のところに絞ってます。


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