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【レビュー】希学園 小4 公開テスト 2024年7月 国語

(「希学園 小4 公開テスト 2024年7月 国語」についてのレビューになりますので、お手元に試験問題をご用意の上でご覧下さい。なお、全体の分量は約3600文字です)

 今回は7月に実施された希学園の小4の公開テストについて、ポイントを解説していきます。
 まずは大問2ですが、今回の物語文は小4のテストで出題される文章としては人物の動きや状況が少しつかみにくく、流し読みをすると設問に対応する際に苦戦してしまう恐れがあります。その意味では緊張感と集中力を求められる文章であり、とても希学園らしい高度な要求が含まれていると言えそうです。ここは特に正答率の低かった7と11をチェックしておきましょう。
 7は正答率が25%となっており、今回のテストでは3番目に正答率の低い設問です。その要因の1つは恐らく問いかけにあり、「何を聞きたいのだろう」「何を答えたらいいのだろう」と首を傾げた受験生が多かったかもしれません。この問いかけは物語の展開に対する理解の深さ次第で見え方が変わるようになっており、話の細部を注意深く読み取っていた受験生は「ああ、そういうことを聞きたいのか」と気づけた可能性が高いでしょう。文章の読みの深浅が問いへの解像度を左右するところがあるため、なかなか厄介な問題です。
 7の問いかけの意図を見抜くためには、「誰かがトカゲの世話を生き物係に引き受けてもらおうと言い出す」→「生き物係は3人いる」→「そのうちの男子2人(片方は主人公の土田)は即座に断る」→「生き物係の残りの1人は川村」→「川村はトカゲの世話を生き物係に引き受けてもらうという話が出てきた時、何も返事をしていなかった」という状況をとらえられている必要があります。答えを考える段階に入る前に押さえておかなくてはならないことがやや多く、物語の要所を適切にとらえていないと正解が隠れている場所を正しく予想できません。この問いは「精度の高い通読」が解く上での前提となっており、復習することで自分の読み方をどのように改善したらいいかが見えてくると言えます。
 次に11の考え方を振り返っていきます。こちらは正答率が30%で、多くの受験生が苦戦しています。ですが、希学園の特色がよく表れた「ステップ・パイ・ステップの思考」を求める設問となっているため、吸収しておくと先々の学習で必ず役立つはずです。早速、答えへの筋道を確かめてみましょう。
 設問文に出てくる◎のセリフを観察すると、気づけることが2つあります。それは◎のセリフが先生の発言だという点と、「カモッチ」が「土田」にトカゲを持って帰ってもらおうと言い始める場面よりもあとに、◎のセリフが当てはまるはずだという点です。これらの点をつかめてしまえば、次はどの辺りに当てはまりそうかと場所を予想する段階に進めます。まず場面の流れからざっくりと範囲を絞ると、「カモッチ」が「土田」に話しかけている線⑥よりもあとで、先生のあいさつが終わってみんなが帰ってしまう場面の直後にある線⑦よりは前だろうと見当がつきます。ここまで限定したらあとは線⑥以降を一行刻みで調べていき、線Cのすぐあとにある「『待てよ、おい。引き受けるなんて言ってないだろ』/先生も横から口をだし、~」に目をつけられれば正解がわかってきます。この部分は元のままだと「待てよ、おい。引き受けるなんて言ってないだろ」が先生の発言ということになってしまい、とても奇妙です。よって、本来ここに書かれているはずの先生の言葉が抜け落ちていると推測され、「先生も横から口をだし、~」の直前に◎のセリフが当てはまるという判断ができるわけです。
 この問いは敢えて言語化してみると分かってくる通り、答えに到達するまでの道程がかなり長くなっています。少なくとも小4の段階でこの道程をすいすいと通り抜けられる受験生は少数派であり、中学受験における一般的な学習進度で言えば小5相当の「複雑さ」がある設問と評価できます。しかしながら、逆の言い方をしますとこの問いは小5であれば標準的です。来年へとつなげていくことを念頭に置き、テストの復習を通して思考力のギアを一段上げていくことを目指して下さい。
 では、今度は大問3に目を向けてみましょう。極端に正答率の低い設問は1(20%)、6(31%)、7(7%)、8(30%)ですが、ここでは考え方や解き方の重要性を考慮して1と7を取り上げておこうと思います。
 1は設問文の「きっかけ」に着目すれば、「花と昆虫のパートナーシップが確立していく過程で最初に起こったことが書かれているところ」を見つけるのだろうと考えることができます。設問文自体は特別込み入っておらず、意図のとらえやすい問いです。問題なのは、文中で説明されている因果関係の流れをきっちり把握していないと答えの文を特定しにくいという点でしょう。恐らく正解できなかった受験生は、これもありそう、ここも可能性があると目移りしてしまい、自信を持って「この二文が答え」と決めきれなかったのではないかと推測されます。
 ここで、文章の前半に書かれている「パートナーシップの確立までの流れ」を整理してみます。経緯を段階的にまとめると、「①恐竜時代の終わり頃に被子植物が登場する→②初期の被子植物は風の力で花粉を飛ばしていた→③植物の花粉を昆虫が食べにきていた→④ある時、花にやってきた昆虫の体に花粉がついた→⑤その昆虫が別の花に移動し、体についた花粉によって受粉が起こった→⑥昆虫に花粉がつきやすい花が種子をたくさん残す→⑦花が昆虫に花粉をつけやすい形に変化していく→⑧昆虫を呼び寄せる花が進化し、昆虫と花のパートナーシップが確立する」という具合です。こうして整理すれば①~③が要するに前提に当たり、④~⑤がきっかけであり、⑥からあとは確立までの経過の説明になるとわかってくるので、④~⑤が答えだと判断がつくでしょう。ですが、実際には前提ときっかけの区別がはっきりつかず、①~③のどれかを答えと思ってしまったり、プロセスの最初を上手く見つけ出せなくて⑥~⑧のどこかへ目が行ってしまったりした受験生も少なくなさそうです。大人にとっては前提、きっかけ、経過の判別は当たり前のことに感じられますが、小4の受験生の多くにはまだまだ不慣れなところと言えます。たとえこの問いでつまずいたとしても、小4のテストとしてはややハイレベルなことが求められていたと理解した上で、焦らずに「情報整理の練習」として活用していけば小5の学習にしっかり結びついていきます。
 では、話を7へと進めていきましょう。「意味が通じなくなっているところを探す」という問いは、希学園や浜学園のテストでよく登場するのですが、この手の設問は「通読時に何となくおかしいと気づいていないと正解が難しい」というケースが多く、状況によってはあまり深追いをしない方がいいと考えておいて下さい。7の正解は線Cの前の行にある「およぶ」になるわけですが、ここを「およぶ」のままにしておくと「植物の進化」が人間の思考で理解できるくらい単純であることになってしまうので、不自然だと気づいてほしいというのが出題者の狙いです。ですが、ここが不自然とわかるためには、その大前提として「自然の仕組みは極めて複雑であり、人間の知識や知恵で全てを解き明かすことはとても難しいとされている」という一般常識が頭に入っている必要があり、なおかつその知識と目の前の文章を反応させることができなくてはなりません。従って、通読時にこの部分がおかしいなと気づけるかどうかは差が出やすいところですので、つまずいた受験生は「自然の仕組みは極めて複雑→人間に全てを解き明かすことは困難」を1つの知識として頭に入れておくことを優先しましょう(大人が常識と思っていることであっても、小学生にとっては初めて知ることというのは意外と多いものですので、知らなかったことはその場で覚える癖をつけることが重要になります)。
 7のような問いは正答率が相対的に低くなりやすく、現時点では解けなかったとしてもそれほど他の受験生との間で大きな差がつくことはありません。寧ろ危険なのはこうした問いで足が止まって必要以上に時間を使ってしまうことですので、ペース配分への意識を高めるきっかけとして活かしていく方が有意義です。
 最後に全体を総括してみたいと思います。今回の公開テストは平均点が53.14/100となっており、小4のテストとしては難しい部類に入ります。その主要な原因としては、途中で少し触れたように小5の水準を想定した設問がいくつか登場していたことが挙げられるでしょう。今回の解説で触れた4つの問いはまさにそうした「先回りの出題」に該当しているため、正答率が目立って低くなっていることも頷けます。ですが、希学園は夏から半年に渡って「先回りの出題」を少しずつ増やしてきますので、「今回解けなかったことは仕方がない」と考えつつ、「でも、この設問の解き方や文章の読み取り方は来年に備えて覚えておこう」という姿勢で見直しをしておくことが大切です。

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